独立行政法人日本原子力研究開発機構 / J-PARC

平成26年8月29日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
J-PARCセンター

DNAの曲がりやすさにも遺伝子発現情報が含まれている
-J-PARCにおける中性子準弾性散乱実験とシミュレーション計算により、
DNAと水和水の運動の観測に成功-

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 松浦祥次郎。以下「原子力機構」という。)原子力科学研究部門量子ビーム応用研究センターの分子ダイナミクス研究グループ中川洋研究副主幹と分子シミュレーション研究グループ米谷佳晃研究副主幹は、中性子準弾性散乱実験1)とコンピュータシミュレーションにより、塩基配列2)によってDNAの曲がりやすさが異なることを実証するとともに、DNAの二重らせん構造の副溝3)にある水和水4)の運動とも密接に関係していることを明らかにしました。

これまでの研究では、DNAの曲がりやすさの程度は、塩基配列によって異なることが分かっていました。

今回の研究では、シミュレーション計算で曲がりやすさが大きく異なると予測された二つのDNAに関して、DNAの水和水の運動を直接観測できる中性子準弾性散乱実験をJ-PARCで実施し、その運動の詳細をシミュレーション計算により追跡した結果、DNAの曲がりやすさは塩基配列によって異なることを実証しました。さらに、実験データとシミュレーションデータを統合して解析することによって、1)運動の大きいDNAの方が曲がりやすいこと、2)DNAの水和水の運動は水素結合の寿命と高い相関を示すことを見出しました。つまり、DNAの曲がりやすさはDNA二重らせんの副溝に存在する水和水の水素結合の寿命によって決まるという分子メカニズムを明らかにしました。

本成果は、DNA配列には塩基の情報だけではなく、曲がりやすさという情報も含んでいることを実証したものです。今回実証したDNAの情報は、DNA配列から特定の遺伝子を働かせたり抑制したりする仕組みの解明に貢献できると期待されます。
本研究成果は、2014年8月29日に「Physical Review E」に掲載される予定です。

参考部門・拠点: 量子ビーム応用研究センター

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