平成21年1月21日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

絶対零度で起こる未知の相転移(量子相転移)を解明
−超伝導が起こる仕組みの解明を進展−

独立行政法人日本原子力研究開発機構【理事長 岡ア俊雄】先端基礎研究センターアクチノイド化合物磁性・超伝導研究グループの神戸振作研究主幹らは、核磁気共鳴(NMR)法1)を用いた実験により、これまで謎であった絶対零度(−273℃)で起こる未知の相転移(量子相転移)2)を明らかにしました。

水が氷になったり、物質の持つ磁気の強さが変わったりするように、物質の相(状態や性質)が変化することを「相転移」と呼びます。日常生活で使う磁石の磁気強度の変化など、通常の「相転移」では、温度を下げていくとその磁気強度はある温度で一定となります。他方、絶対零度付近で生じる「相転移」は量子相転移と呼ばれ、絶対零度に向けて磁気強度は増大しつづけます。これは磁気揺らぎ3)と呼ばれる量が増大するからです。これまで、この磁気揺らぎに対して磁気分極4)と磁気遮蔽5)の二通りのモデルが示されており、学会等でそのどちらが正しいのか大きな議論になっていました。

本研究では、量子相転移が比較的容易に現れる数少ない化合物であるウラン化合物に着目しました。ウラン化合物の量子相転移付近では、磁気揺らぎが大きくなっています。核磁気共鳴(NMR)法を用いてこの磁気揺らぎを測定し、磁気揺らぎが磁気分極モデルからの理論値と一致することを世界で初めて明らかにしました。量子相転移付近の磁気揺らぎは、超伝導発現と密接に関係しています。従って、磁気分極モデルの検証は、高温超伝導を含む超伝導機構の解明や新高温超伝導体創出に重要な指針を与えると期待されます。

本研究成果は、米国物理学会誌「Physical Review Letters (平成21年1月22日オンライン版発行)」に掲載予定です。

以上

参考部門・拠点:先端基礎研究センター

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