≪用語解説≫

※1:大型放射光施設SPring-8

兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高の放射光を生み出す理化学研究所の施設で、その運転管理は高輝度光科学研究センターが行っています。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8GeVに由来。放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げた時に発生する、細く強力な電磁波のこと。SPring-8では、この放射光を用いて、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われています。

※2:K(ケルビン)

物質を冷やすことができる最下限の温度が絶対零度です。この絶対零度を0とした温度目盛りを絶対温度とよび、ケルビン(K)を単位として用います。すなわち、絶対零度は0ケルビン(K)で、使い慣れたセルシウス温度で表すと-273.15℃になります。ちなみに、0℃は絶対温度で273.15Kになります。

※3:コンプトン散乱

光(X線)は粒子としての性質を持ち、光子とも呼びます。X線光子と電子がビリヤードの球のように衝突したときに、光子は電子によって散乱され、電子も弾き飛ばされてしまいます。衝突後の光子のエネルギーは衝突前に比べて低くなって観測されます。このような散乱現象をコンプトン散乱と呼びます。多くの教科書的な書物において、コンプトン散乱は静止した電子とX線光子 との弾性衝突として説明されていますが、現実の物質中の電子は常に運動しています。そのため、コンプトン散乱されたX線光子は、電子の運動量を反映して(ドップラー効果)、エネルギー分布を示します。エネルギーに対するX線の散乱強度を測定したものをコンプトン・プロファイルと呼び、これが物質中の電子の運動量を反映していることを利用して、物質の電子状態が調べられています。

※4:ホール

電子が詰まっている状態から一部の電子を取り去った状態を粒子のようなものと見なしてホールと呼びます。負電荷の電子を取り去ったところにできるホールは正電荷をもつ仮想的な粒子なので、正孔とも呼ばれます。今回研究した La2-xSrxCuO4(LSCO)のうち、La2CuO4は、酸素の2p軌道が電子で完全に詰まっているため電子は動くことがでず、電流を通さない絶縁体です。La原子は3個、Sr原子は2個の電子を化学結合に提供するので、1個のLa原子を1個のSr原子で置き換えることは、電子1個分だけ取り去ること、すなわち1個のホールを添加することになります。すなわちLaをSrで置き換えると、酸素の2p軌道に孔ができて電子が動けるようになり、電気を通すようになります。この状態で冷却すると超伝導になります。

※5:運動量分布

[運動量]=[質量]×[速度]なので、運動量分布は速度分布と同じです。

※6:BCS理論

超伝導現象を微視的に解明した理論です。提唱者3名の頭文字、Bardeen、Cooper、SchriefferをとってBCS理論と呼ばれています。

※7:ホールをドープする

ホールを結晶中に添加することです。


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