第7章 プルトニウム利用技術の確立及び実証

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第7章 プルトニウム利用技術の確立及び実証

7.1 総 論
 新型転換炉(ATR)は、重水を減速材として、十分に減速した中性子により核分裂の連鎖反応を行うため、プルトニウムを利用しやすいという特長がある。ATRは、軽水炉の使用済燃料から回収されるプルトニウムとウラン(減損ウラン、劣化ウラン及び天然ウラン)を柔軟かつ効率的に活用することができ、エネルギー資源節約による我が国のエネルギーセキュリティの向上に資するものと期待され、自主開発された原子炉である。また、原型炉「ふげん」の順調な運転は、プルトニウム利用技術の確立に大きく貢献してきた。
 「ふげん」におけるMOX燃料の使用実績はプルトニウム量にして約1,850kgであり、MOX燃料集合体で772体にのぼった。これは世界の熱中性子炉に装荷された全MOX燃料集合体数の約1/5に相当し、1基の発電炉における装荷実績としては世界最高の実績を挙げた。
 「ふげん」は、自主開発によるATR原型炉であり、炉心管理についても、独自に行っている。
 MOX燃料装荷炉心の炉心管理については、取替炉心の安全性を確認し、燃料の健全性を確保する観点から、計画作成・運転監視・評価を繰り返し行い、プラント状態に応じた迅速な対応を図ってきた。また、各種計算コードについては、各サイクルの運転データを使用して精度評価を行い、コードの改良等を実施することにより解析精度の維持・向上に努めてきた。これらの実績を通じて、MOX燃料がウラン燃料と同等に扱えることを実証するとともに、MOX燃料装荷炉心の炉心管理技術を確立した。
 東海事業所プルトニウム燃料センターのATRラインにおける「ふげん」用MOX燃料の製造実績は、累計で約139トンMOX、773体であった。ペレット収率についても90%以上という高率で製造できた。ATRラインで製造し、「ふげん」に装荷された772体のMOX燃料集合体を含むすべてのMOX燃料には、1体の燃料破損も生じなかった。また昭和63(1988)年には、「ふげん」の使用済MOX燃料から回収されたプルトニウムを用いて、再度、「ふげん」の燃料を製造し、炉心に装荷した。これにより、「ふげん」をはじめとした核燃料サイクルの輪が完
結し、プルトニウムリサイクル技術の確立を実証した。これらの開発と製造実績の中で蓄積した技術は、軽水炉のMOX燃料製造に生かされる予定である。
 平成15(2003)年3月末の東海事業所再処理施設における「ふげん」燃料の累積再処理量は、約70トンに達した。また、「ふげん」MOX燃料(タイプA)については、昭和61(1986)年及び平成8(1996)年、それぞれ約5トンの計約10トンを再処理した。再処理施設で回収した全プルトニウムの約1/4は、「ふげん」のMOX燃料として利用された。「ふげん」の運転と併せて、再処理施設は、実績を積み重ね、再処理技術、臨界安全管理技術、保障措置システム技術など関連技術を蓄積した。
 以上のように、約25年間に及ぶ「ふげん」のプルトニウムの本格利用実績は、それを支えるプルトニウム燃料開発・製造技術、再処理技術等の核燃料サイクル基盤技術を我が国に定着させる原動力となるとともに、我が国のプルトニウム利用の先駆的役割を果たし、プルトニウムの平和利用に対する国内外の理解を深めるために大きく貢献した。


7.2 プルトニウム利用実績
7.2.1 MOX燃料利用実績
 「ふげん」初装荷炉心においては、炉心全燃料集合体224体のうちの96体にMOX燃料集合体を装荷した。その後、33回の燃料取替を実施し、MOX燃料772体(照射試験用燃料11体含む)、ウラン燃料687体(特殊燃料28体含む)の合計1,459体を装荷した。これらのうち、平成14(2002)年4月に、ウラン燃料(特殊燃料)の1体に燃料漏えいがあったが、MOX燃料には、1体の漏えいもなく、健全であった。
 「ふげん」においては、MOX燃料及びウラン燃料を標準燃料とし、また、圧力管材料照射試験片入りのキャプセルを内蔵した特殊燃料を使用してきた。これらのドライバー燃料以外に、照射試験用として、実証炉用燃料開発のための照射用36本燃料、出力急昇時の燃料・被覆管相互作用(PCI)を低減させて高性能化を目指した照射用セグメント燃料及び実証炉用に高燃焼度化を計った照射用ガドリニア燃料を装荷し、照射試験を実施した。「ふげん」燃料の主要仕様を表7.2.1に示す。


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