用語解説
 

*1 ブランケット
 重水素とトリチウムの反応を用いた核融合炉では、重水素とトリチウムが燃料である。しかし、トリチウムは天然に存在しないため、人工的に作り出す必要がある。そこで、核融合反応が発生しているプラズマを包むような構造体にリチウム化合物を入れて設置し、核融合反応によって発生する中性子を利用して、リチウム原子を核反応によりトリチウムに転換することが考えられている。そのためのリチウム化合物およびそれを収納する構造体をトリチウム増殖ブランケットと呼ぶ。さらに、中性子の運動エネルギーを熱変換し、その熱を発電に利用するブランケットを発電ブランケットという。


*2 低放射化フェライト鋼
 クロムを7-12%程度含む高温用鋼で、高エネルギー中性子照射への耐久性や耐食性が比較的高い。さらに、中性子照射による放射化を低減するように成分が工夫されており、使用後に適当な期間保存すれば浅地埋設が見込める。近い組成範囲を持つ鋼(非低放射化)は、高速炉炉心や火力プラントでの使用実績があり、製造工程やデータベースも既に確立している。このように工業材料としての生産性及び利用基盤の充実度は高い。代表的なものに、日本原子力研究所と日本鋼管(株)が共同開発したクロムを8%、タングステンを2%含むF82H鋼等があり、核融合発電の実証用プラント以降のための有力な候補材料として研究開発が進められている。


*3 第一壁
 プラズマに直接面する壁の総称。機能的に分類すると、リミタ、ダイバータ板、ブランケット壁などがある。狭義には、壁面が磁気面に平行な位置関係にあるブランケット壁を第一壁と呼ぶ。一般に第一壁はプラズマと直接作用し、大きな熱・粒子負荷を受ける。このため、第一壁から不純物が発生し、これがプラズマに与える影響も無視できない。第一壁の設計は、除熱、不純物放出、粒子リサイクリング率、表面損耗、照射損傷、熱疲労、電磁力などを総合的に評価して行われる。


*4 燃料
 DT核融合反応を起こすための燃料。すなわち重水素(D)と三重水素(T)。重水素は水などから比較的容易に取り出すことができ、三重水素(トリチウム)は核融合反応によって発生する中性子と、リチウムの反応などを利用して作ることができる。


*5 国際熱核融合実験炉(ITER)
 International Thermonuclear Experimental Reactor。1988年に日、米、ロ、EUの4極が共同設計を開始し、現在では日、米、ロ、EU、中国、韓国、印度の7極が協力して建設を開始しようとしている核融合実験炉。DT自己点火プラズマによる長時間核燃焼を設計目標とし、核融合炉の科学的及び工学的可能性の実証を目指している。建設サイトはフランスのカダラッシュに決定している。


*6 ITER工学設計活動(ITER工学R&D)
 ITER設計活動においてITERの工学的技術を確証するための研究開発。七大工学R&D(ITER中心ソレノイドモデルコイル開発、ITERトロイダル磁場コイル開発、大型真空容器開発、ブランケット開発、ダイバータ開発、ブランケット遠隔保守技術開発、ダイバータ遠隔保守技術開発)を2001年に完遂した。


*7 拡散接合
 金属材料を密着させ、素材の融点以下の温度条件で、接合面間に生じる原子の拡散を利用して接合する方法。


*8 (核融合)原型炉
 核融合炉及びそのプラントの実用化についての技術的性能の見通しならびに経済性に関する目安を得ること等を目的として作られる炉のことをいう。実験炉でプラズマおよびその周辺基盤の技術的見通しを得た後、原型炉で発電技術を実証し、実用炉へ進むという段階を経て開発が進められていくことになる。

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