プラント運転管理技術の開発成果(5)



 (2) 系統化学除染と亜鉛注入技術
  原子力発電所における保守点検時の被ばくの原因は、機器・配管の表面に蓄積したクラッドと呼ばれる放射性金属酸化物です。このため被ばく低減対策としては、クラッドの生成や機器・配管表面への付着を抑える、付着したクラッドを化学的に除去するなどの水化学的対策が、遮へいなどの物理的対策に比べ効果的です。「ふげん」ではこれら水化学的対策の技術開発・高度化に長年取り組み、恒久的対策ともいえる系統化学除染と亜鉛注入を組み合わせた技術を確立しました。
  化学除染では、第8回と9回定期検査時に供用中の原子力発電所では国内で初めて、キレート系希薄除染剤を用いた原子炉冷却系全体の系統化学除染を実施し、約7〜8人Svの被ばく低減をそれぞれ達成しました。除染剤の開発から、最適条件を得るための除染性能試験や系統を構成する材料への影響試験、実機熱交換器を利用した昇温システム設計など、入念な検討を積み重ねました。
  その後、水素注入の影響でクラッドの化学的性状が変化したため、長期水素注入プラントに適用できる化学除染法の開発に着手し、新しい除染法として酸化還元除染法(HOP法)による実機適用試験を行い、「ふげん」への有効性を確認しました。HOP 法は、過マンガン酸カリウムを除染剤とする酸化除染とシュウ酸、ヒドラジンによる還元除染をひとつの基本サイクルとするもので、クラッド性状や除染目標値に応じて、除染剤の濃度、除染時間などの条件や繰り返しサイクル数を調整することができる特徴があります。第15回と16回定期検査時にHOP法を採用し、機器・配管の線量率を大きく低減することに成功し、その効果と特徴を実証しました。
  このように化学除染は大きな効果が期待できますが、除染後の機器・配管表面に再びクラッドが付着し、原子炉の運転とともに除染効果が早期に薄れることが確認されており、「ふげん」ではその現象を抑制する技術として亜鉛注入技術に着目しました。亜鉛イオンが存在するとそれが選択的に機器・配管表面の酸化皮膜に取り込まれ、被ばくの原因となるCo-60等の放射性核種の配管への付着・蓄積が抑制されることになります。昭和63年から開発に取り組
酸化還元除染法(HOP法)による付着酸化物の溶解概念




除染前後の機器・配管表面線量当量率変化


系統化学除染時の機器配管表面線量当量率変化


Bループ(第15回定検)


Aループ(第16回定検)