令和4年3月30日
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

目に見えない小さな粒子1個から隠した核活動を見つけ出す
―超極微量プルトニウムとウランの同位体組成分析技術にIAEAが期待―

【発表のポイント】

図1 査察試料に付着している極微小な核物質粒子をマイクロメートル以下の精度で判別し、1つの粒子からプルトニウムとウランの同位体組成分析ができる技術。

【概要】

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉 敏雄、以下、「原子力機構」という。) 安全研究・防災支援部門 安全研究センター 保障措置分析化学研究グループの宮本 ユタカ グループリーダーらは、粒径がマイクロメートル以下の極微小プルトニウムとウランの粒子を検出し、その同位体組成を分析できる技術を開発しました。

プルトニウムやウランの同位体組成は同位体濃縮や原子炉燃料としての有無など使用された履歴により変化するため、個々の核物質粒子に対してその同位体組成を調べることで、未申告の核活動の存在の有無を確認することができます。IAEAはその事を利用し、原子力施設の査察時等に核物質から一部を抜き取って直接分析する他に、原子力施設の壁や床などに付着しているちりやほこりを布でふき取った試料(以下、環境試料と呼ぶ)を採取し、それに含まれる極微量核物質を分析しています。原子力機構は、IAEAが技術的な能力を認定したIAEAネットワーク分析所1)の一つとして、2004年からIAEAが実施する原子力施設の査察時に採取された環境試料に含まれる極微量核物質の分析に協力してきました。この技術は、仮に我が国が原子力を平和目的以外に使用しているのではないかという疑いがかけられた時に、そうでは無いことを示すためにも使用できるものです。

査察によって採取された環境試料では、ウラン粒子の場合、自然界に存在するウランと同位体組成が近く、1マイクロメートル以上の大きさであるため、比較的簡単に見つけて同位体組成を測定できます。一方、プルトニウム粒子は密閉された空間で厳重に管理されているので、ウラン粒子のような大きい粒子が施設から見つかることはありません。しかし、プルトニウムは通常の自然環境下には存在しないので極微小であってもその存在を見分けることができます。原子力施設の管理では検出できない極微小プルトニウム粒子が査察試料には付着しており、光学顕微鏡を使っても形を観察できないほどの大きさです。そのため、環境試料から目的となる粒子をウラン粒子と同じ方法で採取することができません。また、1つの粒子の中にウランとプルトニウムが混合している場合も考えられます。このような粒子に対しても、そのウランとプルトニウムそれぞれの同位体組成を測定できる技術の開発が求められてきました。

本研究では、粒子の形状が観察できないほど非常に微小なプルトニウム粒子や、ウランとプルトニウムが混在している粒子に対して、両元素の存在の有無を視覚的に判別できる技術と、化学的に分離しないでも千兆分の1グラムの超極微量元素の同位体組成を精度良く分析できる技術を開発しました(図1)。この分析技術では、それぞれの元素に対して特徴的に反応する検出材を組み合わせて使うことで、粒子がどの元素を含んでいるのかを視覚的に判別することができます。また、同位体組成の分析中に粒子の加熱温度を変えることで、1つの粒子から両元素の同時分析を可能にしました。IAEAから受領した評価用試験試料に対してこの技術を適用し、その分析結果をIAEAに報告したところ、その精度と信頼性が認められ、IAEAによる分析能力の評価試験に合格しました。このことは我が国が原子力を平和利用に限って使っていることを自ら証明する能力が向上した事も意味しています。

この超極微量核物質の同位体分析方法によって原子力施設における活動状況をより明らかに推測できると、IAEAはこの分析技術の応用に期待を寄せています。

【これまでの背景・経緯】

国際原子力機関(IAEA)は核不拡散条約(NPT)2)に基づき、核物質が平和目的にのみ利用され、核兵器に転用されていないことを検証するため、査察官が原子力施設に立ち入って活動を調査しています。こういった施設の内部の立入査察では、査察官が設備・装置、部屋の壁や床等をふき取って環境試料を採取しています。

IAEAは持ち帰ったこの試料の中に含まれる極微量の核物質の同位体組成を質量分析装置で分析することによって、その原子力施設等でどのような核活動が行われていたのかを調べています。この測定はIAEA自体が行うものの他に、IAEA加盟国にあってこの活動に協力している「IAEAネットワーク分析所」に依頼をして行われるものもあります(図2)。

図2 IAEAネットワーク分析所の役割

原子力機構では、極微量核物質の化学処理と分析が可能なクリーンラボ(高度環境分析研究棟:CLEAR)において核物質の極微量分析技術を開発しています。また、IAEAネットワーク分析所の一員としてIAEAから依頼された環境試料の分析を2004年から行い、IAEAの活動に大きく貢献しています。IAEAが実施する標準試料を使った分析能力比較試験では、原子力機構の分析結果の正確さはネットワーク分析所の中でも常に上位を維持しており、IAEAから大きな信頼を得ています。

これはIAEA加盟国としてIAEAの査察活動に積極的に協力するという国際貢献の観点以外にも、IAEAから分析能力が認められることで、万が一、我が国における原子力活動に対して未申告活動の疑義が生じた場合でも、原子力機構の高い分析技術により、説得力のある反証を示すことが可能である事を意味します。

図3 IAEA査察官による環境試料採取の様子(左)と採取された環境試料(右)

図3に示すようにIAEA査察官によって採取された環境試料には10億分の1グラムから千兆分の1グラムの極微量のプルトニウムやウランを含む粒子が存在しています。しかし、試料中には土壌など様々な物質に由来する粒子も数多く存在しており、その構成元素が極微量の核物質の正確な分析を妨害します。また、様々な同位体組成を有する核物質粒子を正確に分析するためには、プルトニウムやウランの粒子を多数のちりなどの粒子の中から見分けて、個々に分析する必要があります。そのための分析方法の一つとして「飛跡法(トラック法)」と呼ばれる方法があり、原子力機構でも、この方法を採用しています(図4右、従来法)。

この方法では、布製の環境試料に付着している粒子を吸引してプラスチック(ポリカーボネイト)製のフィルタに集めた後、有機溶剤でフィルタを溶かして捕集した粒子が埋め込まれた薄いフィルムを作ります。ウランの核分裂反応や、プルトニウムの放射性崩壊により放出される高速の粒子に対してそれぞれ特徴的に反応する検出材を使って、これらの核物質を含む粒子がどこにあるかを調べます。

原子力機構では、これまでウラン粒子に対する同位体組成分析技術を飛跡法を用いて開発してきました。環境試料中に存在するウラン粒子は光学顕微鏡で観察できるほど大きいので試料として扱いやすいこと、既存の分析技術が比較的容易に適用できることなどから、ウラン粒子に注目して分析技術の開発を進めてきました。2010年に原子力機構は、IAEAにより実施されたウラン粒子の同位体組成分析技術にかかる能力試験で、合格の評価を受けて環境試料の分析を開始し、付着しているウラン粒子の同位体組成の分析結果をIAEAに報告してきました。

プルトニウム粒子については、試料全体からプルトニウムだけを化学的に分離する方法でプルトニウムの同位体組成や総量を分析して来ましたが、この測定方法では環境試料全体に対する平均的な情報しか得られません。異なる同位体組成を持つプルトニウム粒子を個々に分析するためには、1マイクロメートル以下の極微小なプルトニウム粒子を環境試料から見分けて同位体組成を測定する必要があります。

この課題を解決するためには、査察試料に対してプルトニウムやウランを含む核物質の粒子をその他の粒子から見分ける技術と、見分けた粒子に含まれるプルトニウムやウランの同位体組成を詳しく測定できる技術の開発が必要で、今回私たちはそれにチャレンジすることにしました。

【今回の成果】

本研究では、原子力科学研究所内にあるクリーンルームを備えた高度環境分析研究棟(通称:CLEAR)において、IAEA査察官が原子力施設で採取した環境試料に付着している核物質粒子に対して、マイクロメートル以下の微粒子1粒に含まれるプルトニウムとウラン両方の同位体組成を分析できる技術を開発しました。

図4に今回、我々が開発した極微量核物質粒子分析技術の全体像をこれまでの方法と比較して示します。

図4 試料準備から同位体組成分析までの手順の比較

大きな違いは2点です。一つは、プルトニウム粒子が環境試料のどの部分に多く付着しているのかをマップを作成して情報を得ておくこと、もう一つは粒子の同位体組成を分析する際に測定試料をウラン、プルトニウムと分けずに一度に両方の元素の同位体組成を分析できるようにしたことです。今回、我々が開発した方法について、順を追って詳しく説明します。

まず、IAEA査察官が原子力施設で採取した環境試料に付着している粒子を回収する必要があります。我々は環境試料に付着している粒子をフィルタが付いた吸引器で吸い取って集めました。

事前に行った粒子回収試験では、ウラン粒子は査察試料から比較的多く回収できたものの、プルトニウム粒子は回収作業をていねいに何度も繰り返しましたが数個しか回収できませんでした。これでは査察した施設の核活動を十分に知ることができません。査察官は対象施設の壁や床を手などを使って布で拭き取っているので、粒子が布に不均一に付着しているのです。

ウラン粒子は付着している数も多いので、環境試料上の回収場所を特に気にしなくても分析するには十分な数のウラン粒子を回収することができます。しかし、プルトニウム粒子の場合、ウラン粒子よりも非常に微小で付着量が非常に少ないことや、環境試料の一部分にプルトニウム粒子が集まって付着していることから、プルトニウム粒子を数多く集めるにはその場所を狙って粒子を回収しなければならないことが分かりました。そのためには、環境試料に手を加えることなく、しかも単純な方法で短期間にプルトニウム粒子の分布情報を得る必要がありました。

そこで、我々はプルトニウム粒子が集まって付着している部分が視覚的に分かるように、アルファ線に対して高感度に反応する検出材を環境試料全面に数日間密着させて、プルトニウム粒子のマップを作ることを考案しました。プルトニウムもウランも、放射性崩壊によってアルファ線を放出します。しかし、プルトニウム中に最も多く存在する質量数-239である同位体(プルトニウム-239)は半減期がウランの同位体よりも短いので、同じ大きさのウラン粒子よりも多くのアルファ線を放出するため、プルトニウム粒子の方が早く黒く写ります。このように放射能強度のマップを作ることで、どの部分にプルトニウム粒子が集まっているのかを知ることができます。この方法の利点としては、照射設備や分析装置などが全く不要なことです。図5にプルトニウム粒子マップの例を示します。

図5 アルファ線検出材で検出されたプルトニウム粒子
(左)粒子回収前、(右)粒子回収後

この査察試料では、多数のプルトニウム粒子が非常に限られた場所に密集して点状に付着していることが分かります。このマップで黒く示された部分の粒子を集中的に吸引することで、多くのプルトニウム粒子を効率的に回収することができました。

次に、回収したフィルタに付着している様々な粒子からプルトニウムやウランの粒子だけを特定する必要があります。図6は、原子力施設で採取した環境試料に付着している核物質粒子の中から、プルトニウムやウランの粒子を特定する方法の概略を示しています。我々は飛跡法(トラック法)と呼ばれる方法を用いました。この方法ではプラスチックなどでできた検出材を使います。核物質に含まれる原子核が原子核反応を起して放出した高速の粒子が検出材に衝突すると放射状に小さな傷がつきます。この傷の中心位置を読み取ることで、目的とする核物質粒子の場所を特定する方法です。

図6 飛跡法(トラック法)による環境試料中のウラン粒子、プルトニウム粒子の特定

ウラン粒子の場合、トラック法のひとつであるフィッショントラック法3)を用います。この方法は、検出材をフィルムに密着させた状態で原子炉により中性子を照射します。質量数が235であるウランの同位体(ウラン-235)は、原子核内にその中性子を取り込んで核分裂反応を起こし、原子核が二つに分裂します。電気を帯びたこの核分裂生成物粒子が高速に検出材に衝突すると、ウラン粒子を中心とした放射状の目に見えない小さな傷を作ります。フィルムと検出材は密着しているので、検出材にできた傷を観察すれば、フィルムのどこにウラン粒子があるのかが視覚的にわかります。

プルトニウム粒子に対しては、アルファトラック法4)を用います。質量数が239であるプルトニウムの同位体(プルトニウム-239)の放射性崩壊を利用します。このプルトニウムはアルファ粒子を放出して違う元素に変わります。アルファ粒子に対して高感度に反応する検出材を用いると、フィルム内のプルトニウム粒子から高速に出たアルファ粒子がこの検出材に衝突したときにウラン粒子の場合と同様、小さな傷を作ります。この傷からプルトニウム粒子の位置を探ることができます。これまでは複数の試料フィルムを使ってウラン粒子分析用とプルトニウム粒子分析用に分けて準備し、それぞれの元素にあった検出材を使ってウラン粒子とプルトニウム粒子を選び出し同位体組成を分析していました。本法では1枚の試料フィルムに対してウラン粒子分析用とプルトニウム分析用の検出材だけを交換することで、ウランとプルトニウム両方について粒子の位置を探ることができるようになりました。

次に、位置を特定したプルトニウムやウランの粒子を含む部分のフィルムを切り取ります。プルトニウムやウランから高速に放出された粒子によって検出材できた傷は非常に浅いので、そのままの状態では観察することができません。そのため、検出材だけを暖かい水酸化ナトリウム水溶液に浸して、その傷を広げて観察できやすくする必要があります。このとき、検出材全体が熱を受けて数十マイクロメートルほど縮むため、この化学処理した検出材を再びフィルムに重ね合わせても検出材のトラックが示す位置は、フィルム内にある核物質粒子の位置から少しずれてしまいます。この状態では、測定したい粒子が埋まっているフィルムを正確に切り取ることができません。そこで、熱による検出材の収縮の度合いを測るため、化学処理をする前にフィルムと検出材の同じ位置にレーザーで印をつけておき、化学処理前後の位置を読み取ることで、ずれた長さを補正しています。これまで、この補正計算を手作業で行っていたため、粒子の位置情報を詳しく正確に読み取るには時間と労力が必要でした。今回、位置情報をより正確に読み取れる電動ステージを導入するとともに、化学処理前後の印の位置を全て読み取って変形の度合いを一括で計算処理できるように改良しました。これにより、測定したい核物質粒子の位置を3マイクロメートル以下の誤差で正しく求めることができるようになりました。この改良によって同位体組成を測定したい粒子が数多くあっても、短時間で粒子を含むフィルムを切り出せることができるようになりました

このようにして選び取った核物質を含む粒子に対して、プルトニウムやウランの同位体組成を表面電離型質量分析装置(TIMS:Thermal Ionization Mass Spectrometry)で測定します。このとき、粒子にプルトニウムとウランの両方の元素が混在している場合もあるので、それぞれの元素に対して同位体組成を測定する必要があります。プルトニウム、ウランで対象となる同位体がそれぞれ4つありますが、これまでの分析装置では検出器が1つしかなく、プルトニウム分析用とウラン分析用に測定試料を分けて準備し、プルトニウム、ウランそれぞれに複数の同位体を順番に測定することが必要でした。また、この装置は粒子を真空中で高温に加熱してイオン化させながら同位体組成を測定するので、測定を長時間続けると試料が全てイオン化されてなくなってしまいます。存在する割合が低い同位体では限られた測定時間内に十分な強度の信号を得ることができず、測定値の不確かさ(約10%)を小さくすることも課題でした。

そこで同位体組成の測定方法に工夫をしました。図7に示すように我々がこれまでに開発してきた試料の加熱温度を段階的に上げながら同位体比を測定する方法(連続加熱昇温法5))を適用することです。この方法だと、1つの試料からプルトニウムとウランの両方について、同位体組成を測定することができます

さらに、複数の高感度な検出器を備えたマルチコレクタ型表面電離質量分析装置(MC-TIMS)によって、複数の同位体を精度良く(既存分析法の2~3倍向上)、同時に測定することが可能となりました

この測定技術を環境試料の分析に用いたところ、核物質粒子1粒からプルトニウムとウランの両方についてそれぞれの同位体組成を測定することに成功しました。さらには、これまでウラン中に存在する割合が低いため測定の不確かさが大きかったウラン同位体(U-234及びU-236)や千兆分の1グラムの超極微量プルトニウム同位体についても不確かさを2~6%に抑えて、精度良く測定することが可能となりました。

図7 連続加熱昇温法によるウランとプルトニウム同位体存在度の測定

原子力機構は、上記の試料前処理技術及び測定法を利用してIAEAによる分析能力の評価試験を受けました。IAEAから受領した3試料に対して、査察試料の分析に対して十分な精度(不確かさ:1~5%)で同位体組成の分析結果をIAEAに報告しました。IAEAはその測定結果が正確であると評価し、原子力機構はこの試験に令和3年12月7日付で合格しました。これを受けて、今後、IAEAからの依頼により本法による試料分析を実施していくこととなります。

また、今回の認証により、原子力機構はIAEAが各国に分析を依頼している主要な分析技術6)について、全てを実施できる能力を持つ数少ない重要な分析所となりました。原子力機構は、この分析法を含む高感度な分析能力を有する高い開発能力を持つ研究機関としてIAEAに評価されるだけでなく、ネットワーク分析所としてIAEAの活動に対して積極的に貢献していることから、IAEAより感謝状を令和4年3月3日に受領しました。

【研究の意義と今後の予定】

本研究で開発したIAEA査察試料分析のための極微小核物質粒子の同位体組成分析技術は、今後、分析試料のIAEAから依頼される保障措置環境試料の同位体組成分析に適用します。トラック試料の中性子照射に原子力機構の研究炉(JRR-3)を利用するとともに、短期間で正確かつ精度良い同位体組成分析結果を得るために、核物質粒子の判別や測定試料作成の自動化技術を開発し、それをIAEAの保障措置活動で必要となる極微量核物質分析に適用していく方針です。我々の分析能力の向上に対し、IAEAは査察能力の強化につながるとして原子力機構に大きな期待を寄せています。同時に、我が国における原子力活動に対して未申告活動の疑義が生じた際の日本の反証能力の向上にも貢献します。

図2および図3に掲載しているIAEA査察官による環境試料採取の様子は、IAEA Imagebankより引用したものです。

【論文情報】

D. Suzuki, F. Esaka, Y. Miyamoto, M. Magara

Direct isotope ratio analysis of individual uranium-plutonium mixed particles with various U/Pu ratios by thermal ionization mass spectrometry
Applied Radiation and Isotopes, 96, p.52-56 (2015).
DOI: 10.1016/j.apradiso.2014.11.012

F. Esaka, D. Suzuki, M. Magara

Fission track identification and micro-sampling of individual uranium particles for subsequent analysis with thermal ionization mass spectrometry
Analytical Chemistry, 87, p.3107-3113 (2015).
DOI: 10.1021/acs.analchem.5b00236

C.G. Lee, D. Suzuki, F. Esaka, M. Magara, K. Song

Ultra-trace analysis of plutonium by thermal ionization mass spectrometry with a continuous heating technique without chemical separation
TALANTA, 141, p.92-96
DOI10.1016/j.talanta.2015.03.060

C.G. Lee, D. Suzuki, Y. Kokubu, F. Esaka, M. Magara, T. Kimura

Simultaneous determination of plutonium and uranium isotope ratios in individual plutonium-uranium mixed particles by thermal ionization mass spectrometry
International Journal of Mass Spectrometry, 314, p.57-62 (2012).
DOI: 10.1016/j.ijms.2012.02.006

D. Suzuki, Y. Kokubu, C.G. Lee, F. Esaka, M. Magara, T. Kimura

Isotope ratio analysis of individual plutonium and uranium-plutonium mixed oxide particles by pthermal ionization mass spectrometry with a continuous heating method
Chemistry Letters, 41, p.90-91, (2012).
DOI: 10.1246/cl.2012.90

Y. Kokubu, D. Suzuki, C.G. Lee, J. Inagawa, M. Masaaki, T. Kimura

Application of a continuous heating method using thermal ionization mass spectrometry to measure isotope ratios of plutonium and uranium in trace amounts of uranium-plutonium mixture sample
International Journal of Mass Spectrometry, 310, p.52-56, (2012).
DOI: 10.1016/j.ijms.2011.11.008

【助成金の情報】

本研究は原子力規制庁受託事業「軽水炉等改良技術確証試験等委託費(保障措置環境試料分析調査)事業」の成果の一部が含まれています。

【用語の説明】

1) IAEAネットワーク分析所

査察等によって採取された環境試料を分析するためのIAEAにより技術認定された分析所。米国、フランス、ロシア、英国、日本、韓国、中国、オーストラリア、ブラジルの9か国とEC、IAEAの2機関の分析所から構成される。このネットワーク分析所は以下のことを目的として設立された。(1) IAEA保障措置分析所における分析処理能力の補填と拡充、(2) 複数の分析所の分析結果の比較による信頼性確保、(3) 分析に必要な標準物質が提供できる研究機関の確保。IAEAネットワーク分析所は、活動参加の際にIAEAによる技術認定が必要であるだけでなく、品質管理試料を分析させることで分析結果の正確さをIAEAが定常的に確認している。

核物質が平和目的に限った活動にのみ利用され、核兵器等に転用されていないことを担保するために行われる検認活動を「保障措置」と呼ぶ。

2) 核兵器の不拡散に関する条約(核不拡散条約、NPT)

核不拡散体制の基礎となる条約。1970年に発効し、1995年にこの条約は無期限に延長された。核兵器保有国(米国、ロシア、英国、フランス、中国)を除く条約加盟国に対して、核兵器その他の核爆発装置を取得したり製造しないこと、原子力の利用は平和目的のための原子力の研究や利用に限られることとし、その担保に保有するすべての核物質についてIAEAによる保障措置を要求している。

3) フィッショントラック法

多数の粒子からウランを含む粒子だけを視覚的に判別する方法。試験試料の粒子を薄いフィルムの中に閉じ込めた後、その上にフィッショントラックの検出材を密着させた状態で研究用原子炉の中性子を照射する。粒子に含まれるウラン同位体(ウラン-235)と原子炉の中性子が原子核反応を起こして生成した高エネルギーの原子核が検出材内に放射状の傷を作る。この傷の中心をたどることでウランを含む粒子の位置を特定することができる。

4) アルファトラック法

多数の粒子からプルトニウムを含む粒子だけを視覚的に判別する方法。試験試料の粒子を薄いフィルムの中に閉じ込めた後、その上にアルファトラックの検出材を密着させた状態を10日間程度、保っておく。粒子に含まれるプルトニウムの放射性崩壊によってプルトニウムから放出された高エネルギーのアルファ粒子(ヘリウム原子核)が検出材内に放射状の傷を作る。この傷の中心をたどることでプルトニウムを含む粒子の位置を特定することができる。

5) 連続加熱昇温法

ウランとプルトニウムに分けて表面電離型質量分析装置(TIMS)で同位体比を測定する分析方法。原子力機構で開発された。ウランとプルトニウムがイオン化する温度が異なることを利用して、試料の加熱温度を連続的に昇温しながら測定することで、測定前に化学分離などをしないでも両元素の同位体組成を分析することができる。

6) IAEA保障措置分析における主要な分析技術

国際原子力機関(IAEA)の原子力施設内部の立入査察等において、採取された環境試料に付着している極微量のウランやプルトニウムに対して、IAEAネットワーク分析所において量や同位体組成などが分析される。そのための主要な分析技術として、以下の3つが挙げられる。

①【粒子分析(FT-TIMS法)】 試料に付着しているウラン粒子やプルトニウム粒子に対してフィッショントラック法やアルファトラック法を用いて選別し、表面電離型質量分析装置(TIMS)で同位体比を測定する。

②【粒子分析(LG-SIMS法)】 試料に付着しているウラン粒子に酸素のイオンビームを照射して試料粒子をイオン化した後、質量分析によって同位体比を測定する。

③【化学分析】 化学分離によって極微量のウランやプルトニウムを選り分けて量と同位体比を質量分析装置(主として誘導結合プラズマ質量分析装置、ICP-MS)で測定する。

参考部門・拠点:安全研究センター
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