独立行政法人日本原子力研究開発機構

平成25年3月27日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

ウラン化合物超伝導体において結晶格子をひずませることにより
低温の電子状態を高温で出現させることに成功

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 鈴木篤之)先端基礎研究センター重元素系固体物理研究グループの神戸振作グループリーダーは、フランス原子力庁(CEA)グルノーブル研究所の青木大博士、Jacques Flouquet博士らと共同で、ウラン化合物超伝導体(URu2Si2)を17.5K以下の極低温に冷却した際に出現する電子状態を、結晶に力を加えてひずませることで、より高温で出現させることに成功しました。
  物質は、温度や圧力などの外部要因によって、例えば「固体」「液体」「気体」に見られるように様々な「状態」をとります。また、同じ固体であってもさらにその結晶構造などが変化していることがあります。このような異なる状態においては、原子や分子の並び方、電子の在り様などが変化しています。
  ウラン化合物超伝導体(URu2Si2)には、極低温のある領域で長年解明されていない未知の状態をとります。近年、この未知の状態への転移に伴い結晶格子は4回対称1)を保ちながら、電子状態のみが4回対称から2回対称に変化することがわかりました。今回の研究では、物体に一方向からのみ力を与えて結晶格子を4回対称から2回対称にするひずみ2)を人工的につくりだすことで、電子系の2回対称状態をより高温で出現させることに成功しました。また、結晶格子をひずませる圧力と電子系が2回対称に変化する温度に相関関係があることを見出しました。これは、未知の状態が、電子系のみならず、結晶格子の回転対称性とも強く関係していることを示しています。
  今回の成果により未解明の低温状態の理解に大きな進展が期待されます。本研究成果は、近日中に米国物理学会誌「Physical Review B」電子版に掲載される予定です。

以上

参考部門・拠点:先端基礎研究センター

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