平成19年1月23日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
 
核融合炉用発電ブランケット第一壁の製作技術開発に成功
− ITER試験用ブランケットの開発競争で世界をリード −

 
 独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長:岡撫r雄 以下「原子力機構」)は、核融合炉用発電ブランケット(資料1)の開発を進めてきたが、このたび、ブランケット*1の構造材である低放射化フェライト鋼*2と表面の保護材であるベリリウムから構成されるブランケット第一壁*3を製作する技術の開発に、世界で初めて成功した。

 核融合炉用発電ブランケットは、炉心プラズマで発生する中性子を用いて、熱の取り出しや燃料*4となるトリチウムの増殖を行う機器であり、核融合炉による発電のために最も重要な機器の一つである。国際熱核融合実験炉(ITER)*5では、このブランケットの試験体を炉心に取りつけて性能試験を行う予定であり(資料2)、我が国を含めITER参加各極は、ブランケットの製作技術に関して開発競争を展開している。

 核融合炉用発電ブランケットのプラズマに直接面する壁(「第一壁」と呼ばれる)は、プラズマから高い熱や中性子を受けるため、熱と中性子に強い構造材である低放射化フェライト鋼(資料5)の薄板と冷却管で構成され、プラズマ粒子からその表面を保護するためにベリリウムの保護材が接合される構造が想定されている(資料3)。しかし、第一壁は、多数の構造体を組み合わせた複雑な構造であり、異なった材料の接合が必要であることなどから、製作に際しては、従来の接合手法が適用できず、ITER参加各極においても、これまで製作技術の開発には成功していなかった。

 原子力機構では、ITER工学設計活動*6で得た成果に基づき、拡散接合*7の一種である熱間等方圧加圧接合(HIP)法(資料4)の適用を世界に先駆けて試み、川崎重工業株式会社の協力を得て、低放射化フェライト鋼に適した接合条件を見出すことにより、第一壁パネルの製作に初めて成功した。さらに、日本ガイシ株式会社の協力を得て、従来接合が困難とされていた低放射化フェライト鋼とベリリウムの接合に関しても、接合条件を最適化することにより、HIP法によって母材並みの強度を有する接合を得た(資料6)。

 これら一連の成果により、世界に先立って、核融合炉用発電ブランケットの鍵となる第一壁の製作技術に見通しが得られたこととなり、ITERでのブランケット試験に向けた国際的な技術開発競争において、我が国の技術的な優位性や主導的な立場を強く示すものである(資料7)。なお、低放射化フェライト鋼に関する研究開発は、青森県六ヶ所村で実施する幅広いアプローチ活動においても、原型炉*8の早期実現に向けた開発研究の一環として進められる計画である。

 今回の成果は、平成19年3月27日から名古屋大学で開催される日本原子力学会「2007年春の年会」、ならびに平成19年9月30日からドイツのハイデルベルグで開催される第8回核融合炉工学技術国際シンポジウム(ISFNT-8)で発表する予定である。


  核融合炉用発電ブランケット第一壁の製作技術開発に成功
  資料1:ブランケットとは
  資料2:ITERを利用したブランケット開発
  資料3:ブランケットの構造
  資料4:熱間等方圧加圧接合法(HIP法)とは
  資料5:原子力機構が開発した低放射化フェライト鋼:F82H
  資料6:今回の成果 第一壁パネルの製作技術開発
  資料7:ITERにとりつけるブランケットの開発研究 −これからの計画−
  資料8:今回の成果の波及効果
  用語解説

 
以 上

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