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平成26年6月11日
独立行政法人 日本原子力研究開発機構

強磁場で引き出されたウラン化合物の特異な磁性
─世界最高磁場で核磁気共鳴法を応用─

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構 (理事長 松浦祥次郎) 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター 重元素系固体物理研究グループの酒井宏典 研究副主幹らは、同機構 システム計算科学センター、ブラジル カンピーナス大学 (UNICAMP)、米国 フロリダ州立大学 国立強磁場研究所 (NHMFL)、米国 ロスアラモス国立研究所 (LANL)と共同で、米国フロリダ州タラハシーにあるNHMFLの世界最高磁場45テスラを発生できるハイブリッド磁石(注1)を用いて、核磁気共鳴 (NMR) 法(注2)により、ウラン化合物URu2Si2(注3)に強磁場をかけて出現した磁気状態の特異な構造を決定しました。

水分子が0℃になると整列秩序して氷となるように、極低温では固体中の電子も、超伝導状態や強磁性などの秩序状態をとります。ウラン化合物URu2Si2も、極低温で電子が何らかの秩序を形成することは判明していましたが、その電子の状態が電気的なものなのか、磁気的なものなのか、全く分かっておらず、研究者の間で「隠れた秩序」と呼ばれています。今回、酒井研究副主幹らは、NHMFLの世界最高磁場を用いて、この電子の「隠れた秩序」状態を変化させて、出現した磁気状態を NMR 法により調べました。その結果、強磁場をかけて出現した磁気状態の構造は、ウラン電子(注4)のもつ微小磁石の向きかけた方向に対して垂直方向に並ぶ特異な構造であることを初めて発見しました。これはウラン電子が原子核の周りを球対称から歪んだ軌道で運動することで生じる磁性と、ウラン電子のスピン(注5)に起因する磁性との相互の影響(スピン-軌道相互作用)により、微小磁石同士の間に、特別な指向性 が強く現れたものと言えます。

今回の研究成果は、電気や磁気を熱に変換できるような新しい機能をもったウラン化合物を作るための原理の解明につながり、将来の原子力科学の発展に寄与します。

本研究成果は、米国物理学会誌 「Physical Review Letters (フィジカル レビュー レターズ)」の オンライン版に6月11日(水)に掲載される予定です。


参考部門・拠点: 先端基礎研究センター

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