国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

平成27年4月9日
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

103番元素が解く、周期表のパズル
-ローレンシウム(Lr)のイオン化エネルギー測定に成功-

【発表のポイント】

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄。以下「原子力機構」という)先端基礎研究センター重元素核科学研究グループ佐藤哲也研究員、浅井雅人研究主幹、塚田和明研究主幹及び永目諭一郎副センター長らの研究グループは、ドイツ・マインツ大学、スイス・欧州原子核研究機構の研究チーム等との国際共同研究[1]において、103番元素「ローレンシウム(Lr)」のイオン化エネルギー[2]測定に世界で初めて成功しました。

元素の周期表上で、原子番号100を超える非常に重い元素「超重元素」は、自然界に存在しないため核反応により人工的に作り出します。しかし、合成される割合が少なく、その寿命が数秒~数分程度であることから、1度に1個あるいは数個の原子しか扱えず、その化学的性質はほとんど明らかにされていません。この中で、103番元素ローレンシウムが、周期表上で「アクチノイド」と呼ばれる15の元素群の最後に位置することは理論上予測されていましたが、実験的な裏付けはなされていませんでした。

今回、当研究グループは、原子力機構原子力科学研究所のタンデム加速器[3]施設に設置したオンライン同位体分離器[4]を改良し、その性能を向上させ、ローレンシウムのイオン化エネルギーの測定に世界で初めて成功しました。その結果、ローレンシウムの原子核の周りを運動している最も外側の電子が、極めて緩く結合していることがわかりました。このことは、同じく周期表上で「ランタノイド」と呼ばれる15の元素群に見られる傾向と一致し、1940年代にノーベル化学賞受賞者のシーボルグ博士が提唱した、「アクチノイド」元素群が103番元素で終了するとの予測を、半世紀以上経てようやく実証したことになります。

これは理論によって推測された周期表のパズルが一つ解けたとも言えます。

このような最も重いアクチノイドであるローレンシウムを含む超重元素の化学的振る舞いに関する研究は、原子力に重要なウランを含むアクチノイド元素群の全体像を明らかにして行くと共に、他の元素との反応性といった化学的な性質のより深い理解に貢献します。

本研究成果は、英国科学誌「Nature」(4月9日号)に掲載され、同誌上の「News&Views」で紹介されると同時に、同号の表紙を飾る予定です。

参考:
Project JAEA「103番元素(Lr)が解く 周期表のパズル ~あの周期表が書き換わる?~」

参考部門・拠点: 先端基礎研究センター

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