平成20年10月7日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
日本カーリット株式会社
株式会社アンザイ
株式会社群馬分析センター
財団法人群馬県産業支援機構

草津温泉から希少金属の回収に成功
−放射線グラフト重合で開発した金属捕集布でスカンジウム回収を実証−

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 岡ア俊雄 以下「原子力機構」)、日本カーリット株式会社(R&Dセンター所長 山本秀雄)、株式会社アンザイ(代表取締役社長 安斉康宏)、株式会社群馬分析センター(代表取締役 浅川千佳夫)、財団法人群馬県産業支援機構(理事長 下山 博)は、新産業・新事業の創出に向けた共同事業で開発した「金属捕集布1」を用いて草津温泉2の温泉水に含まれる高価な希少金属3であるスカンジウム4を、溶け込んでいる様々な元素の中から選択的かつ効率的に回収することに成功しました。

強い酸性の草津温泉の温泉水1トン(1m3)中には、産業上注目され、今後需要の伸びが期待される希少金属であるスカンジウムが約17mgと低濃度ながら溶け込んでいます。この資源を有効利用するためには、スカンジウムのみを温泉水に溶け込んでいるバナジウム等の様々な元素の中から分離・捕集でき、高温かつ強酸の温泉水に耐える高性能の「金属捕集布」が必要でした。

本研究開発事業では、酸やアルカリに強いポリエチレン不織布5基材に、原子力機構が開発した「放射線グラフト重合技術6」でスカンジウムと親和性の高いリン酸基を導入した「金属捕集布」を製作し、草津温泉の温泉水が流れ込む湯川に、流量の千分の1の温泉水が処理できる装置を草津町の協力を得て設置し、「金属捕集布」の性能評価を行いました。

その結果、捕集布は、温泉水から連続的に95%以上の回収率でスカンジウムを捕集可能なことを実証しました。この装置を1,000倍にスケールアップすることにより、約200kg/年のスカンジウムが捕集可能です。この技術は金属捕集布の化学構造を変えることにより、ウランなどの回収にも応用可能であり、日本では採れない鉱物資源の回収技術として大きく期待されております。

本件は、平成18、19年度の経済産業省、地域新生コンソーシアム研究開発事業7「温泉水中のスカンジウム捕集に関する研究」の成果(経済産業省関東経済産業局HP:http://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/gizyutsu/20080428consortiumseikahoukoku19fy.html)であり、10月9〜10日で開催される第3回高崎量子応用研究シンポジウムでも発表予定です。

以上

参考部門・拠点:量子ビーム応用研究部門

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