2026年7月30日
国立大学法人神戸大学
日本原子力研究開発機構

UBe13の完全ギャップ・スピン三重項超伝導
剥がされた40年にわたる謎のベール

神戸大学大学院理学研究科の藤秀樹教授および南晶子さん(研究当時博士課程前期課程)らと日本原子力研究開発機構の芳賀芳範研究主幹、大阪大学大学院理学研究科の大貫惇睦名誉教授らの研究グループは、金属間化合物UBe13において完全超伝導ギャップをもつスピン三重項超伝導状態が実現していることを世界で初めて実験的に突き止めました。今後のスピン三重項超伝導の開発や次世代の量子コンピュータへの応用が期待されているトポロジカル超伝導体の理解に向けた新たな展開が期待されます。

この研究成果は6月26日に日本物理学会が発行する国際学術誌『Journal of the Physical Society of Japan』に掲載され、Editors’ Choiceに選ばれました。『Journal of the Physical Society of Japan』では、優れた成果を表彰するため、Editors' Choice論文を選出しています。

ポイント

研究の背景

図1 (a) スピンのイメージ, (b)スピン1重項クーパー対のイメージ。(c)スピン三重項クーパー対のイメージ。

研究の内容

図2 NMRを用いたスピン磁化率の測定パターン(●)。赤破線が通常の超伝導体で期待される振る舞い。青線がスピン三重項超伝導体で期待される振る舞い。

今後の展開

用語解説

注1 スピン三重項超伝導

クーパー対とよばれる2つの電子が逆向きに自転(スピン)をしながら対形成するスピン一重項状態と2つの電子が同じ向きにスピンして対を作るスピン三重項超伝導状態がある。超伝導体の多くは前者のスピン一重項に分類されるものが多い。

注2 スピン磁化率

電子や原子核などが持つ、自転のような性質を「スピン」と呼び、このスピンが磁場中でどれだけ応答して向きをそろえるかを示す量で、物質の電子状態を調べる指標。

注3 マイスナー反磁性

物質が超伝導状態(電気抵抗がゼロになる状態)になったとき、内部に入り込もうとする磁場を完全に外へ押し出す(排除する)性質のこと。 これにより、超伝導体の内部の磁束密度はゼロになる。磁石の上に超伝導体を置くと、この反発力によってフワフワと浮き上がる「磁気浮上現象」が有名。

注4 核磁気共鳴(NMR)法

磁場の中に置かれた原子核が、特定の周波数の電磁波(ラジオ波)と相互作用してエネルギーを吸収・放出する現象(核磁気共鳴)を利用した分析手法。物質の分子構造や性質を原子レベルで壊さずに調べることができるため、物理学のみならず化学分析や、医療用のMRI(磁気共鳴画像装置)に応用されている。

注5 完全超伝導ギャップ

超伝導になると常伝導状態と超伝導状態の間に超伝導ギャップと呼ばれる超伝導粒子が常伝導粒子になる際のバリアが生じる。このバリアにはノードと呼ばれる抜け穴が存在することがあるが、完全超伝導ギャップでは抜け穴が全く存在しない状態。

注6 トポロジカル

数学の「位相幾何学(トポロジー)」に由来する言葉で、「連続的に変形しても変わらない性質」を指す(例:穴の数が同じなら、コーヒーカップとドーナツは同じ形とみなす)。 近年、物質の電子状態にこの概念を取り入れた「トポロジカル物質」の研究が盛んで、外部からのノイズや傷に非常に強く、壊れにくい量子状態を作れるため、次世代の量子コンピュータへの応用が期待されている。

注7 量子コンピュータ

「0か1か」のビットで計算される従来のコンピュータに対し、「0であり1でもある」という量子力学的な重ね合わせ状態(量子ビット)を利用して計算するコンピュータのこと。特定の複雑な計算(暗号解読、新素材や医薬品の開発など)を、超高速で処理できる可能性を秘めている。トポロジカルな性質により壊れにくい量子状態を持ち合わせたものをトポロジカル量子コンピュータともいう。

謝辞

本研究は日本学術振興会科学研究費補助金(課題番号JP24K00574, JP23K03302, JP23K03332, JP23K25829, JP23H04871, JP15H05745, JP15H05882, JP15H05885)の支援を受けて行われました。また、本研究は極低温状態を作り出すために神戸大学コアファシリティ・センターによる液体ヘリウムと液体窒素の供給支援を受けました。

論文情報

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