用語集

1)JMTR運営・利用委員会
JMTR運営・利用委員会は、独立行政法人日本原子力研究開発機構が有する材料試験炉(JMTR)について、利用者の意見を的確に反映させる等透明性を確保した運営に資するため、理事長の諮問機関として平成19年度に設置された委員会である。
2)テクネチウム-99m
原子番号 43 の元素。元素記号は Tc。白金に似た外観を持つ銀白色の放射性の金属である。地球上には放射性同位体しか存在しない。
β線を放出せずγ線のみを放つ99mTcの特性を活かし、各種リガンド(特定の受容体に特異的に結合する物質)と標識して骨・腎臓・肺・甲状腺・肝臓・脾臓などの臓器を描出するシンチグラフィ検査(放射性同位元素を利用した画像検査)に用いる。
99mTcを含む物質を放射性医薬品として投与した場合の体内動態などは充分解明されている上、検査目的に応じた多種の注射剤が供給されている。日本では99mTcを含む薬剤を用いた緊急検査も行えるほどの利用ノウハウが蓄積されている。
テクネチウムは人工放射性元素ではあるが、核医学という医療の一分野を支える重要な元素であり、一般市民の生活に大きく寄与するものである。
エネルギー準位が異なるような二つの核種を核異性体であるという。例えば、99Tcと99mTcは互いに核異性体である。エネルギー準位が高いほうは記号を付けて区別するのだが、こちらは準安定状態(メタステーブル)であり、余剰のエネルギーを放出して安定になろうとする。エネルギー準位が高い方の核異性体がγ線を放出して、より安定な方の核異性体に変化することを、核異性体転移という。放出される放射線はγ線であり、原子核の原子番号と質量数はともに変化しない。
3)親核種
例えば、99Moはβ-崩壊することにより99mTcになる。この場合、99Moを親核種、99mTcを娘核種という。
4)モリブデン-99(99Mo)
モリブデン(Mo)は、原子番号 42 の元素。銀白色の硬い金属。99Moはβ-崩壊することにより、99mTcとなるため、99mTcの親核種である。
5)半減期
放射性核種あるいは素粒子が崩壊して別の核種あるいは素粒子に変わるとき、元の核種あるいは素粒子の半分が崩壊する期間を言う。これは核種あるいは素粒子の安定度を示す値でもあり、半減期が短ければ短いほど不安定な核種または素粒子ということになる。
6)中性子放射化法
主な99Moの製造方法としては、核分裂法と中性子放射化法がある。核分裂法は濃縮ウランを原料にして、原子炉内で核分裂を起こさせ、その結果、生成された多くの核分裂生成物(FP)中から99Moを抽出する方法である。一方、中性子放射化法は天然モリブデン中に存在する98Mo(存在比約24%)を原料として、原子炉内で中性子による照射を行い、生成された99Moを利用する方法である。現在、世界の主流は核分裂法である。
7)放射性同位元素(Radioisotope:RI)
同じ元素で中性子の数が違う核種の関係を同位体と呼ぶ。同位体は安定なものと不安定なものがあり、不安定なものは時間とともに放射性崩壊して放射線を発する。これが放射性同位体である。モリブデン(Mo)の場合、天然に存在する同位体として、92Mo、94Mo、95Mo、96Mo、97Mo、98Mo、100Moがあり、このうち、98Moが中性子を1個吸収することにより放射性同位元素である99Moになる。99Moはβ-崩壊することにより99mTcになる。
8)β-崩壊
通常、原子核内の中性子が電子(ベータ粒子)と反電子ニュートリノを放出して陽子になる現象をいう。単にベータ崩壊といった場合これを指す。一般的に、安定同位体よりも中性子の多い核種でβ-崩壊が発生する。β-崩壊した場合、質量数は変化せず、原子番号が一つ増える。原子番号42の99Moがβ-崩壊することにより、原子番号43の99mTcとなる。
また、陽子が陽電子(ベータ粒子)と電子ニュートリノを放出して中性子になる現象をβ+崩壊(陽電子崩壊とも呼ぶ。)という。一般的に、安定同位体よりも中性子の少ない核種でβ+崩壊が発生する。
9)放射性診断薬
放射性同位元素(RI)で標識した化合物を使用した診断は、患者にほとんど負担を与えることなく高度な情報を与える検査として認められ、全国の中核病院の放射線科あるいは核医学科で日常的に実施されている。放射性診断薬に用いられるRIはすべてγ線放出核種で、γ線の放出は、診断に必要な時間だけでよいため、使用される代表的なRIとしては、半減期が一般に数時間から4日以下と短い、99mTcや123Iが使用されている。

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