日本保健物理学会 2022年度 学会賞(論文賞)を受賞

廃棄物・環境安全研究グループの島田 太郎研究主幹らは、日本保健物理学会2022年度学会賞(論文賞)を受賞しました(2023.6.29)。

この賞は、日本保健物理学会誌及びJournal of Radiation Protection and Research誌に掲載された原著論文等の中から、特に独創性や新規性のある優れたものとして選出されたものに与えられます。

受賞した研究の概要

タイトル:
「放射性物質を有するアスベスト含有廃棄物を対象としたクリアランスレベルの評価」保健物理, 57巻1号, pp. 5-29 (2022)

原子力発電所の廃止措置(廃炉)に伴って発生する放射性廃棄物のうち、その放射能濃度が低く、人の健康への影響がほとんどないものについて、国の認可・確認を得て、普通の廃棄物として再利用又は処分できる制度を「クリアランス制度」といいます。

配管の保温材などに使用されていたアスベスト廃棄物は、以前はクリアランス制度の対象ではなく、処理できずに保管していました。その処理を進めるためには、アスベスト廃棄物の吸入防止のための特別な処理処分の特徴を反映した被ばく評価手法が必要になります。

そこで、アスベスト廃棄物の処理、再利用、処分の過程を網羅的に調査し、被ばくの生じる可能性のある経路、作業時間、ダスト濃度等のパラメータの代表値及びその不確かさを決定し、被ばく線量を評価する手法を新たに開発しました。そして、アスベスト廃棄物のクリアランスレベルを初めて算出し、金属・コンクリートと同様にアスベスト廃棄物についても現在のクリアランスレベルが適用可能であることを明らかにしました。

このように、アスベスト廃棄物にクリアランスレベルが適用可能となったことで、無害化溶融処理など、適正な処理、再利用、処分を進める道が拓けました。廃止措置の進展に伴い発生するアスベスト廃棄物の今後の処理・再利用が進み、循環型社会の実現につながることが期待されます。