「ふげん」の設備概要とその特徴(1)



設備概要

 「ふげん」は重水減速沸騰軽水冷却圧力管型の原子力発電所で、電気出力は16万5千キロワットです。国内で運転されている原子力発電所の中ではもっとも小さな出力ですがMOX燃料を装荷して発電をしている唯一の発電所です。中性子を減速するのに重水*1を使うため、炉心の構造は軽水炉と異なりますが、炉心で発生させた蒸気で直接タービンを回して発電をするところは沸騰水型軽水炉 (BWR)と全く同じしくみです。
 減速材である重水は直径約8mのカランドリアタンクの中に入れられており、そのタンクの中に直径約12cmの圧力管が224本垂直に設置されています。圧力管の中には燃料集合体が1体ずつ収納され、冷却材である軽水が流れます。圧力管の外側にはもう一つカランドリア管という管が配置されて二重管構造になっており、減速材である重水と冷却材である軽水は完全に分離されています。圧力管とカランドリア管の空隙には燃料側から重水側に熱が伝わり難くするためと冷却材の漏えい検知のために炭酸ガスが流されています。重水は、炉心で一定温度(原子炉入口温度49℃)になるように循環して冷却されています。また、重水の中にはほう酸が添加されていて、核

分裂の度合い(反応度)を炉心全体で抑制しています。重水の純度維持のためカバーガスにはヘリウムガスが使われています。制御棒は全部で49本あり、カランドリアタンク内に設置された案内管の中を炉の上部から重水中に挿入されます。
 原子炉冷却系には圧力管燃料チャンネルが全部で224チャンネルあり、112チャンネルずつを受け持つ二つの独立した原子炉冷却ループによって構成されています。冷却水は各ループの下部ヘッダより各チャンネルに分配する入口管を介して炉心に供給されます。炉心で冷却水は熱水と蒸気になって上昇管を経て蒸気ドラムに入ります。蒸気ドラムでは、熱水と蒸気が分離され蒸気は直接タービンへ、熱水は給水とともに4本の下降管を経て再循環ポンプによって下部ヘッダに戻され循環されます。

*1(重水):重水は水分子(H20)の中の水素原子(H)が水素の同位体である重水素に置き変わったもので、比重は1.1です。重水は中性子吸収割合が小さいので、原子炉の減速材や冷却材に使用されます。重水は天然水中に約0.015%含まれており、これを濃縮して原子炉級重水(99.65%以上)にします。重水は、重水と軽水の性質の相違(たとえば沸点の違い、電気分解の容易さ)や化学反応を利用して濃縮・製造されます。



「ふげん」のしくみ