独立行政法人日本原子力研究開発機構

平成26年10月8日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

超小型・屋外対応の直流130万ボルト耐電圧試験装置の開発に成功
~イーター用中性粒子入射装置の信頼性がさらに向上~

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 松浦祥次郎。以下、「原子力機構」という。)核融合研究開発部門NB加熱開発グループは、株式会社日立製作所と協力して、従来よりも10分の1規模の超小型で屋外でも使用できる、直流130万ボルト耐電圧試験装置1)の開発に成功しました。

これは、現在、国際協力でフランスに建設中の、核融合実験炉イーター2)中性粒子入射装置(NB)3)電源設備に要求されている、高い信頼性を確実にするためのもので、イーターに先行してイタリアに建設中のNB実機試験施設4)の耐電圧試験を、屋外で一括して実施することを可能にしました。この耐電圧試験結果はイーターの設計に反映され、イーター建設に向けた重要なマイルストーンの一つを達成しました。

イーターNBでは、プラズマ5)加熱用の高エネルギーイオンビーム生成のために、直流100万ボルトの超高電圧直流電源設備を用います。通常、100万ボルト級の超高電圧機器の耐電圧試験は、絶縁の必要性から、水分やダストが管理された建屋内で、約20メートル四方の十分な絶縁距離をとり、機器単体ごとに実施されます。しかしながらイーターNBの電源設備は、各国で調達した電源を屋外で組み合わせ、80メートルを越える巨大な設備になります。そして電源設備の高い信頼性を確実にするためには、設備全体の耐電圧試験を一括で実施することが求められます。そのためには、耐電圧試験装置を従来の10分の1程度の領域に収めること、屋外での試験に対応することが必要でした。

それらの要求を満たすため、原子力機構などでは、絶縁ガスを封入した圧力容器内に耐電圧試験用電源を収納して、耐電圧試験装置の小型化を図るとともに、この圧力容器をNB電源設備に直接接続して圧力容器内への水分・ダストの流入を極力抑える構造とすることで、屋外試験対応を実現しました。また装置の設計にあたっては、屋外環境条件を想定した絶縁ガスの耐電圧特性を新たに取得し、絶縁ガスの仕様を決定しました。さらに、試験に影響を与えるダストが少量存在する場合に、直流100万ボルトの耐電圧を維持するための許容電界を新たに明らかにし、耐電圧試験用電源の部品の形状・配置を最適化しました。その結果、従来の10分の1程度の3メートル四方の設置面積に収まる、超小型の直流130万ボルト耐電圧試験装置を実現し、屋外に設置されるNB電源設備の一括耐電圧試験を可能にしました。この圧力容器の製作は、イタリアの規制当局と議論を重ね、日本より厳密に規定されている欧州の設計法や溶接施工法に従って実施しており、日本調達機器の中で初めて欧州規格(高圧ガス規制)に合格したものです。

今後、本試験装置は、調達工程通りに2016年にイタリアへ輸送され、2017年2月からイーターNB実機試験施設で電源設備の一括耐電圧試験に使用される計画です。

参考部門・拠点: 核融合研究開発部門

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