プルトニウムの本格利用を果たした「ふげん」の成果


 「ふげん」プロジェクトの誕生

 昭和53年3月20日、「ふげん」はウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料22体の炉心装荷により、初臨界を達成しました。これは、わが国のエネルギーセキュリティを担う国家プロジェクトとして国産技術を結集し、建設された新型転換炉(ATR)原型炉として最初の大きな成果でした。その朗報は、折しも前年に誕生した米国カーター大統領の提唱で設立された、原子力の平和利用と核不拡散を両立させるための国際核燃料サイクル評価(INFCE)会議に報告されました。当時、米国内では、日本のATRプロジェクトに関する一連の論文から、「ふげん」は原子力平和利用と自主開発によるプルトニウムリサイクルを基本とする“日本の原子力政策を映す鏡”として評価する声が上がっておりました。当初、天然ウランを利用する発想から生まれたATRは、その燃料多様性の点で極めて柔軟な炉心特性ゆえ、国内外のエネルギー事情によってプルトニウム利用戦略における役割を変遷させましたが、「ふげん」の臨界当時は“プルトニウム燃焼炉”の役割を担っていました。



 プルトニウム利用のパイオニア

 初臨界以来、「ふげん」は25年にわたりMOX燃料による安定運転を継続し、核燃料サイクルの輪を初めて完結するなど、初の国産発電プラントとしての ATR型炉の技術的成立性を実証するとともに、核燃料サイクルの中核的役割を担い、技術的かつ政策的にもプルトニウム利用の国内基盤を醸成させ、まさに日本の原子力政策を体現してきました。「ふげん」のプルトニウム利用実績は、わが国のプルトニウム平和利用に対する国内外の理解を深めることにも貢献してきました。



 これからのプルトニウム利用

 しかし、ATR実証炉の建設が遅延する間、有力なプルトニウム利用戦略のひとつである軽水炉でのプルトニウム利用(プルサーマル)計画が進展し、ATRでのプルトニウム利用を軽水炉が代替し得る見通しが得られたことなどにより、ATRプロジェクトは中止となり、「ふげん」も平成15年3月末で運転を終了し、平成15年9月末に新型転換炉の開発業務を終了することとなりました。しかしながら、「ふげん」が成し遂げた有形無形の業績は、今後わが国の核燃料サイクルを担うプルサーマルやフルMOX軽水炉さらには高速増殖炉へと引き継がれ、有効に活用されることが期待されています。