独立行政法人理化学研究所 / 独立行政法人日本原子力研究開発機構

2014年9月22日
独立行政法人 日本原子力研究開発機構

まだら模様に凍る電子
─ 磁場で変化する重元素化合物による新しい原子力材料開発の推進 ─

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構 (理事長 松浦祥次郎) 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター 重元素系固体物理研究グループの神戸 振作グループリーダーらは、フランス原子力庁グルノーブル研究所(CEA-Grenoble)と共同で、重元素化合物YbRh2Si21)の低温での特異な電子状態を初めて明らかにしました。


水を冷やすと凍って氷となるように、低温では物質のなかの電子は、言わば凍って色々な状態をとります。特定の物質が低温に冷やされた時に起こる超伝導現象もその一例です。

今回の研究では、重元素と呼ばれる元素のうち、イッテルビウム(Yb)化合物の一つであるYbRh2Si2に注目し、 核磁気共鳴法2)を用いて電子状態を観測した結果、低温で低磁場の環境下においては、水と氷が共存するように、二つの異なった電子状態が、まだら模様になって共存することが初めて見出されました。さらに、磁場を高くすると、水と共存していた氷が溶けるように、まだら模様から均一した電子状態に変わることも分かりました。これらは、今までに観測されたことのない新しい現象の発見であり、重元素を含む化合物の物性研究において磁場による電子制御の新たな展開が期待されます。


今回の研究成果は、磁場による電子回路の開閉など、重元素が有する幅広い電子機能性の解明や新しい原子力材料開発につながり、将来の原子力科学の発展に寄与すると期待されます。


本研究成果は、英国科学誌 「Nature Physics」のオンライン版に9月22日に掲載される予定です。

参考部門・拠点: 先端基礎研究センター

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