独立行政法人日本原子力研究開発機構

平成26年10月30日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

レアアース・レアメタルのリサイクルに革新的技術で大きく貢献
−廃材内レアアースを低コスト・高効率に高純度で回収−
(お知らせ)

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 松浦祥次郎。以下、「原子力機構」という。)と株式会社アサカ理研(代表取締役社長 野納敏展。以下、「アサカ理研」という。)は、同機構が開発を進めている“エマルションフロー法”を用いて、光学ガラス廃材や低品位レアアース原料から酸処理などによって溶出させたレアアースを、低コストで高効率に、純度99.999%(ファイブナイン)まで分離・精製することに成功しました。原子力機構では、放射性廃液の浄化などに用いるために開発したエマルションフロー法を、原子力以外の産業分野にも活用するとともに、実用・商業化の過程で得られた知見・経験を還元することで、原子力分野における化学分離技術の高度化を図っています。エマルションフロー法による廃材内レアアースの分離・精製技術の開発は、同機構が特許技術をアサカ理研に開示して行った共同研究の成果です。価格変動の激しいレアアース・レアメタルのリサイクルは、従来の方法では商業ベースにのせることがきわめて困難でしたが、低コストと高効率が両立したエマルションフロー法の登場は、その実現を大きく前進させました。

“エマルションフロー法”は、溶媒抽出と呼ばれる方法の一種です。溶媒抽出では、水と油(溶媒)を混合して水に溶存する成分の油への抽出を促し、その後、排水のために水と油を分離します。工業的には、撹拌によって水と油を混合した後、水と油が重力分離するのを待って排水するミキサーセトラー法が一般的に用いられます。一方、エマルションフロー法では、撹拌などを行わず、ポンプ送液のみで水と油を乳濁状態(エマルション)にまで混合し、抽出容器内の流れの変化を利用して重力分離を待たずに水と油を迅速分離します。この方法では、廃材内レアアース処理コストをミキサーセトラー法の5分の1以下にできる上に、10倍以上の処理速度を実現でき、多数の装置を連結して用いるレアアース精製を10分の1以下にコンパクト化させました。また、排水に油分を混入させないことから環境にやさしい方法です。

アサカ理研では、新たな研究開発拠点を福島県いわき市に建設し、経済産業省および福島県の大型補助金を活用しながら、レアアースを高純度回収するエマルションフロー法の実証プラント試験を進めています。

参考部門・拠点: 原子力基礎工学研究センター

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