学校法人光産業創成大学院大学/独立行政法人日本原子力研究開発機構/独立行政法人科学技術振興機構

平成24年10月2日
学校法人光産業創成大学院大学
独立行政法人日本原子力研究開発機構
独立行政法人科学技術振興機構

イオンマイクロビームを用いたリチウムイオン電池内部のリチウム分布の高分解能可視化に成功

【発表のポイント】

学校法人光産業創成大学院大学(理事長 晝馬 明(ひるま あきら)、以下、「光産創大」)と独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 鈴木篤之(すずき あつゆき)、以下、「原子力機構」)は、リチウムイオン二次電池1)(以下、「リチウムイオン電池」)の電極材料内部のリチウムの空間分布を、イオンマイクロビーム装置2)を用いて世界最高の分解能で可視化することに成功しました。

リチウムイオン電池は、携帯電話やノートパソコンなどの電子機器のみでなく、ハイブリッドカー3)や電気自動車などの輸送機器、さらには電力の平準化やスマートグリッド4) のための蓄電装置など、蓄電・動力源として、利用範囲がますます広がっています。

本研究において、粒子線励起ガンマ線放出(PIGE)元素分析法5)と呼ばれる技術を用い、リチウムイオン電池における電気の担い手であるリチウムイオンの分布を、従来の解像度を大幅に超えるマイクロメートル(以下、「µm」)レベルの解像度で直接観察する手法を確立しました。

さらに、この手法を用い、リチウムイオン電池の電極断面におけるリチウムの分布を測定し、この分布が電極の構造、充電条件等で大きく変化することを、初めて定量的に示すことに成功しました。

この手法の開発により、リチウムイオン電池開発における大容量・小型化、長寿命化などの向上に向けた研究開発を加速し、ひいては全地球的な環境・エネルギー問題の解決に貢献するものと期待されます。

本研究開発は、独立行政法人科学技術振興機構(理事長 中村道治(なかむら) みちはる))とスペイン科学・イノベーション省(MINECO)共同事業「戦略的国際科学技術協力推進事業」6)の「環境への挑戦のためのナノテクノロジー及び新材料」に採択された「イオンビーム分析技術を用いた先進電極材料の評価と次世代リチウムイオン電池のための電極材料の開発」(研究代表者:光産創大 加藤義章(かとう よしあき)学長、マドリード工科大学核融合研究所マヌエル・ペルラド(J. Manuel.Perlado)所長)として、両国研究チーム間の協力により平成23年12月から3年間の事業として進めているもので、国内では、光産創大、原子力機構・高崎量子応用研究所、株式会社豊田中央研究所、京都大学などが参加しています。

なお、この加速器利用実験は、原子力機構の実施する文部科学省補助事業である先端研究施設共用促進事業「明日を創り、暮らしを守る量子ビーム利用支援事業」7)による利用制度により、原子力機構のイオン照射研究施設TIARA8)において開発されたイオンマイクロビーム装置を用いて行われました。今回の成果を受けて、本研究開発については、本年度10月から開始される光産創大と原子力機構間の共同研究「イオンマイクロビーム分析を用いたリチウムイオン電池電極材料の評価技術の開発」として実施する予定です。

以上

参考部門・拠点:高崎量子応用研究所

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