用語説明

1)リチウムイオン二次電池
正極と負極の間をリチウムイオンが移動することで充電や放電を行う二次電池。電極材料として正極にはコバルト酸リチウム、負極には炭素が主に用いられる。両極板の間に電解質で満たされたセパレータが挟まれる。現在実用化されている2次電池の中では最もエネルギー密度が高く、高電圧が得られ、自己放電も少なく、いわゆるメモリー効果による充電容量の低下もないため、携帯電話によく用いられている。(参考:IT用語辞典「リチウムイオン電池」)
2)イオンマイクロビーム装置
加速器で発生させたイオンビームを、コリメーター(絞り)やスリットを用いて細く成形したり、さらに電場や磁場のレンズ作用を用いて集束したりすることにより、ターゲット位置でのスポットのサイズを極小サイズ(1µm以下レベル)にして照射する装置のこと。主にビームエネルギーが百万電子ボルト以上(>1MeV)のものを指し、100キロ電子ボルト以下(<100 keV)の集束イオンビーム(FIB)とは区別されることが多い。
3)ハイブリッドカー
動力源として、ガソリンエンジンと電気モーター等を組み合わせるなど、複数の作動原理や利用するエネルギーを状況に応じて単独あるいは複数用いて移動する車両のこと。日本などでは環境にやさしいエコカーとして認知されている。理由は道路事情により頻繁に加減速する必要があり、それをエンジンに代わって電気モーターが担うことによりハイブリッドのメリットが大きいことが挙げられる。
4)スマートグリッド
通信・制御機能を付加した電力網のこと。スマートメータと呼ばれる各戸、各事業者に設置された電気メータが自動的に電気使用料金の検針作業や電力事業者へ遠隔報告を行うとともに、通信制御機能を活用して、従来の中央制御では達成できない自立分散的な制御方式をとり入れることにより、停電防止、送電調整のほか多様な電力契約の実現などを可能にして、電力供給に係るコスト削減を目的とする。ここで変動する電力需給バラスや、太陽光発電、風力発電を始めとする再生可能エネルギーの天候や気候に左右される発電量の不安定性を調整するために、高性能の二次電池の開発導入が不可欠となる。(参考:Wikipedia「スマートグリッド」、環境ビジネスオンライン)
5)粒子線励起ガンマ線放出(PIGE)元素分析法
PIGEは、Particle Induced Gamma-ray Emissionの頭文字から。イオンビームと物質中の原子核との相互作用の結果放出される元素に特有のガンマ線を検出して、試料中の元素を同定する分析法。特に原子番号が小さいリチウム(原子番号3)等のように、後述のPIXEにおいて検出する特性X線のエネルギーが低くて通常の半導体検出器では同定が困難な軽元素の検出に用いられることが多い。
6)戦略的国際科学技術協力推進事業
戦略的国際科学技術協力推進事業は、科学技術分野における国際協力の推進を目的とし、独立行政法人科学技術振興機構が平成15年度から実施している事業である。本事業は、政府間合意等に基づき文部科学省が設定した協力対象国・分野の国際研究交流プロジェクトを支援するもので、米州、アジア、欧州、大洋州・中東・アフリカの23か国・地域との協力により、現在までに200を超える研究交流プロジェクトが実施されている。日本スペイン間では、「材料分野と他の分野を結合した複合領域」に関する協力が合意され、「環境への挑戦のためのナノテクノロジー及び新材料」領域に関し、17のプロジェクトが実施されている。
7)先端研究施設共用促進事業
大学などの研究機関等が保有する先端研究施設の共用を促進し、基礎研究からイノベーション創出に至るまでの科学技術活動全般の高度化を図るとともに国の研究開発投資の効率化を図ることを目的とした文部科学省の補助金事業である。平成21年度に、各研究機関の主体的取組及び弾力的運用を推進するため、「先端研究施設共用イノベーション創出事業【産業戦略利用】を廃止して創設された。日本原子力研究開発機構では、研究用原子炉JRR-3及びイオン照射研究施設等(TIARA等)が共用施設になっている。
8) イオン照射施設(TIARA)
原子力機構が高崎量子応用研究所に保有するイオンビーム利用のための研究施設。宇宙材料、新機能材料、バイオ技術などの研究に広く利用されている。幅広い利用ニーズに対応するための4台の特徴の異なるイオン加速器(サイクロトロン、タンデム加速器、シングルエンド加速器、イオン注入器)と多様なビームライン及び関連する実験装置からなる。TIARAは、Takasaki Ion Accelerators for Advanced Radiation Applicationsの頭文字から名付けられた。
9) 活物質
電池反応に直接関わって電力を発生させる起電物質を電池の活物質と呼ぶ。酸化剤は電池の放電反応にあたって相手を酸化して自らは還元されるので正極となり、正極活物質と呼ばれる。還元剤は相手を還元して自らは酸化されるので負極となり、負極活物質と呼ばれる。図1において、LiNiO2が正極活物質、C(グラファイト)が負極活物質に当たる。
10) 大型放射光施設「SPring-8」
独立行政法人理化学研究所と公益財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI)が運営するナノテクノロジーやバイオテクノロジーなどの研究を行うための世界最高性能の放射光共同利用施設
11) 大強度陽子加速器施設「J-PARC」
原子力機構と大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構が運営する素粒子物理、原子核物理、物質科学、生命科学、原子力など幅広い分野の最先端研究を行うための施設群である。J-PARCを構成する物質・生命科学実験施設(MLF)では、世界最高強度の中性子及びミュオンビームを発生させ、これらを用いて物質科学/生命科学研究を推進している。MLFに電池開発のための専用ビームライン「革新的蓄電池開発のためのビームライン(SPICA)」(本年9月4日完成)により、様々な動作環境における電池材料の構造変化の解析など、多様な実験が計画されている。
12)粒子線励起X線放出(PIXE)元素分析法
PIXEは、Particle Induced X-ray Emissionの頭文字から。イオンビームと物質中原子の内殻電子(原子核の近くを回る電子)との相互作用の結果放出される特性X線を検出して、試料中の元素を同定する分析法。リチウムのように原子番号が小さいと特性X線のエネルギーが低く、通常の半導体検出器では同定が困難なため、マグネシウムより重い元素の検出に用いられることが多い。
13)レーザー生成イオンビーム
ごく薄い(数µm厚)固体薄膜等の物質に極めて高い強度のレーザーを集光して照射することにより、ミクロン程度の微小空間に生成する極めて強い電磁場の作用によって発生する高エネルギーイオンビーム。従来の大規模な施設が必要なイオン加速器と異なり、イオンビームを加速するための大型の装置を必要とせず、コンパクトな粒子線ガン治療装置などへの利用が期待されている。本研究グループは、この方式によるイオンビームを材料分析に利用することにより、分析システムの材料開発現場への導入を図り、その場測定を実現するなど、開発プロセスの高効率化、コストの削減を目指している。

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