福島第一原子力発電所事故によって生じたセシウムで汚染された土壌等を除染することにより被ばく線量を低減する作業が、各地で進められようとしています。
この除染作業を実施するにあたって、予め除染方法や除染範囲などを検討して、被ばく線量を効率的に低減するための作業手順などを計画することは重要です。そのためには、除染方法に依存した除染係数2)や除染範囲などについて系統的に調べ、作業によって空間線量率がどのように低減するかを評価できるソフトウエアが必要です。
そこで、このような除染作業計画の立案を支援することを目的に、建物等の密集していない農村等を対象にした除染効果を評価するソフトウエアを開発しました。
本ソフトウエアの特徴は、パソコン上で1ケースの計算が数秒で終了するという迅速性と、詳細な3次元放射線輸送計算コードとほぼ同程度の精度を持つ正確性を兼ね備えた点にあり、様々なケーススタディを短期間に行い最適な除染方法を検討できます。開発にあたっては、以下の点に留意しました。
その結果、Microsoft® Excel 2007及び2010で利用することとして開発しました。
除染対象エリアの地図データを取り込み、その上に、航空機モニタリング、放射線モニタリングで得られた表面汚染密度データ及び除染係数のデータを入力できるようにしました。これらを入力することにより、除染前後の空間線量率の分布を評価し、地図上にカラーマップで表示します。
除染係数は除染方法に対応して表にまとめるようにし、除染係数(すなわち、除染方法)の違いによる空間線量率低減への寄与についての検討を容易にできるようにしました。計算は、グラフィカルユーザーインターフェースを通して、簡単に実行できるようになっています。
その結果、目標とする値まで空間線量率を低減するために、必要となる除染の範囲や放射性物質の除去割合を、あらかじめ推定することができるようになります。
本ソフトウエアは、3次元粒子・重イオン輸送計算コード(PHITS)4)(空気中や土壌中の放射線の吸収や散乱現象を高精度かつ詳細に計算可能)による計算結果と比較を行い、ほぼ同程度の結果を得られることを確認しています。
本ソフトウエアは、利用の利便性を考えて、当機構のホームページにおいて、無償で公開することとしました。