【用語解説】

1)スピン偏極

電子が有する自転に相当する性質のことをスピンといい、磁気の起源でもある。スピンの状態には上向きと下向きという2つの状態があり、一定の集団における向きの偏りをスピン偏極という。

2)スピン偏極準安定ヘリウムビーム

原子内の電子が通常の安定した状態から高いエネルギーに励起された状態は、多くの場合短時間で元の安定な状態に戻るが、寿命の長い励起状態にある原子を準安定原子という。スピン偏極準安定ヘリウムビームとは、図1に示してある(1s)(2s)の電子状態にある準安定ヘリウム原子において、電子のスピンが上向きまたは下向きに揃ったものを集めたビームである。

3)グラフェン

黒鉛(グラファイト)を形成する1層の部分(炭素原子層)から成る二次元物質。炭素原子層の蜂の巣状のネットワーク構造に起因して、高速かつ少ない抵抗で電子を輸送でき、長い距離に渡って電子スピンの状態が保持されることなどから、スピントロニクス材料として卓越した性質を示すことが期待されている。

4)スピントロニクス

電子の持つ電荷に加えて電子の磁気的性質であるスピンを利用して情報の伝達や処理を行う新しい電子技術。従来のエレクトロニクスデバイスと比較して、高速動作や低消費電力化、高い機能集積度の実現が可能とされている。

5)従来の(スピン状態)観測手法

例えば、固体表面に紫外線を照射して放出される電子の、エネルギー、運動量、スピンを測定するスピン分解光電子分光法がある。

6)二次元物質

二次元的な結晶構造を持つ物質や、電子が平面内に閉じ込められたような二次元的な電子状態を表面や異なる物質との接合面などに持つ物質をいう。スピントロニクス材料として注目されている物質として、グラフェン、六方晶窒化ホウ素、二硫化モリブデンなどや、ある種の絶縁体物質などがあげられる。

7)エピタキシャル成長

単結晶の基板上において、基板の結晶方位に対して特定の方位に薄膜が成長することをいう。


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