独立行政法人日本原子力研究開発機構

平成26年11月14日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

下水汚泥焼却灰中における放射性セシウムを90%以上回収することに成功
-放射性物質を含む汚泥焼却灰の処理に道筋-
(お知らせ)

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 松浦祥次郎)先端基礎研究センターの香西直文研究主幹らの研究グループは、東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故(以下「福島第一原発事故」)によって生成された、放射性セシウムを含む下水汚泥焼却灰の化学状態を分析し、灰を数百ナノメートルサイズの粒子まで粉砕して処理することで、90%以上の放射性セシウムを回収することに成功しました。

福島第一原発事故の影響で、下水汚泥を処理した焼却灰中には放射性セシウムを含むものがあり、適切な方法で処理することが必要です。その方法のひとつとして、焼却灰を酸溶液によって溶解する方法が検討されていますが、灰に含まれる放射性セシウムが酸溶液に全ては溶け出さないため、放射性セシウムの回収率が低いことが課題となっています。

当研究グループは、様々な酸溶液により溶出された放射性セシウムの濃度と、鉄などの元素濃度の分析をした結果、放射性セシウムは主に鉄酸化物に保持されて溶け出すことと、一部の鉄酸化物はケイ酸塩鉱物により覆われているため溶解しないことを解明しました。そこで、灰を数百ナノメートルの細かさに粉砕し、塩酸溶液で溶解することで、粉砕前は70%しか回収できなかった放射性セシウムを90%以上回収することに成功しました。また、溶解残渣(さ)物を純水や海水に浸しても、放射性セシウムは溶出しないことも確認しました。

これらの結果は、福島第一原発事故によって大気中に放出された放射性セシウムなどを含む、指定廃棄物の適切な処理と、その容積を減少させることに大きく貢献するものと期待されます。

本研究成果は、米国学術誌「Water Research」のオンライン版に 11月8日に掲載されました。

参考部門・拠点: 先端基礎研究センター

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