用語説明

1.根粒菌と根粒
根粒菌は土壌中に生息する細菌で、マメ科の植物の根に感染すると根粒というコブのようなものを生じさせます。根粒菌は根粒の細胞の中で植物から光合成産物を受け取り、代わりに窒素固定を行って植物にアンモニアを提供します。
2.共生的窒素固定
窒素ガス(N)をアンモニア(NH)に変換する作用を窒素固定と言い、窒素固定は工業的窒素固定(約8千万トン/年)と、一部の微生物だけが可能な生物的窒素固定(陸上で約1億4千万トン/年)に分けられます。後者のうち、特に植物などと共生して行うものを共生的窒素固定と言います。
3.植物ポジトロンイメージング技術
ポジトロン放出核種で標識した物質を植物体に投与し、植物体内から発生する消滅ガンマ線を連続的に感度良く計測する装置を用いて、物質の体内分布を連続的に画像化することにより、植物の生理機能を解析する技術です。がんの診断に使われているPET(positron emission tomography、ポジトロン断層診断)と計測の原理は同じですが、植物を対象とした実験のために装置を特化しています。
4.放射性窒素ガス
窒素には通常の「窒素14」の他に、イオンビームなどを利用して製造できる「窒素13」があります(次項を参照)。「窒素13」は放射線を出す性質を持ちますが、他の性質は「窒素14」と同じなので、通常の窒素ガスにごく微量の「窒素13」を混ぜることにより、放射能の「目印」をつけることができます。放射線を計測すれば、植物体に取り込まれた後も窒素化合物の動きを体外から追跡することができます。
5.同位体
同じ元素ではあるが、中性子の数が異なるものを言います。同位体のうち、放射線を出す性質のものを放射性同位体、出さない性質のものを安定同位体と言います。窒素の放射性同位体には窒素13などがあり、安定同位体には窒素14のほか自然界にわずかに存在する窒素15があります。
6.ポジトロン放出核種
放射性同位体のうち、放射線としてポジトロン(陽電子とも言う:電子と同じ質量で正の電荷をもっている素粒子)を放出する種類を指します。ポジトロンは、周囲に存在する電子と衝突すると消滅し、陽電子と電子の質量に相当するエネルギー(511 keV)を持つ2本の消滅ガンマ線となります。消滅ガンマ線は同時に発生し、互いに180°反対方向へ飛ぶ性質があります。

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