廃棄物・環境安全研究グループの高井静霞研究員は、第32回日本情報地質学会総会・講演会(GEOINFORUM-2021、2021年6月17日~18日開催)において発表した「地下水流動を考慮した地球統計学的手法による汚染物質濃度分布の推定」が顕著な業績であると認められ、2021年度 日本情報地質学会 奨励賞を受賞しました。
受賞概要
放射性核種や化学物質による汚染が地下で発生した場合、適切かつ効率的な環境修復のためには,汚染濃度分布の解明が必要です。しかし、汚染が帯水層に移行していると、限られた測定データの単なる内外挿では適切に汚染分布を推定できない可能性があります。また、汚染の放出時刻歴が明らかでない場合も多いです。このような場合に、地下水流動を考慮した地球統計学的手法による汚染分布推定が提案されています。ある一時期の測定濃度から時間的相関を考慮して汚染の放出時刻歴を逆解析し、これを用いて領域全体の濃度分布を推定する手法です。
本研究ではより物理的に適切で高精度な解を求めるために、地下水流動を考慮した地球統計学的手法にギブスサンプリングによる非負の制限を設け、適用可能性を検証しました。仮想的なモデル(2次元の均質な帯水層、3H)に対し、複数のピークを持つ放出時刻歴及び濃度分布を高精度に推定できることを確認しました。また、実際の地下汚染事例(茨城県・神栖市、ジフェニルアルシン酸)に対する検証の結果、汚染源直下および井戸周辺での高い測定濃度の傾向を再現し、評価に用いた32点の測定値に対する絶対誤差平均は3.0 mg-As/Lに抑えられ、本手法の適用性を確認しました。
本手法では、汚染履歴に不確かさがある場合にも、地下水流動による物質移行への影響を反映した上で、汚染分布とその不確かさを定量的に評価することができます。今後、水理地質構造の不確かさ等を考慮することで、信頼性が高い地下汚染分布評価手法の構築につながると期待されます。