国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

平成27年9月2日
国立大学法人大阪大学
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

超新星爆発のとき原子はどう動くのか
―高輝度X線により極限状態の原子の世界を世界で初めて実現―

【研究成果のポイント】

【概要】

図1

ハイパワーレーザー装置(J-KAREN)

大阪大学未来戦略機構第八部門(光量子科学研究部門)のアナトリーファエノフ教授らの研究グループは、日本原子力研究開発機構(以下、原子力機構)のハイパワーレーザー装置(J-KAREN)を使った研究で、高輝度X線により超新星爆発など自然界に近い極限状態の原子の世界を初めて明らかにすることに成功しました。

これまでにも米国の超大型のX線自由電子レーザー(XFEL)を用いて、

X線で極限的な物質状態を作る研究が行われてきましたが、自然に近い強力なX線での極限状態を実現するには至っていませんでした。

この研究成果は、宇宙で起こっている極限状態を理解する手掛かりとなり、さらに、より強いレーザー光を用いることでX線の発生効率を爆発的に上げることが可能となり、新たな産業応用への展開も期待できるものです。

本研究成果は、英国のNature系オンライン科学雑誌「Scientific Report(サイエンティフィックレポート)」に、9月2日(水)午後6時(日本時間)に掲載されます。

【研究の詳細】

大阪大学未来戦略機構第八部門(光量子科学研究部門)(研究者:アナトリーファエノフ)は、原子力機構の原子力科学研究部門量子ビーム応用研究センター(研究者:西内満美子)等との国際連携研究チームとともに、ハイパワーレーザーを使い、極限状態の原子の世界を初めて明らかにすることに成功しました。

これまでにも米国の超大型のX線自由電子レーザー(XFEL)を用いて、X線発生研究が行われてきましたが、理想的な固体密度のプラズマの実現には至っていませんでした。

今回、研究チームは、世界最高のコントラストを実現している原子力機構のハイパワーレーザー装置(J-KAREN)で、非常に強いレーザー光を固体物質に照射してX線を発生させ、それにより極限状態を創り出す実験を行いました。その結果、1500万度の輻射温度(注1)のX線を発生させて、固体密度で300万度の温度のプラズマ状態を実現することに成功しました。そして、強いX線から創り出された極限状態では、内殻電離状態イオン(注2)が多数生成され、強力なX線が爆発的に増加していることを発見しました。

(注1)輻射温度の比較
太陽の輻射温度 約6000度、
超新星爆発の輻射温度 1000万~10億度

(注2)内殻電子が空っぽになった複雑な状態

【本研究成果が社会に与える影響】

今回の研究によって、極限状態での原子の振る舞いが解り、超新星爆発など宇宙で起こっている極限状態を理解する手掛かりとなることが期待できます。また、レーザー光の強さを上げれば上げるほどX線の発生効率が爆発的に増加するということも解り、世界に数か所しかない大型施設でしか利用できなかったX線の利用の門戸を広げ、より精密なX線非破壊検査や新物質創成といった産業応用にもつながることと確信しています。

【特記事項】

本研究成果は、英国のNature系オンライン科学雑誌「Scientific Report(サイエンティフィックレポート)」に、9月2日(日本時間:9月2日(水)午後6時)に掲載されます。

本研究成果は、大阪大学未来戦略機構第八部門(光量子科学研究部門)(研究者:アナトリーファエノフ)、原子力機構の原子力科学研究部門量子ビーム応用研究センター(研究者:西内満美子)、九州大学総合理工学府(研究者:渡辺幸信)、米国のロスアラモス国立研究所(研究者:J. Colgan)、サンディア国立研究所(研究者:S.B. Hansen)及びロシアの合同高温科学研究所(研究者:S. A. Pikuz Jr.)の国際連携研究チームによる共同研究により行われました。

参考部門・拠点: 量子ビーム応用研究センター

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