平成22年6月7日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
国立大学法人東北大学

独立行政法人日本原子力研究開発機構、国立大学法人東北大学

超伝導体への磁気注入に世界で初めて成功
−超伝導を用いた量子コンピュータへ道を拓く−

日本原子力研究開発機構(理事長:岡ア俊雄)先端基礎研究センターの前川禎通センター長、東北大学(総長:井上明久)金属材料研究所の高橋三郎助教、及びIBMアルマデン研究所のStuart S. P. Parkin博士、Hyunsoo Yang博士、See-Hun Yang博士らの研究グループは共同で、超伝導体へスピン注1)と呼ばれる磁気を注入して超伝導を制御することに世界で初めて成功し、超伝導状態でのスピン(磁気)が通常の状態に比べて100万倍も安定であることを見出しました。

1999年、本研究グループの前川センター長らは、電気抵抗がゼロの超伝導体を二つの強磁性体(磁石)で挟み、超伝導体と強磁性体の間に薄い絶縁膜を挿入した積層構造のトンネル接合注2)デバイスでは、電圧を印加することにより超伝導体にスピン(磁気)を注入できること、磁石の相対的な向きを変えることにより超伝導を制御できること、それにより大きな抵抗の変化(トンネル磁気抵抗効果注3))を引き起こすことを理論的に予言しており、その実験的検証が望まれていました。

本研究グループは、アルミニウム(超伝導体)、コバルト鉄(強磁性体)、酸化マグネシウム注4)(絶縁体)からなる高品位の二重障壁トンネル接合デバイスを開発し、理論的に予言されていたスピン注入による大きなトンネル磁気抵抗変化の観測に成功しました。これは、スピンは超伝導体で非常に安定に存在し続けられることを明らかにしたもので、従来の考えを修正するものです。この研究成果は、超高感度センサーや量子コンピュータ注5)の量子計算デバイスへの応用が期待されます。

本研究成果は、英国科学誌「Nature Materials(ネイチャーマテリアルズ)」のオンライン版(6月6日付)に掲載されます。

以上

参考部門・拠点:先端基礎研究センター

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