平成19年2月6日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

 
冷却材流量を3分の1に減少しても自然に原子炉が安定な状態に落ち着く高温ガス炉の安全性を確認

 
●ポイント
 ブロック型炉心を持つ高温ガス炉として世界で初めて、全出力状態から冷却材流量を3分の1まで急激に低下させた試験を実施し、炉内で生じる自然な物理法則により原子炉が安定な状態に落ち着くという高温ガス炉の優れた特性を確認した。


●概要
 独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 岡撫r雄、以下「原子力機構」という)は、文部科学省の革新的原子力システム技術開発公募事業として、高温工学試験研究炉(HTTR)を用いて高温ガス炉の優れた安全性を実証する冷却材流量を低下させる試験を段階的に行ってきました。
 高温ガス炉は、炉心の熱容量(熱を貯め込む能力)が大きく、かつ、炉心の温度が上昇すると核分裂反応が自動的に減少するため、万一冷却材流量が異常に低下するような事象が生じても、緩やかに安定な状態に落ち着くという優れた安全性を有しています。このような冷却材流量が異常に低下する事象において、原子炉を緊急停止させる必要がなく、炉内で生じる自然な物理法則により安全に停止する原子炉で、かつ、炉心の重大な損傷に至る事象(シビアアクシデント)が発生することが無い原子炉の設計を可能とするためには、冷却材流量低下により生ずる炉心の温度の上昇に伴う核分裂反応の特性等を精度よく把握することが求められていました。
 原子力機構では、上記の特性の確認及び解析技術の高度化を目的として、原子炉出力と1次ヘリウム循環機の停止台数を変えて、30%(9MW)から出力を段階的に上昇させて冷却材流量を低下させる試験を行ってきましたが、この度、その最終段階として全出力(30MW)での試験を成功裏に完了しました。
 原子力機構では、今後とも高温ガス炉開発における世界のトップランナーとして、より厳しい条件での試験である冷却材の全流量喪失試験等を行うとともに、解析技術として炉心の温度分布を詳細に考慮すること等による解析精度の一層の向上に取り組んでいきます。

 本成果は、原子力政策大綱で示された“高温の熱源や経済性に優れた発電手段となり得る高温ガス炉とこれによる水素製造技術の研究開発等”、及び第4世代原子力システムの超高温ガス炉の設計に役立てられるものとして、世界的にも注目されるものです。



 【補足説明資料
 【用語解説
以 上

参考部門・拠点:大洗研究開発センター


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