用語説明

注1) OECD/NEAの原子力施設安全委員会(CSNI)

経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA, NEA: Nuclear Energy Agency)は、原子力発電を安全で、環境に調和した経済的なエネルギー源として開発利用することを、加盟諸国政府間の協力によって促進するOECD傘下の国際機関である。NEA全体の政策的な決定はNEA運営委員会(年2回開催)にて行われ、詳細な活動内容は各国の専門家により構成される7つの常設技術委員会にて決定される。常設技術委員会の下部には各種専門分野によるワーキンググループ等が設けられている。原子力施設安全委員会(CSNI: Committee on Safety of Nuclear Installations)は、7つある常設技術委員会のうちのひとつ。CSNIは、加盟国が、原子炉及び核燃料サイクル施設の安全性を評価するのに必要な科学的、技術的知識基盤を維持、拡大するのを支援する。その主なタスクとして、加盟国間の国際プロジェクトを調整・促進し、成果をCSNI活動に反映させる。HTTRを用いたLOFCプロジェクトは、その中の一つである。

注2) 高温ガス炉

高温ガス炉は、@冷却材には化学的に不活性なヘリウムガスを用いているため、冷却材が燃料や構造材と化学反応を起こさないこと、A燃料被覆材にセラミックスを用いているため、燃料が1600℃の高温に耐え、核分裂生成物(FP)の保持能力に優れていること、B出力密度が低く(軽水炉に比べ1桁程度低い)、炉心に多量の黒鉛等を用いているため、万一の事故に際しても炉心温度の変化が緩やかで、燃料の健全性が損なわれる温度に至らないこと等の安全性に優れた原子炉である。また、900℃を超える高温の熱を原子炉から取り出せることから、熱効率に優れるとともに、水素製造等の発電以外での利用など原子力の利用分野の拡大に役立つ原子炉である。

注3) 高温工学試験研究炉(HTTR)

我が国初の黒鉛減速ヘリウムガス冷却型原子炉(高温ガス炉)で、熱出力30MW、原子炉出口冷却材最高温度は950℃である。平成10年11月10日に初臨界、平成13年12月7日に熱出力30MW及び原子炉出口冷却材温度850℃、平成16年4月19日に原子炉出口冷却材温度950℃、平成22年3月13日に950℃、50日間高温連続運転を達成した。

注4)  第W世代の原子力システム

第W世代の原子力システムの有力な候補として超高温ガス炉がある。超高温ガス炉は、原子炉の事故時に、「止める、冷やす、閉じ込める」の防止機能をすべて喪失しても、できる限り機器・設備に依存せずに、事故を治める固有の安全性により、放射線の有害な影響を発生させない将来の原子炉である。超高温ガス炉は、全電源喪失・冷却材喪失等が発生しても、炉心はいくつかの物理現象によって、原子炉出力を静定させ(ドップラー効果)、燃料温度を制限値以下に保ち(ふく射、自然対流)、放射性物質の閉じ込めを確保でき、第W世代原子炉の最有力候補である。

注5) 次世代原子力プラント計画(NGNP計画)

次世代原子力プラント計画(NGNP計画)は、米国において、エネルギー政策法(Energy Policy Act of 2005)に基づき、電力と水素を併産する先進的原子炉、次世代原子力プラント(NGNP: Next Generation Nuclear Plant)を建設・運転するプロジェクトである。炉型として、高温ガス炉が選定されている。米国エネルギー省(DOE)の主導により、米国アイダホ国立研究所(INL)を中心とした研究開発、原子力メーカーによる設計・建設を行う。2021年の運転開始を予定し、現在、概念設計及び研究開発が進められている。

一方、米国の原子力産業9社(DOW, Entergy, Areva, GA, WHなど)が、高温ガス炉技術の開発と商用化にむけ、NGNPアライアンス(NGNP Industrial Alliance)を結成した。NGNPアライアンスの代表を務めるDOW社のフレッド・ムーア氏は、2011年8月1日、「高温ガス炉は世論の動向を大きく変える」とする記事を発表(※)。

これまで、原子力機構は、NGNP計画に資するための委託研究をNGNP計画からゼネラルアトミクス社経由で受託してきたところであるが、米国DOEは、米国の高温ガス炉開発を進めるにあたり、HTTRを高温ガス炉の研究開発の中心施設として利用することが重要かつ効率的と考えており、炉物理、熱流動、安全などの分野で、HTTRを用いた試験研究が要請されている。

(※)2011年8月1日、NGNPアライアンスの産業界代表を務めるDOW社(世界最大の化学メーカー)の取締役フレッド・ムーア氏が、アメリカ原子力学会に以下の記事を投稿。

  • 現在、アメリカ合衆国と他の国が直面している主要な政策問題、すなわち、エネルギーセキュリティ、雇用問題、長期間の安定したエネルギー価格、および気候変動といった喫緊の政策課題に対して、高温ガス炉は、重要かつポジティブな影響与えることができる。
  • 高温ガス炉は、冷却材として水を使用せず、出力密度が低いという固有の安全特性や、その結果としてあらゆる動的な機器や運転員の操作に頼ることなく、いかなる事故においても燃料破損に至ることのないこと、使用済燃料が空気で冷却可能であるという点が突出しており、結果として、周辺公衆の域外やシェルターへの避難を必要としない。

[出典:http://ansnuclearcafe.org/2011/08/01/the-htgr-is-a-game-changer/?utm_ANS+Nuclear+Café&utm_campaign=7196cf095c-RSS_EMAIL_CAMPAIGN&utm_medium=email ]

注6) カザフスタン高温ガス炉計画

資源大国である一方、技術立国を掲げるカザフスタン共和国では、クルチャトフ市に、発電および地域暖房を目的とし、将来的には水素製造を視野に入れた、原子炉出力50MW規模の小型高温ガス炉を建設する、カザフスタン高温ガス炉(KHTR)計画を検討中であり、2008年までにカザフスタン国立原子力センター(NNC: National Nuclear Center)が、予備概念検討(Pre-FS: Pre-Feasibility Study)を完了した。

2011年5月6日に日・カザフスタン原子力協定が発効。本協定には、軽水炉とともに、高温ガス炉の設計/建設/運転及び安全性に関する協力について記載されている。

原子力機構は、2007年4月の日本−カザフスタンのハイレベル官民合同ミッションでの原子力研究開発に関する覚書の調印以来、カザフスタンの要請に基づき、カザフスタンの高温ガス炉開発に対して、日本企業と連携して、設計、安全性、人材育成の分野での協力を実施してきた。

一方、カザフスタン国家原子力計画(2011年8月に政府承認)においては、高温ガス炉の建設とそれを用いた発電と地域暖房等が記載されており、NNCは、2012年1月から「高温ガス炉の成立性検討」を予定しており、原子力機構及び日本企業はそのための技術協力を要請されている。

参考−世界におけるウラン埋蔵量−カザフスタンは378,100t、オーストラリアに次いで世界第2位−出典:総務省統計局ホームページ


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