研究内容
軽水型原子力発電所の長期間運転に伴い、原子力施設の安全性確保に係る構造健全性評価はますます重要となっています。
また、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえ、地震や津波、竜巻等の外部事象を考慮した安全評価研究の高度化が求められています。さらに、新検査制度の運用開始や安全性向上評価の導入に伴い、リスク情報を活用した安全規制への対応が重要となっています。
このような背景の下、本研究グループでは、軽水型原子力発電所における建屋・機器・配管を対象として、地震や飛翔体衝突等の外部事象を考慮した構造健全性評価手法に関する研究開発を進めています。設計基準事象を超える大きな地震及び竜巻による飛来物や航空機等の飛翔体の衝突等の外部事象を対象として、数値解析や試験研究等に基づく評価手法の高度化に関する研究を行っています。
研究成果は、原子力安全規制行政に対する技術的支援や学協会の規格基準に対する提案に活用されています。
地震時原子炉建屋及び機器・配管の健全性評価研究
安全上重要な建屋・機器・配管を対象として、地震応答解析や耐力評価等に基づく構造健全性評価手法の高度化に関する研究を進めています。また、これらの成果を活用し、地震時損傷確率(フラジリティ)評価手法や地震を起因とした確率論的リスク評価(地震PRA)手法の高度化にも取り組んでいます。
特に、地盤・建屋・機器・配管を一貫とした耐震評価に関わる3次元詳細解析手法の整備・標準化[1]を進めるとともに、大規模観測システムによる自然地震及び人工波観測記録を活用し、解析手法の妥当性確認や振動特性分析[2]を進めています。
また、3次元詳細解析モデルを活用した建屋床応答の不確実さ評価や機器応答の相関評価、フラジリティ評価手法の高度化を進めるとともに、地震や津波等の複数の外部ハザードを対象とした複合ハザードPRA手法の研究開発にも取り組んでいます。
具体的には、以下の研究を実施しています。
- 大規模観測システムによる観測記録を活用した3次元詳細解析手法の高度化及び妥当性確認
- 原子炉建屋を対象とした3次元詳細解析手法の整備・標準化
- 地盤・建屋・機器・配管を一貫とした地震時健全性評価手法の高度化
- 地震時損傷確率(フラジリティ)評価手法の高度化
- 地震PRA及び複合ハザードPRA手法の高度化・実用化
原子力施設の耐震安全性をさらに高い精度で評価することを目的に、原子力規制庁との共同研究の一環として、機構施設である高温工学試験研究炉(HTTR)を対象に大規模観測システムを構築しました。この大規模観測システムは、地盤や建屋の床だけでなく建屋の壁にも地震計を設置し、自然地震と人工波の両方を観測可能な世界初のシステムです。常設地震計とモバイル型地震計を組み合わせることで、建屋3次元詳細解析モデルの妥当性確認に必要な応答データを取得しています。
飛翔体衝突に係る原子力施設への影響評価研究
竜巻による飛来物や航空機などの飛翔体が原子力施設に衝突する場合に備え、原子力施設の安全性確保に必要となる評価手法を整備するため、飛翔体衝突による建屋や建屋内に設置されている機器(内包機器)への影響評価に関する研究を行っています。
具体的には、飛翔体の衝突速度や衝突角度等による建屋や内包機器への影響評価を通じて、衝突による原子力施設の損傷評価に係る手法の整備を行っています。飛翔体衝突による建屋外壁の局部損傷及び内包機器への影響評価のための試験を実施し、試験結果等を踏まえて損傷評価手法等を整備し、原子力施設を対象とした飛翔体衝突による影響評価が可能となるよう、試験及び解析の両面から研究を進めています。
建屋の外壁を想定した鉄筋コンクリート板構造に対する衝突試験の例
建屋外壁の局部損傷については、衝突物の壁への「貫入」、壁の「裏面剥離」及び衝突物の「貫通」に着目し、飛翔体の剛性(剛飛翔体及び柔飛翔体)、衝突角度(垂直及び斜め衝突)等を考慮した飛翔体衝突試験を実施し、建屋外壁を模擬した鉄筋コンクリート板構造の損傷状況に係る試験データを取得しました。
鉄筋コンクリート板構造の裏面剥離評価の例
RC板構造の裏面剥離によるコンクリート破片の飛散に着目し、粒子法を適用することで、建屋内包機器の損傷にとって重要となるコンクリート破片の飛散方向や飛散速度等の試験結果の再現に成功した。
コンクリート板構造に対する衝突試験の例
衝突解析に用いるコンクリート材料構成則の選定に係る知見を拡充するため、コンクリート(C)板構造を対象に衝突速度をパラメータとした飛翔体衝突試験を実施し、局部損傷評価に資する試験データを取得した。
建屋及び内包機器を模擬した鉄筋コンクリート箱型構造への衝突試験の例
建屋内包機器への影響評価については、建屋外壁、内包機器及び衝突による影響を受けやすい部品を模擬した箱型試験体を用いて衝突試験を実施し、飛翔体衝突時の建屋における応力波伝播や内包機器への影響等に係る試験データを取得しました。
現実的な衝突条件(柔飛翔体、斜め衝突)における衝突試験の再現解析を実施し、飛翔体や鉄筋コンクリートの非線形特性及びそのひずみ速度依存性、試験体支持部のばね定数等を適切にモデル化することによって、解析結果と試験結果はよく一致することを確認しました。