資料2

超高温ガス炉

原子力により発生した熱をより高効率にエネルギー変換するためには、エネルギー利用効率の観点からはできるだけ高温の熱を使うことが望ましい。超高温ガス炉(VHTR:Very High Temperature Gas-cooled Reactor)は約1000℃の原子炉出口温度で運転できる高温ガス炉で、第4世代原子炉システムa)の概念の一つとして採用されている。超高温ガス炉は、高効率発電と共に熱化学水素製造などの高温プロセス利用b)が可能である。わが国では、高温工学試験研究炉(HTTR)c)の建設・運転をベースとして超高温ガス炉開発につながる研究開発を主導している。海外では、米国やフランスも超高温ガス炉技術の開発を再開。

a) 第4世代原子炉(GenerationIV,GEN−IV)
日本、米国、仏国、英国、カナダ、韓国、南アフリカ、スイス、アルゼンチン、ブラジルの10カ国が2030年頃の実用化を目指して提唱した次世代の原子炉の一般的な概念である。第4世代原子炉は、燃料の効率的利用、核廃棄物の最小化、核拡散抵抗性の確保等エネルギー源としての持続可能性、炉心損傷頻度の飛躍的低減や敷地外の緊急時対応の必要性排除など安全性/信頼性の向上、及び他のエネルギー源とも競合できる高い経済性の3項目の目標を満足する必要がある。
具体的には、超臨界圧軽水冷却炉、ナトリウム冷却高速炉、鉛合金冷却高速炉、超高温ガス炉、ガス冷却高速炉、及び溶融塩炉の6概念が選定されている。
b) 高温ガス炉の利用法
高温熱供給、熱化学法ISプロセスによる高効率水素製造、ガスタービンによる高効率発電、タービンの廃熱を利用した地域暖房、海水淡水化等の需要に応じて、高温から低温まで熱を無駄なく利用できる多様なシステムの構築が可能。これにより、システム全体の熱利用率約80%を実現可能であり、環境に捨てる熱が少ない。(図2)
c) 高温工学試験研究炉(HTTR:High Temperature Engineering Test Reactor)
HTTRは、原子力利用分野の拡大と熱利用率の向上を目指して、原子力機構が研究開発を進めてきたわが国初の研究用高温ガス炉である。熱出力は30MWであり、原子炉出口冷却材温度950℃の高温熱を原子炉外に取り出すことができる世界で初めての原子炉である。1990年度に建設着工し、1998年11月に初臨界、2001年12月に定格熱出力30MW及び原子炉出口冷却材温度850℃を達成した。2002年3月に使用前検査合格証を取得した。(図3)

図2 高温ガス炉の多様な熱利用

図3 高温工学試験研究炉


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