<補足説明>

※1 極端(きょくたん)紫外領域
可視光よりも波長が短く、X線よりも波長が長い領域で、波長が数10 nm程度の領域。
※2 自由電子レーザー
光速近くまで加速された電子ビームは、アンジュレーター(磁石のNとSの極性を交互に反転させた磁石列を上下に並べた装置)を通過するとき周期磁場により蛇行し、その蛇行のたびに放射光を発生する。その放射光と電子ビームの相互作用を繰り返し強めていくことにより、コヒーレントな光を発生させるレーザー。赤外から可視領域の自由電子レーザーは、アンジュレーターの両端に鏡を置くことにより光共振器を構成し、光と電子ビームの相互作用の繰返し数を増やしてレーザー発振を行う。自由電子レーザーの最大の特徴は、電子ビームのエネルギーやアンジュレーターの磁場強度を変化させることで、レーザーの波長を連続的に変えられる(連続波長可変)ことにある。
※3 超蛍光
量子光学現象の1つで、励起原子が集団で自発放射する現象。コヒーレントなパルス光である。1954年に理論予測が発表され、その後のレーザーの発明により、マイクロ波から可視光領域において実験で確認された。現在、光増幅器、光バッファメモリ、量子テレポーテーションなどに応用研究が展開されている。
※4 コヒーレント
複数の波の位相がそろっていること。言い換えると、波の山と山、谷と谷が重なっていること。
※5 SCSS(エス シー エス エス)試験加速器
「SPring-8 Compact SASE Source 」の略。SASEは自己増幅自発放射(Self Amplified Spontaneous Emission)を意味し、反射鏡を使わずに光を増幅してレーザー発振を得る方法を指す。2005年に日本のX線自由電子レーザー施設SACLAのプロトタイプ機として「SCSS試験加速器」をSPring-8キャンパス内に建設し、レーザーシステムの性能実証のための試験運転を行った。SACLAの32分の1の加速エネルギーを持ち、極端紫外域の自由電子レーザー光を発生する。2006年にレーザー発振に成功、現在も安定に稼働し有効な光源としてユーザーに利用されている。
※6 nm(ナノ メートル)
10億分の1 メートル
※7 ヘリウム原子
原子核と2つの電子からなる最も簡単な3体量子系物質である。ヘリウムは、理論と実験の両面から数多くの研究が行われている元素である。
※8 SACLA(さくら)
日本唯一のX線自由電子レーザー施設は、第3期科学技術基本計画における5つの国家基幹技術の1つとして位置付けられ、理研の大型放射光施設SPring-8に隣接して整備を行った。2011年3月には施設が完成し、愛称をSACLA(SPring-8 Angstrom Compact Free Electron Laser)と決定。SACLAは、これまでの放射光と比べて、輝度は10億倍、パルス幅は1,000分の1の 10フェムト秒、さらに100パーセント位相のそろったコヒ―レントなX線という性能を持つ。2011年6月に世界最短波長のX線レーザー発振に成功、目指す最短波長は0.06 nm。 基礎・基盤研究から、産業や応用研究開発まで、諸外国に先駆けて革新的な成果を創出することが期待されている。具体的には、がんやエイズなどの難病に対する特効薬の開発、持続的発展に必要な新エネルギーシステムの研究など、幅広い分野での活用が見込まれている。
※9 SASE(サセ)型自由電子レーザー
紫外線より短波長領域では高い反射率を持つミラーが存在しないため、光共振器を作ることができない。光共振器の代わりに長いアンジュレーターを用いて、コヒーレントな光を発生させる自由電子レーザーの1つの方式。SASE型自由電子レーザーの発明が極端紫外からX線領域の短波長自由電子レーザーへの道を拓いた。
※10 FLASH(フラッシュ)
ドイツ・ハンブルクのドイツ電子シンクロトロン研究施設(DESY)にて建設された極端紫外から軟X線領域の自由電子レーザー施設。
※11 LCLS(エル シー エル エス)
米国カリフォルニア州のスタンフォード国立加速器研究所にて建設されたX線自由電子レーザー施設。2009年春に世界最初のX線レーザー発振に成功し、同年秋より共同利用が行われている。
※12 フェムト秒
10兆分の1秒。光は真空中で1秒間に約30万km(およそ地球を7周半)進むことができるが、1フェムト秒では300 nmしか進むことができない。
※13 ストリークカメラ
極めて短時間に生じる高速な光の強度変化を計測する超高速光検出器。時間分解能は最小200フェムト秒。

図1 超蛍光の写真

高濃度のHe原子ガスに極端紫外レーザー(波長53.7 nm)を照射したところ、指向性のある非常に明るい青色(波長501.6 nm)の発光を観測した(画面中央)。

図2  ストリークカメラによる蛍光強度の時間発展とHe原子ガス濃度依存性

He原子ガスの濃度が高くなるに従って、パルスの最大強度を与えるまでの時間が短くなり、パルス幅も狭くなっていることが分かる。

図3 蛍光と超蛍光の違い 理系漫画家 はやのん


戻る