【補足説明】
 
第4世代原子力システム「GACIDプロジェクト」について
 
1.第4世代原子力システムについて
 安全で、長期的かつ持続的なエネルギー安定供給と地球環境問題の解決に向けて、世界の原子力先進国が中心となって「第4世代原子力システム国際フォーラム(GIF)」が2001年7月に正式発足した。すでに実用化されている軽水炉(第3世代原子力システム)に続く次世代の原子炉概念の検討を国際的な枠組みで進めるため、現在、米国、日本、韓国、南アフリカ、フランス、イギリス、カナダ、ブラジル、アルゼンチン、スイス、中国、ロシア、及び欧州連合の計12カ国及び1機関が上記フォーラムに参加している。GIFでは、2030年頃までに実用化を目指す候補概念として、超臨界圧水冷却炉、ナトリウム冷却高速炉、鉛冷却高速炉、超高温ガス炉、ガス冷却高速炉、及び溶融塩炉の6システムが選定された。現在、これらのシステム毎にシステム取決めを順次締結し、更に各システム取決めの下で個別の共同研究プロジェクトについても取決めを締結すべく調整が進められている。
 我が国の高速増殖炉(FBR)サイクルの実用化研究開発の主概念であり、GIFにおいて日本が主導的役割を果たしているナトリウム冷却高速炉に関するシステム取決めは平成18年2月15日に締結されており、この下では、先進燃料、GACID、設計統合、安全性及び運転、機器及びBOPの5つのプロジェクトが検討されている(参加国はプロジェクトごとに異なるが、GACIDは日本、仏国及び米国の3国)。このたびのGACIDプロジェクトは先進燃料プロジェクトに続く2番目の取決め締結となる。

2.GACIDプロジェクトの意義と概要
 我が国のFBRサイクル実用化研究開発においては、ウラン(U)及びプルトニウム(Pu)に加えて、マイナーアクチニド(MA)であるネプツニウム(Np)、アメリシウム(Am)及びキュリウム(Cm)を回収してFBRで燃焼させるアクチニドサイクルを基本としている。このアクチニドサイクルにより、放射性廃棄物による環境への負荷を大きく軽減できるとともに、核拡散に対する抵抗性も高められることが期待される。
 「包括的アクチニドサイクル国際実証(GACID: Global Actinide Cycle International Demonstration)」プロジェクトは、このアクチニドサイクルの実用化に向けた研究開発の重要なステップとして、MA含有燃料の照射試験を高速実験炉「常陽」及び高速増殖原型炉「もんじゅ」を用いて行うことにより、高速炉におけるMA含有燃料の燃焼実証を行うとともに、実証データを取得することを目的とする。また、「常陽」や「もんじゅ」の照射試験の許認可において必要となるMA含有燃料の物性測定や照射挙動の解析を3国共同で行う計画である。
 本プロジェクトの最終的な目標は「もんじゅ」を用いた集合体規模でのMA含有燃料の燃焼実証であるが、一歩ずつ安全を確認しながら進めるために、以下の3段階で行う(添付図1参照)。
 (1) ステップ−1(Np/Am含有燃料ピン照射)
MAのうちNp及びAmを含有するピン規模照射を行う。最初は、「常陽」の照射用キャプセルを用いた先行照射を行い、その結果と経験を踏まえて「もんじゅ」でのピン規模照射を行う。
 (2) ステップ−2(Np/Am/Cm含有燃料ピン照射)
Np及びAmに加えて放射線強度や発熱の観点から取扱いが難しいCmを含む本格的MA組成でのピン規模照射を実施する。この場合も、「常陽」における先行照射を行い、その結果と経験を踏まえて「もんじゅ」でのピン規模照射を行う。
 (3) ステップ−3(Np/Am/Cm含有燃料集合体照射)
以上の2ステップを経て、最終目標である「もんじゅ」での集合体規模での本格的MA含有燃料の燃焼実証を行う。
なお、「もんじゅ」におけるMA含有燃料の燃焼実証の概念例を添付図2に示す。

3.当面の研究内容及び3国間の協力について
 GACIDプロジェクトでは「もんじゅ」を用いてMA含有燃料の集合体規模での燃焼実証を目標としているが、一歩ずつ安全を確認しながら進めるため、段階的に進めることから、20年間程度の長期にわたる研究開発が必要となると見込んでいる。
 このような長期にわたる研究プロジェクトは、研究の進展や課題を定期的に確認しながら柔軟に進めることが重要となるため、今回のプロジェクト取決めの期間は5年間とし、当面は、MA含有燃料の物性測定、「常陽」を利用したピン照射試験と照射挙動の研究、「もんじゅ」を用いた照射試験実施のための準備・手続き、ステップ1試験用燃料製造等を行うこととしている。
 三国の分担としては、ピン規模照射(ステップ-1及びステップ-2)については、米国がMA原材料を提供し、仏国がこれを照射用試験燃料ピンに加工し、日本は照射及び照射後試験を行うことを基本としており、物性測定や照射挙動の評価及び長期的なステップ-3試験計画検討は三国共同で行うこととしている。
 アクチニドサイクルの実用化は三国共通の目標であり、既設の研究施設や技術経験を基に相互にメリットのある相補的な国際協力はきわめて有意義である。また、MA含有燃料の工学規模での燃焼実証が早期に実現できれば、我が国におけるMA含有燃料技術の実用化が加速するものと期待される。

添付資料:
 ・添付図1:GACIDプロジェクトの全体工程
 ・添付図2:「もんじゅ」MA含有燃料の燃焼実証 概念例(検討中)

もどる