用語解説

 
1) 包括的核実験禁止条約(CTBT; Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty)
CTBTは、核兵器廃絶の重要なステップとして、全ての締約国に対してあらゆる場所における核兵器の実験的爆発および他の核爆発を禁止するとともに、これらの実験的爆発および他の核爆発が行われた場合には、IMSによる監視活動と現地査察制度により、核爆発の事実を確認する仕組みを規定することにより、核兵器の拡散防止を目指す国際条約。

 
2) 東海公認実験施設 (第1図)
公認実験施設は放射性核種監視観測所の技術的サポートを役割とし、観測所で得られる試料の詳細分析、観測所の品質管理、標準試料の作成、分析技術の開発等を行う。世界16カ所の研究所が条約議定書に記載されており、原子力機構の東海公認実験施設はその1つである。東海公認実験施設では、高分解能γ線測定装置による高品質な試料分析を行うため、ISO/IEC17025に準拠した品質保証システムを確立している。

 
3) 沖縄放射性核種監視観測所 (第2図)
沖縄放射性核種監視観測所は、CTBTに基づく国際的核実験監視網の1つである。観測所が有する放射能観測装置は、大気中の微粒子捕集(約1000m3/h)の後、γ線測定(検出感度:140Baで約10μBq/ m3)をしてIDCへのデータ送信までの操作を全自動で行うシステムであり、24時間連続運転される。IDCで受信する各観測所からのデータ取得率は95%以上が求められるため、トラブルなどで観測所に許容される停止期間は年間で15日以下、連続で7日以内と規定されている。そのため、観測所では、設置された大気集塵機、γ線計測機器、衛星通信機器などの観測所機器を管理・保守し、観測所機能を健全に維持することが重要な役割となっている。

 
4) 国際監視制度(IMS;International Monitoring System)
CTBT機関準備委員会で構築中の、条約に定められた地震波監視170カ所、放射性核種監視80カ所、水中音響監視11カ所、微気圧振動監視60カ所、及び公認実験施設16カ所からなる計337カ所の観測所とウィーンにある国際データセンター(IDC)、各国の国内データセンター(NDC) 7)をネットワークで結ぶ国際的な監視制度。国際協力のもとでIMSから得られたデータは、地球規模で定常的に収集され品質管理の確立したものであり、核実験抑止力としての国際的監視体制に寄与するのみならず、早期津波警報網や原子力災害監視等への利用の他、種々の科学研究目的にも応用される。

 
5) CTBT機関準備委員会(CTBTO/PrepCom;Preparatory Commission for the Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty Organization)
条約発効までに条約に規定された国際検証体制を整備するため、1996年11月に設立された。現在の組織は、CTBT署名国をメンバーとして、最高意志決定機関であるCTBT機関準備委員会の下に執行機関としての暫定技術事務局(PTS:2006年12月31日現在、職員数約260人、日本人6人)を置き、検証体制の整備が進められている。

 
6) 希ガス観測装置
CTBT国際監視ネットワークでは、核分裂生成物である4つの放射性キセノン(131mXe、133Xe、133mXe、135Xe)を測定する。高崎放射性核種監視観測所に設置された装置は、12時間を1サイクルとして約18m3の大気を捕集しXeガスを分離・精製した後、β-γ同時計数法により放射性キセノンを測定するもので、吸着剤によるメモリ効果を除去するため2台の検出器で試料とバックグラウンドを交互に測定している。全プロセスはコンピュータにより自動制御され24時間連続運転され、これまでの試験による最低検出可能濃度は133Xeに対して約0.25mBq/ m3である。

 
7) 国内データセンター(NDC;National Data Center)
CTBT国際監視ネットワークから得られるデータをIDCから受信して解析評価し、各締約国が責任を有する条約遵守に係わる判断に関し、技術的評価を行う機関。その規模や役割に関しては、条約上何ら義務規定はなく各締約国の裁量に任されており、各国の判断に応じて整備することとなっている。原子力機構では、放射性核種データに関して、γ線解析技術や大気拡散バックトラッキング等、NDC整備に必要な研究技術開発も行っている。

 

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