臨界安全研究グループ及び研究基盤技術部のSTACY更新改造及び実験研究グループは、日本原子力学会より「臨界実験装置STACYの更新及び燃料デブリの臨界特性を明らかにする臨界実験の完遂」に対して第58回日本原子力学会賞 技術開発賞を受賞しました。
受賞概要
東京電力福島第一原子力発電所(1F)の過酷事故で生じた燃料デブリは、現在に至るまでその組成や中性子減速条件を決定する周囲の環境が不確かな状態です。今後の燃料デブリ取出し作業を安全に進めるためには、燃料デブリがどの程度臨界しにくい状態かを把握し、そのリスクを最小化する必要があります。臨界特性評価を行うためには多岐に渡る条件を考慮しなければなりません。また、コンクリートや鉄などの構造材料を含む組成や空間的に不均一な組成に対する臨界特性評価はこれまで実施されたことがなく、新たな計算コードの開発を含めた解析評価による燃料デブリの臨界特性のデータベース化とともに臨界実験による妥当性評価が求められています。そのため原子力規制庁の支援の下で、日本原子力研究開発機構(JAEA)は燃料デブリの特性を実験で再現するための方策について検討し、定常臨界実験装置(STACY)の更新改造と燃料デブリを模擬するための機器類を準備して一連の臨界実験を行い、解析評価の妥当性確認と今後の課題抽出を完遂いたしました。
性状が未解明な燃料デブリを実験で模擬するために、国内外の知見を集めてその方法論を確立し効果的な実験成果を得るための必要条件について検討するとともに、臨界安全管理の観点から特に重要と考えられる燃料デブリに特有の不均一性について検証するための炉心構成を定めました。一方で、原子炉全面改造後の初臨界到達と運転再開を目指したSTACYの更新は、1F事故後に新規制基準が施行され、研究炉の設置変更と運転再開に係る規制制度が大幅に変更された状況下において我が国初の取組みであり、従来とは異なる炉心構成上の制約や装荷物に対する制限を考慮した上で、初臨界炉心の策定や熱出力の校正手法の開発を行うことが求められました。また、燃料デブリに含まれる鉄やコンクリートを模擬するための構造材試料の設計及び設工認取得を行うなど、安全研究センター臨界安全研究グループと施設管理部門である研究基盤技術部が一体となり本課題に取組むことで、臨界実験を含む燃料デブリの臨界特性評価を完遂いたしました。
これらの技術開発・研究開発により、燃料デブリの臨界評価に資する実験測定データの取得に留まらず、我が国で唯一軽水炉体系が模擬出来る臨界実験装置が整備されました。また、新規制基準への対応を通じて今後の許認可取得を円滑に進めるための貴重なノウハウが蓄積されたほか、1F事故後に途絶えていた臨界実験技術の技術継承を行うことで人的基盤が整備されました。
本成果は、原子力規制庁の「東京電力福島第一原子力発電所燃料デブリの臨界評価手法の整備事業」(2014~2024年度)の成果の一部です。