独立行政法人日本原子力研究開発機構

平成26年2月7日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

海水中のリチウム資源を回収する革新的な元素分離技術を確立
−リチウム資源循環型社会の実現へ大きく前進−

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 松浦祥次郎)核融合研究開発部門増殖機能材料開発グループの星野毅研究副主幹らは、内閣府の最先端・次世代研究開発支援プログラム1)において、イオン伝導体2)をリチウム分離膜として用い、リチウム分離過程で電気等の外部エネルギーを消費せず、電気を発生しながらリチウム3)を分離する革新的な元素分離技術を開発し、核融合炉燃料製造やリチウムイオン電池等の原料のリチウム資源を海水から回収することに成功しました。

日本では、需要が高まっているレアメタルであるリチウムを南米諸国からの100%輸入に頼っています。海外では、膨大な敷地で1年以上かけてリチウムを含む塩湖の水を自然蒸発させて資源回収しているため、今後のリチウム需要の急増に対応できず、資源不足に陥る懸念が報告されています。そこで、リチウムが海水中に無尽蔵に含まれていることに着目し、海水からのリチウム回収技術を開発しました。本開発では、海水とリチウムを含まない回収溶液間をイオン伝導体の分離膜で隔離し、海水と回収溶液間にリチウム濃度差を生じさせることにより、海水中のリチウムが回収溶液へ選択的に移動させる分離原理を発案し、さらにリチウムの移動と同時に発生する電子を電極により捕獲することで、電気を発生4)しながらリチウムを回収できる全く新しい技術を世界で初めて確立しました。

本技術は、塩湖からの回収技術と比べ、省スペース、短時間、さらに、電気を新たに生むゼロ・エミッション5)化を目指した革新的な技術で、使用済リチウムイオン電池からのリチウムリサイクル、海水の塩製造や淡水化処理時に廃棄している濃縮海水からのリチウムを含む各種有用なミネラルの効率的な回収などにも適用可能です。本技術は特許を出願済であり、今後はパイロットプラント規模への拡張を目標とし、革新的な科学技術イノベーションの創出を目指します。

以上

参考部門・拠点:核融合研究開発部門

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