平成18年12月15日
独立行政法人 日本原子力研究開発機構
 
岐阜県東濃地域における過去数十万年間の気候変動を解明
−花粉が語る太古の自然環境−

 
 日本原子力研究開発機構【理事長 殿塚猷一】(以下「原子力機構」という)地層処分研究開発部門東濃地科学研究ユニット自然事象研究グループ(中司 昇グループリーダー)は、東北学院大学宮城豊彦教授らの研究グループとともに、約30万年前から現在に至る岐阜県東濃地域の気候変動の様子を明らかにした。
 原子力機構では、地層処分技術に関する研究開発の一環で、内陸地域における過去の気候変動の高精度な復元手法の研究開発に取り組んでいる。その事例研究として、丘陵地の山頂付近に位置して大きな川の影響を受けない岐阜県瑞浪市大湫(おおくて)地区の小盆地から採取した地層試料中の花粉(樹木)の種類と構成比を調査した結果、過去30万年にわたり花粉がほぼ漏れなく堆積物中に閉じ込められていた場所の存在が初めて判明した。
 今回の調査結果に基づき東濃地域における大昔の気候状況を推定すると、今から約30万年前はブナやハンノキが自生する温暖な気候であったが、その後急激に寒冷化して平均気温が約5度低下した。その後も3回の氷河期を挟んだ数万年間隔での温暖化と寒冷化の反復や火山噴火の痕跡が認められたが、噴火と寒冷化との因果関係は未解明である。
 また、寒冷期の東濃地域には、ツガ、モミ、トウヒ及びマツ等が自生し亜寒帯の風景が広がっていたものと考えられる。
 復元された過去30万年間の大湫盆地の気温変化は、深海底の堆積物の分析より解明されている世界的な気温変化(約10万年周期での温暖期と寒冷期の繰り返し)と概ね合致しており、日本列島の中心部に位置する東濃地域においてもこの連動が確認された。
 日本列島の陸域の気候変動においては、過去数万年間単位での復元研究は多数行われているものの、過去数十万年間を連続して解明した研究例は皆無に近く、本研究成果は今後の古気候研究に新規知見を提供する画期的なものである。
 本件は、学術誌「第四紀研究45巻4号(平成18年8月刊行)」に一部先行掲載されたが、全般については「季刊地理学58巻3号(平成18年12月刊行)」に掲載予定である。


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以 上

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