独立行政法人日本原子力研究開発機構/国立大学法人大阪大学

平成27年1月8日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
国立大学法人大阪大学

先端X線分光法が「働く触媒中の電子の動き」を捉える
~触媒の新規創製、性能向上に指針を与える新しい測定技術を実証~

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 松浦祥次郎。以下「原子力機構」という。)のジャリッジイニヤス研究員(現、米国ブルックヘブン国立研究所研究員)、国立大学法人大阪大学大学院工学研究科の笠井秀明教授らは、ダイハツ工業株式会社との共同研究により、触媒の反応過程における電子の動きを、その場で詳細に観測するための測定技術を開発しました。

触媒反応においては反応分子、触媒、さらには触媒を支える担体などがそれぞれの間で複雑に電子のやり取りをしており、そのような電子の動きの解明が触媒機能の理解に不可欠です。

本研究グループは、その電子の動きを捉えるのに適した測定技術として原子力機構が大型放射光施設SPring-8のビームラインBL11XUにて独自に開発を進めてきた先端X線分光法(共鳴非弾性X線散乱法1))を用い、自らが開発に関与してきた自動車排ガス浄化のためのインテリジェント触媒2)と、一般的な自動車触媒を、触媒が働いている環境下で比較測定しました。その結果、触媒となる貴金属とその触媒を支える担体との間での電子の動き3)がインテリジェント触媒の自己再生能、さらには反応ガスの吸着能を支配していることを解明し、開発した先端X線分光法の有効性を実証しました。

今回開発した先端X線分光法を活用することで、触媒が働いているその場で、反応分子、触媒、担体の間の電子の動きに関する知見が得られます。これにより、貴金属の使用の低減・代替を目指す自動車触媒や燃料電池電極触媒など、実用触媒の新規創製・機能向上に対する新たな指針を与えることができると期待されます。

この成果の内容は近日発行の、米国化学学会触媒誌ACS Catalysisに掲載される予定です。

参考部門・拠点: 量子ビーム応用研究センター

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