第8章 「ふげん」における運転・保守技術の高度化

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(3)マルチチャンネル相関検出手法(Multi-channel Correlation Method)
 測定された波形信号のCCFは、信号歪みに大きく影響され、漏えい箇所からの距離に従ってCCFが急激に低くなる。(約0.04〜0.1)反対に、信号処理をしたエンベロープは、信号歪みにより影響されにくいため、より高いCCF(0.8〜0.99)が測定される。
 空間集束手法は、背景騒音と漏えい信号間の区別を良くするため、エンベロープのCCFに対して提案され、適用してきた。マルチチャンネルCCFは、モニタリングエリアの全空間要素について評価された。そのCCFは、TDOAに基づいて得られるCCFの重ね合わせから得られる。高相関レベルにある空間要素は、漏えい箇所であると想定される。
 想定漏えい箇所の漏えい信号について評価されたマルチチャンネルCCFが、0.9〜0.95であるとき、CCFに適用された空間集束手法は、背景騒音のCCFを0.03〜0.1に維持することが可能である。漏えい箇所は、約500〜800mmの正確さで決定することができる。また、エンベロープは信号歪に影響され難い(図8.6.15参照)。
8.6.7 まとめ
 これまで述べてきた漏えい検出手法の特性を表8.6.1に示す。同図に示すように、一般的な検出アルゴリズムに対して、新たに提案された検出方法は、低いSNRにおいても、良好な検出感度を持っていることが分かる。
 定常音波及び実際の漏えい音源に近い非定常音波に対して、上記いずれの手法においても、当初の開発目標の次の条件を満足することができることを確認した。
(1)1時間以内に、0.046m3/h(0.2gpm)の漏えいを検出する能力
(2)1m以内の精度で漏えい位置を特定できる能力
(3)漏えい流量を評価する能力
 特に、マルチチャンネル相関検出手法は、漏えい音響の伝播中に、配管等により歪められる実漏えい信号(非定常音波)を、高感度で分別する場合に適用することができ、その実用性を確認した。一方、比較的大きな漏えいを検出するという目的に対しては、しきい値検出手法が有効である。

表8.6.1 漏えい検出手法の特性




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