平成18年9月19日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
 
高速増殖炉用酸化物分散強化型(ODS)フェライト鋼燃料被覆管の開発について
 
 実用化段階の高速増殖炉では、軽水炉及びその他の基幹電源と比肩する経済性を達成するため、燃料の高燃焼度化が重要な開発課題になっています。しかし、現在の高速増殖炉用燃料被覆管として広く使われているオーステナイト鋼は、高温強度に優れるものの中性子照射による性能劣化の制約があり、目標とする燃焼度(取出平均150GWd/t)を達成することは不可能です。このため、原子力機構では、中性子照射による損傷が格段に小さいフェライト鋼を活用し、酸化物であるイットリア(Y2O3)をナノスケールで微細分散して高温強度の飛躍的な改善を図った酸化物分散強化型(Oxide Dispersion Strengthened、以下「ODS」と言う)フェライト鋼燃料被覆管の研究開発を進めてきました。
 高温強度の改善のため、酸化物粒子の固溶・析出を利用したナノスケール制御技術を独自に開発し、フェライト鋼としては世界最高の高温強度を有する燃料被覆管を実現しました。また、一般に高温強度の改善は薄肉で細径長尺の燃料被覆管への加工を難しくする傾向がありますが、圧延加工率と中間熱処理の組み合わせの最適化に基づく組織制御技術を開発し、世界で初めて冷間圧延による被覆管製造を可能にしました。
 現在は、高温・高中性子照射環境下におけるODSフェライト鋼燃料被覆管の性能を確認するため、ロシアの高速実験炉BOR-60で燃料ピン照射試験を実施し、燃焼度50GWd/tまでの照射実績を得ています。今後は、「常陽」での燃料ピン照射試験も実施して高燃焼度燃料としての性能を実証し、将来的には「もんじゅ」運転燃料用の被覆管として適用していく計画です。
以 上
【参考資料】
 1.ODSフェライト鋼被覆管の開発目標
 2.ODSフェライト鋼被覆管の製造技術開発
 3.ナノスケール制御技術
 4.高温強度(クリープ強度)
 5.組織制御技術
 6.日本金属学会第29回技術開発賞受賞

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