独立行政法人日本原子力研究開発機構

平成26年12月19日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

金属中の磁気・電気の流れを切り替える
- 原子力分野での熱電発電利用に向けて -

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長:松浦祥次郎)先端基礎研究センターの前川禎通 センター長、森道康グループリーダー、顧波研究員、徐卓研究員、ティモシーザイマン教授 (仏国ラウエランジュバン研究所)らの研究グループは、極僅かにイリジウム2を添加した銅において、磁気の流れを電気の流れ(もしくはその逆)に変換する物理現象(スピンホール効果3)で生じる電圧の符号が、電子同士の互いに反発しあう力によって反転することを理論的に示しました。

近年、電子の電荷の流れである電流の代わりに、電子の磁気の流れであるスピン流4を利用するスピントロニクス5が次世代の省エネルギー電子デバイスとして期待されています。このスピントロニクスの実用化には、スピンホール効果を用いてスピン流を制御することが重要な課題となっています。

今回、当研究グループは、銅のスピンホール効果が、僅かに添加したイリジウムの電子状態によって反転することを密度汎関数法6量子モンテカルロ法7を用いた理論計算により明らかにしました。この計算結果は実験結果と一致するものです。本結果は、光などの外からの刺激によってイリジウムの電子配置が変化すると、スピンホール効果で生じた電圧の符号が反転して、電流の向きが切り替わることを意味し、磁石を用いた高感度光センサーの原理になると期待されます。さらに、本原理を用いて、磁性体の金属がもつ熱を利用して電気を取り出す「スピン熱電発電8」の研究を進展させ、排熱利用への応用が期待されることから、原子力の経済性向上や安全利用の検討に繋がる結果と言えます。

本研究成果は、米国物理学会誌「Physical Review Letters」オンライン版に12月26日に掲載される予定です。

参考部門・拠点: 先端基礎研究センター

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