<用語解説>

注1)スーパーミラー
多層膜によるブラッグ反射を利用して、物質の全反射臨界角を超える角度でも全反射を起こすことが可能な反射鏡のこと。ブラッグ反射とは結晶などの周期構造を持った表面にX線、電子線、中性子線などのエネルギービームが入射した場合、入射するエネルギービームの波長、周期構造の間隔で決まる特定の方向に反射を起こす現象のこと。中性子用のスーパーミラーの場合、反射率が大きなニッケルと反射率が小さなチタンを、膜厚をわずかに変えながら交互に積層して作製する。
注2)大強度陽子加速器施設(J−PARC:Japan Proton Accelerator Research Complex)
2008年に茨城県の東海村に建設された、世界最高クラスの大強度陽子加速器施設のこと。J−PARC内にある物質・生命科学実験施設ではパルス陽子ビームにより世界最高強度の中性子ビームを発生させて物質科学や生命科学などに関する研究を推進している。
注3)石英基板
石英ガラスで作製した基板のこと。石英ガラスとは、シリコン酸化物の中でも特に不純物を含まないもののこと。結晶のような周期的な構造や、多結晶のような粒界を持たないアモルファスと呼ばれる構造を有する。これを化学的にエッチングする場合、不純物を含む一般のガラスと比べて表面の粗さが大きく劣化することがない。
注4)全反射ミラー(Total Reflection Mirror)
表面に対して、臨界角以下の角度で光や中性子を入射させて使用するミラーのこと。
注5)数値制御ローカルウエットエッチング(NC−LWE:Numerically Controlled Local Wet Etching)法
特殊なノズルを用いて形成した局所的な液相エッチング領域を加工物の表面に対して速度制御走査することによって形状創成を行う超精密加工法。非接触かつ化学的な加工法であるため振動などの外乱に対して鈍感であり、加工量はエッチャントの滞在時間によりナノメートル・サイズの精度で正確に形状を作製できる。
注6)イオンビームスパッタ成膜
電界で加速して運動エネルギーを持ったイオンを、成膜したい材料でできたターゲットと呼ばれる板に当て、ターゲットから飛び出した粒子を反対側に設置した基板上に付着させる成膜手法のこと。付着力の強い膜を成膜することが可能。
注7)臨界角
光や中性子などを入射した場合に屈折を伴わずに反射のみが起こる入射角のこと。

<参考文献>

“High-precision figured thin supermirror substrates for multiple neutron focusing device”
(多重中性子集光デバイスのための高精度薄型スーパーミラー基板)


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