用語説明

1) 核磁気共鳴(NMR)法
物質を構成する原子核の多くは小さな磁石でもあり、物質が磁気を帯びるとそれに応じて固有の回転運動をする。核磁気共鳴 (NMR: Nuclear Magnetic Resonance) とは原子核の回転を電気的な信号として検出する方法である。原子核は非常に小さな粒子なので、物質の磁気をミクロに調べることができる。核磁気共鳴法を使うと、試料のなかで磁気が強いところと弱いところがどのように分布しているかを調べることができる。
2) 相転移、量子相転移
氷(固相)、水(液相)、水蒸気(気相)のように異なった相の間の転移を相転移と呼ぶ。たとえば氷から水への相転移(固相->液相)は0℃で起きる。また、磁石が磁石でなくなる転移も相転移である。絶対零度(-273℃)で起きる相転移は量子相転移と呼ばれており、その際には磁気の強さが絶対零度付近で一定にならず、増大し続けるなどの特異な振る舞いが見られる。
3) 揺らぎ
自然界には、色々な揺らぎがある。例えば物の温度は一定に見えても、その温度は絶えず変化している(熱揺らぎ)。相転移付近では転移で変化する相(性質、状態)の揺らぎが顕著になる。例えば磁石の転移では、試料のある小さな部分に注目すると、相転移付近では磁石になったりならなかったりして磁気強度が大きく揺らいでいる状態になる。これを磁気揺らぎと呼ぶ。
4) 磁気分極
金属状態の磁気秩序状態のうちで、微視的磁石の大きさと向きが一定の波長で空間的に変動するものを磁気分極と呼ぶ。
5) 磁気遮蔽
微視的磁石が伝導電子の磁石によって遮蔽され消失してしまう効果を磁気遮蔽と呼ぶ。これは近藤淳によって発見されたので近藤効果とも呼ばれる。
6) 微視的磁石
磁石のなかには原子レベルの大きさの微視的な磁石が大量に(1023個程度)あり、この微視的磁石が整列することで磁石になる。これは磁気モーメントとも呼ばれており、ウラン化合物では、局在するf電子が微視的磁石をつくる。
7) f電子
原子の中では、原子核の周りに色々な軌道を持つ電子がある。その一つであるf軌道を持つ電子がf電子である。ウラン化合物ではウラン原子のf電子が物質の性質を左右する。

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