平成21年2月18日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
国立大学法人名古屋大学

微生物による白金族元素ナノ粒子触媒の作製に成功
−微生物の不思議な力に迫る−

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 岡ア俊雄、以下「原子力機構」と言う)先端基礎研究センターの鈴木義規博士研究員及び大貫敏彦研究主席らと国立大学法人名古屋大学(総長 平野眞一、以下「名古屋大」と言う)エコトピア科学研究所の榎田洋一教授との共同研究グループは、微生物(鉄還元菌1))を用いて白金族元素2)ナノ粒子(1mmの一万分の一以下の粒子)3)を作製することに成功しました。さらに、この材料を水素と重水素の同位体交換4)の触媒として用いると最大で従前比6倍もの高い有効性を示すことを世界で初めて明らかにしました。

触媒能に優れる白金族元素は、電気化学反応による燃料電池、光化学スモッグや酸性雨などの原因物質(窒素酸化物:NOx)除去、同位体交換などの触媒として幅広く使用されています。

その一方で、白金族元素は希少かつ高価であるため、その有効活用には少量で表面積を大きく利用できるナノ粒子化が不可欠です。しかし従来のナノ粒子作製法では、大規模システムを必要とする経済性の問題やナノ粒子の高純度化などの技術的課題がありました。

そこで、共同研究グループは特定の微生物が超ウラン元素(TRU)などと結合する性質に着目し、鉄還元菌を白金酸溶液とパラジウム酸溶液に添加したところ、鉄還元菌の細胞表面にナノスケールの白金族粒子が生成することを見いだしました(図1)。この微生物を用いる白金族元素ナノ粒子の生成は、従来の工学手法とは全く異なる新規のバイオ手法です。

さらに、珪藻土5)に「微生物細胞−白金族元素ナノ粒子」を保持させて、水素(H2)と 重水素(D2)の同位体交換(H2+D2→2HD)の材料としたところ、白金粒子単体と比較して約6倍の効率で交換できるなど、優れた触媒能を示しました。

今後は、微生物を用いたバイオ作製法からできるナノ粒子が、経済性や高純度性の観点から一般産業に幅広く普及することが期待されます。

以上

参考部門・拠点:先端基礎研究センター

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