平成25年10月29日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長:松浦祥次郎。以下「原子力機構」という。)原子力基礎工学研究部門 環境動態研究グループの中西貴宏任期付研究員らは、茨城県北部の褐色森林土1)の落葉広葉樹林において、2011年5月から2年以上に及ぶ継続した観測により、東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故(以下「福島第一原発事故」)に由来する放射性セシウムの落葉層から土壌への移動メカニズム、移動量及びそれらの時間変化をはじめて明らかにしました。福島県山間部の約7割を占める褐色森林土における放射性セシウムの移動の実態解明、将来予測につながることが期待されます。
2011年3月の福島第一原発事故により大気中に放出された放射性セシウムは、調査を行った落葉広葉樹林の土壌表面を覆う落葉層に沈着しました。落葉層に沈着した放射性セシウムは、大部分が事故後数カ月以内の降水量が多い時期に雨水によって土壌に浸透し、それ以降は1年の周期的な気温の変化に依存した落葉落枝の分解速度の変動に応じ、徐々に土壌に供給されることが明らかになりました。
ライシメーター2)による浸透水の連続観測の結果、落葉層から土壌に移動する放射性セシウムは、雨水等の浸透水によって土壌深層へ移動しますが、移動する放射性セシウムの割合は、土壌に蓄積された量に対し、ごく僅かでかつ経過時間とともに減少傾向にありました。以上から、今後も10cmより深くまで移動する割合は小さいことが明らかになりました。
本研究の結果から、放射性セシウムは地下水を経由して森林地帯から周辺地域には流出しにくいと考えられます。一方で、土壌表層に蓄積した放射性セシウムが林産物にどのように取り込まれていくのか、注視していく必要があります。本研究成果は、学術誌「Journal of Environmental Radioactivity」に近日中にオンライン掲載される予定です。
以上