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第10回 原子力機構報告会
「原子力機構の新たな出発 ~研究開発成果の最大化と課題解決に向けて~」

パネルディスカッション -東京電力(株)福島第一原子力発電所の廃炉に向けた研究開発- (テキスト版)

パネルディスカッション
-東京電力(株)福島第一原子力発電所の廃炉に向けた研究開発-

○司会 後半は、パネルディスカッション形式にて、「東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けた研究開発」をテーマに御議論いただきたいと思います。

それでは、登壇者の紹介をさせていただきます。

モデレーターは、原子力損害賠償・廃炉等支援機構理事長の山名元様。

パネリストは、株式会社東芝電力システム社理事の飯倉隆彦様。

東京工業大学原子炉工学研究所教授の小原徹様。

東京電力株式会社福島第一廃炉推進カンパニープロジェクト計画部燃料対策グループマネージャーの村野兼司様。

原子力機構福島研究開発部門福島研究基盤創生センター所長、河村弘。

同じく福島研究開発部門廃炉国際共同研究センター長、小川徹。

それでは、山名様、よろしくお願いいたします。

○山名理事長 皆さん、こんにちは。これからパネル討論を始めたいと思います。

午前から午後にかけてJAEAの成果が報告されたわけですが、福島第一原子力発電所の廃炉に対する取り組みにおけるJAEAの役割は非常に重いものがあると思っております。その観点から、このパネル討論では、JAEAの廃炉国際共同研究センターと福島研究基盤創生センターが取り組んでいく活動についてディスカッションしていきたいと思います。

まず最初に、JAEAのお二人の代表から、それぞれの活動について簡単な紹介をいただきたいと思います。

それでは、小川センター長からお願いいたします。

○小川センター長 ありがとうございます。廃炉国際共同研究センターの小川です。

それでは、スクリーンの図を用いながら御説明したいと思います。

〔パワーポイント映写。以下、場面がかわるごとにP)と表示〕

P) まず、この廃炉国際共同研究センターですが、今年の4月20日に発足式を行いました。この組織が一体何をするのか、そもそも皆さん、このセンターができたということも場合によっては御存じないかもしれませんので、その概要をお話ししたいと思います。

言うまでもなく、福島第一原子力発電所の廃炉の事業主体そのものは東京電力でありますが、その全体を統括する組織、戦略的な中心として、NDF、きょうは山名理事長もお見えですけれども、そのNDFになります。また、そこに持ち込むような実用的な段階に近い技術開発は、IRIDという組織、これはスクリーンの左側に書いてありますけれども、こういう組織が存在します。

それに対して日本原子力研究開発機構はどこを担っているのかということですけれども、福島第一原子力発電所の廃炉という非常に難しい課題を解決していくためにまだまだ新しい物の見方とか新しい技術を必要とするだろうということで、そこの研究開発。しかし、日本原子力研究開発機構が我が国唯一の総合的な原子力研究開発法人だとはいっても、そこで持っている技術のワンセットでは必ずしも解決がつかない、非常に多様な課題を抱えています。

そういうことで、国内外のいろいろな知識、技術を集める仕組みが必要だということで、この廃炉国際共同研究センターができたわけです。私の後で河村所長からお話がありますけれども、この廃炉国際共同センターは、同時に、楢葉にできました遠隔技術の施設、それから大熊にこれからできます分析センター、そういうところを結んで、基礎基盤という立場から廃炉の問題に貢献していこうではないかということです。

ここに英語名も書いてあります。Collaborative Laboratories for Advanced Decommissioning Scienceというわけですが、略してCLADS(クラッズ)と呼んでおります。皆さん、このCLADSという名前を覚えていただけるとよいかと思います。

P) 国内の共同研究ということもとても大事ですし、国際的ないろいろな知見を生かすということも大事です。ここでは、まず国外・国内でどれぐらいの広がりを持って現在取り組んでいるのかということで、一々このリストを説明はしませんが、既に大変広範な協力関係を築きながら活動を始めているところです。今後この活動の輪をさらに広げていき、そういうところで有効な新しい知見、技術を育て、福島第一の廃炉の現場に届けていきたいと考えております。

P) 今の福島第一原子力発電所の状況ですけれども、この図では、1号機から3号機について、まず使用済燃料プールの中の燃料を取り出すということで、このリスクの低減を図るということがこれからなされようとしているわけですが、さらにその先には、壊れた原子炉の中に落ちているデブリを取り出すという作業にこれから挑まなければなりません。しかし、図にもあるとおり非常に高い線量で、そのような環境の中でこれを実施していくという非常に難しいことに取り組む課題になるわけです。また、その対象とする物量も非常に大きなものである。そういう現実があります。

P) それから、廃棄物です。これは決してデブリにとどまる話ではなく、普通の原子炉の廃炉ですと廃棄物の総量は50万tとか60万tで、そのうち放射性廃棄物として扱わないといけないものはせいぜい2~3%となっているのですけれども、福島第一の廃炉の場合には非常に多種多様な廃棄物が出てくる。この廃棄物の問題についても、どのように見通しを立てるのかということをこれから考え、技術開発をしていかないといけないわけです。

P) NDFで、国の戦略プランとしてこういう5つの項目を立てました。安全とか確実、迅速とか現場感覚といったものをしっかりとやっていきましょうということですけれども、この中でも安全性、確実性ということが非常に高い課題として出てくると思います。そういうところで基礎基盤としてやるべきことは非常に多いだろうと思います。

P) この廃炉の進展に応じてどのような課題があって、何に取り組み、いつまでにどのような成果を届けるのか、こういうことをしっかり、これは事業の実施側、プロジェクト側ともしっかりコミュニケーションをとりながら、タイムリーにいろいろなものを届けていかないといけない。そういうことで、研究開発のマップづくりがとても大事になってきます。時間の関係で細かくは説明しませんけれども、多様な課題があるということで、事故進展から始まって、最後は廃棄物の処理処分というところまで、そこを基礎基盤としてどのような手順で取り組んでいくのか、そのあたりのことにこれから取り組んでいかなければなりません。

P) 今現実に取り組んでいるのは、燃料のデブリに関する研究開発。それから廃棄物の処理処分にかかわる研究開発。それから遠隔技術関係、特に遠隔モニタリング。これは、原子炉の中の状況、格納容器の中の状況を正確に把握して、しっかりした廃炉戦略を立てるという意味でとても大事な技術になってまいります。幾つか事例を紙芝居的にお見せしたいと思います。

P) 1つは、デブリの特性を遠隔ではかろうということで、レーザー技術を積極的に利用できないか。これを国内共同研究として取り組もうとしています。

P) それから、幾つか外国との共同研究があるのですけれども、これは水中のロボットとソナー技術、遠隔での放射線技術、こういったものを組み合わせて炉内の状況を把握しようという日英共同研究も始まっております。

P) それから、汚染水を処理した二次廃棄物の安定化にかかわる研究、これも日英共同研究としてまさに着手したところです。

P) こういういろいろな研究を活発に進めて、今、世の中ではレジリエンスという言葉がしきりに言われていますけれども、廃炉作業のレジリエンス、いろいろな事態が今後出てくる、それに対して柔軟・強靱に取り組む、そういうところで基礎基盤研究のコミュニティが大きく貢献できるだろうと思っています。基礎基盤研究ですから、まさにいろいろな方向を向いた人たちがいる、そのことがリスク管理に資する、また技術開発の全体に対してレジリエンス、粘っこさ、強靱さを与える。そういうことを図っていきたいと思っています。

P) 今、私たちは、国内のいろいろな大学、特に文部科学省の廃炉の人材育成のプログラムがありますけれども、ここで採択されました東北大学、東京大学、東京工業大学、それから今年度新たに追加されました4つの拠点、こういったところと一緒になりまして廃炉の基盤研究のプラットフォームをつくっていきたい。そして、そこで非常に多様なアプローチをしていって、基礎基盤研究とプロジェクトとの間のダイナミックな交流をつくっていきたいと考えております。

時間の関係で細かい説明をしていく時間はないのですけれども、できましたら、この後の質疑の中でもう少しこのプラットフォームについて御説明させていただければと思います。

時間が限られていますので、私からのお話はここまでとさせていただきます。

○山名理事長 小川センター長、ありがとうございます。

それでは、引き続きまして河村さんから、研究拠点の整備と関連する研究開発についてお願いいたします。

○河村所長 福島研究基盤創生センターの河村です。

では、説明します。

〔パワーポイント映写。以下、場面がかわるごとにP)と表示〕

P) 私は、今、小川さんが説明した研究開発を支援するための研究拠点の整備と、その施設の高度化を図っていかないと施設が陳腐化していきますので、そのために行っている研究開発を一例を挙げて説明します。

P) 新たな研究基盤の創生ということで、2つ、例えば建屋内における調査・作業、あるいは燃料デブリの取り出しといいますと、人間が入っていけないところでの作業になってきますので、遠隔操作機器とか装置、あるいはそれらを用いたシステムの開発・実証が必要になってきます。

一例として、国家プロジェクトで進められている2号機の格納容器下部の水が漏れているところの止水技術開発。これは後から説明しますが、楢葉を用いた研究開発として行われるための準備が始まっております。

もう一つは、放射性廃棄物の処理処分にかかわる問題で、1Fサイト内には放射能で汚染された放射性物質、コンクリートとか石とか木とか、そういうものがいろいろあるのですけれども、それらを放射性廃棄物にするために、おのおのの放射能で汚染されたものに対して分析を行って、どんなもので汚染されているかを明確にしていかなければだめだということと、効率的・効果的に行っていく手法の開発等を行う必要があります。そのために、大熊町につくろうとしている拠点がございます。

これら2つの拠点をつくることによって研究を支援するとともに、それに関わるいろいろな機能の高度化のための研究開発を行っています。

P) 研究拠点の概要ということで、ここに書いていますが、我々は20km圏内に2つの拠点を整備します。

1つは楢葉につくっている楢葉遠隔基盤開発センターで、研究管理棟、試験棟、その付属建屋から構成されています。これは後から説明したいと思いますので、研究管理棟と試験棟から構成されているということだけ覚えておいてください。

もう一つは、1Fサイトのフェンス隣につくろうとしている分析研究センターです。これも同じように、施設管理棟という管理機能を備えた建物と、第1棟、第2棟と2つのホット試験を行う施設から構成されます。これについても後ほど説明します。

P) 整備状況と役割ですけれども、ここに書きました4つの大きな役割がありまして、まず第1は廃止措置の推進、これは中長期のロードマップで国で定めたスケジュールに基づいて行っている研究、あるいは小川さんが説明されたような科学技術の向上にかかわる基礎基盤研究とか、福島イノベーションコースト構想と申しまして、福島の復興のためにいろいろな産業を創生していくための研究開発、あるいは1Fを廃止措置していく関係があるので、規制庁的に言ってもいろいろなデータ、構造材のデータ等をとっていく必要があります。

ここに書いたスケジュールで、特に2015年の話はこの色のついたところですけれども、具体的に言いますと、楢葉遠隔基盤開発センターにつきましては、今年の9月中旬ごろに研究管理棟が完成した関係で、9月24日から我々はそこに行って仕事を始めております。

それから、10月19日に、安倍首相、県知事、町長あるいは関係大臣、副大臣の方々に集まっていただきまして、盛大に開所式を開かせていただきました。

それから、試験管理棟は、まさにきのう―きのうというのはファンクションという意味ではなくて、イエスタデイという意味です。済みません、英語で言って申しわけないですが、きのう完成したという、まさにホットな状態です。これはコールド施設ですけれども。

もう一つは放射性物質の分析研究施設、これはまさに今詳細設計をしているところでございます。

P) 楢葉には2つの施設、研究管理棟と試験棟があるのですけれども、研究管理棟の中に、事故が起こった後の原子炉をコンピュータ内に再現して40年間の廃炉作業を推進していくというバーチャルリアリティシステムを整備しております。これは、実際の現場作業を行って得られた成果をバーチャルリアリティシステムに入れて、そこでつくった作業計画とかを使いながら実際に実証試験を行い、それをもって確実な作業の実施を行うために、安全・確実で効率的な作業を実施するためのシステムとして整備しつつあるものです。これは、現在、1Fの2号機の1階と地下階を、東京電力さんで実際にロボットを入れてレーザーで位置情報を入手しているものに対して、点群データを色づけして実際の画像にしてコンピュータの中に再現しております。今後引き続き、2号機の2階から5階とか他号機の全階を再現しまして、ここに来ればいろいろな作業の円滑な計画策定等ができるようにしていきたいと考えております。

P) もう一つは試験棟、これは遠隔機器を実験するための施設で、80m×60m×40mという建物の中で行われるわけですけれども、日本にここしかないというだけではなくて、世界でも余り類例を見ない施設でございます。

この中で今まさに組み立てている作業ですけれども、格納容器下部を模擬したモックアップをつくっています。モックアップといいましても、私たちがつくるプラモデルとかそういう意味ではなくて、20m×18m×18mという大型のモックアップ試験体をつくろうとしています。これは、原子炉をケーキに例えて、そこにイチゴが8個ついているのを1/8にカッティングしていきまして、それが1/8セクターというもので、そういう意味で言うと非常に大型のものがつくられることになります。

それから、南側の要素試験エリアというところには、モックアップ階段とか水槽とかモーションキャプチャ、これは8mとか10m規模の高さを有する大型の試験施設です。例えばモックアップ階段というのは、1号機から3号機まで、階段の寸法とか傾きとか階段のステップとかがみんなばらばらになっていまして、そこをロボットが動いていくと、ロボットは人間ほど賢くないものですから、転げたり落ちたりすることがあって、そういうモックアップ試験が実際に1Fの中に入れるときに必要になってくるということです。

それ以外に、付属建屋の中には、例えば研究者の方々が試験棟の中で使ったロボットを修理したいとか改造したいというのができるような工作工場、あるいは50m2ぐらいの研究室が7室設けられています。これは基本的には1年中活動可能なエリアですので、ぜひ使っていただければと思っています。

P) それから、研究拠点を支える技術開発ということで、ここに書きましたロボットの実証試験をやる場所とか、ロボットのシミュレータの開発を行うようなシステムも整備しています。これは1Fの環境データが使っていけるようなものになっております。こういう活動をしながら、施設が陳腐化していかないような技術開発も並行して行っていっております。

P) 今後の課題ですけれども、1つは、楢葉のセンターの整備は、外構工事といいまして、芝生を植えたり道路をつくるということを除きまして、11月末で完了しまして、来年度からの本格運用にめどが立ちました。

この2年間、我々の研究所ができてからまだ2年半ぐらいしかたっていないのですけれども、この間におきまして、大学とか産業界とかいろいろな関係機関の方、有識者50名以上の方が参加して、適正な料金はどうすべきかとか、いろいろな議論をして、やっとここまでたどり着くことができました。

今後は、イノベーションコースト構想、イノベーションハブになって福島県の浜通りのいろいろな遠隔技術開発に貢献していければと思っております。

P) それから、大熊の分析研究センターは3棟の詳細設計を開始したところで、敷地の中の線量測定とかを行っております。放射化物を扱わない施設管理棟、事務機能を備えた施設に関しましては、来年度から工事を始めようと思っております。

これも東京電力と一体になって、安全管理のもと、適切に運営できるような体制を構築しようと思っております。さらに、そこで働くいろいろな特殊な技術を持った人たちも実際にしっかり確保していくことを行っていきたいと思っておりまして、新たな試験・調査や分析・研究内容等の検討の結果に対応可能な、柔軟性を持った、融通性を持った施設をつくるように検討しているところでございます。

以上です。

○山名理事長 ありがとうございました。

今のお二人のお話で、どういう基礎研究がなされていくか、施設がどのように整備されていって、どういう工学的な技術開発が進められていくかということがおおむね分かったのですが、少し確認させていただきたいことがあります。

小川さん、今のお話の中で国際共同研究棟というのがスライドの中に出ておりましたが、これはどういうものでしょうか。

○小川センター長 それでは、もう一度、小川の1枚目のスライドを出していただけるでしょうか。

これは富岡町につくろうということで構想が動き出しております。敷地の面積が1haぐらいで、建屋としては延べ床面積2,500m2ぐらいというものですから、決してそんなに大きな施設ではありません。しかし、ここは楢葉の施設、大熊の施設と結んで、富岡町というのはその3つの施設を結ぶのにちょうど適当な場所にあります。そして福島第一のサイトにも非常に近いということで、ここで基礎基盤的な研究、例えば遠隔モニタリングに係るような研究とか事故進展解析に係るような研究、こういったことをやっていきながら、1つのシンクタンク的な機能も担っている。それから、ここで国際セミナーといったものをどんどん開いていくといったことで、ここが廃炉国際共同研究センターの、そして福島の廃炉に係る基礎基盤研究のまさにセンター機能を担う、そういう施設にしていきたいと考えております。

○山名理事長 中核的な施設が福島のサイトにできてくるということで、大いに期待したいところですが、そうしますと、河村さん、今、施設を整備されているのですけれども、でき上がった施設を誰がどのように使っていくのか、その仕組みとか全体像がありましたら、お教え願いたいのですが。

○河村所長 まず楢葉の遠隔技術開発センターですけれども、これは今まさに建設途中で、試験棟がきのうやっと完成したという話をしましたが、既に10月から、IRIDが今述べました1/8セクターという試験体の組み立てを開始しております。来年3月、今年度いっぱいにできるだけ試験体が完成して、来年度から本格的な実証試験が始まると聞いております。

こういう国の大きなプロジェクトとか要素試験におきましては、我々の拠点の周りに、楢葉の南工業団地とか、広野の工業団地とか、いわきの四倉の工業団地というのがありまして、そこに中小企業がいっぱいおられて、ロボットの開発をされている。そういう人たちが我々のところに10件近く相談しに来ておられます。そういう意味で地域の方々も使っていかれることになるかと思います。少し変わったところでは、防衛省の方々が、一番最初に事故が起こったときに防衛省が入っていって、いろいろな環境観察をしたりするドローンという飛行機を飛ばすのですけれども、ヘリコプターというのですか、そういうものの開発のために2カ月間ぐらい使いたいというような利用申込もされてきています。そのようにしてこの施設を有効活用していただけるのではないかと思っております。

もう一つ、大熊の分析研究センターはまだ詳細設計段階ですけれども、これは、一番最初は、1Fにある放射性物質をいかに効果的・効率的に放射性廃棄物にして、それを廃止措置に向けていくかという研究開発を5~6年行うことが決まっております。それ以外に大学の先生方等から基礎研究をやりたいという御要望も来ておりますので、そういうのにも応えていきたいと考えております。

以上です。

○山名理事長 ありがとうございました。

今のお話で、JAEAさんの全体像の計画は大体よくわかったと思います。

きょうは、パネリストとして東電とメーカーと大学の三者の方においでいただいています。

まず、こういった研究開発の最後の反映先になる東京電力のお立場から、村野さん、どうお考えかを聞かせていただけますでしょうか。

○村野グループマネージャー 東京電力の村野と申します。

スライドを用いて見解をお話しさせていただきます。

〔パワーポイント映写。以下、場面がかわるごとにP)と表示〕

P) 廃炉において何が重要かということで、廃炉機構さんから5つの考え方が示されているところでございますけれども、我々が実際の廃炉をどうやっていくかということを決めるに当たっては、技術の難しさとかリスク、便益、コストといったものを考えて総合的にそれらを最適化していくことが必要です。

P) ただ、どういうことをやっていくかというのは簡単ではない状況でございます。なぜならば、事故を起こした原発の廃炉というのは我々にとっても初めての作業であって、経験がなかなか生かせないということもありますし、目の前の作業をやることによってどんなリスクが生じるのかとか、本当にそれでいいのかといったことがなかなかわからない作業が多いです。基盤技術ということをワードで聞きますと、そういったことを我々がこれからやっていくに当たっての作業の解決の糸口になるのではないかという期待が出てまいります。

P) これから廃炉作業を行っていくに当たりましては、真ん中に図を描いてございますけれども、事故当初はリスクが非常に高い状態でありましたけれども、近年だんだん下がってきていると認識しております。ただ、これからいろいろな作業をするに当たってはそのリスクがまた上がっていく可能性もあるわけでありまして、そういったリスクを下げていくというところに技術適用があるわけでございますし、基盤技術があったとしても、すぐにそれが現場に使えるというわけにはなかなか参らないという現状もあると思います。それから、我々にはわからないことも多く、世の中にある技術を知らないということもありますので、こういったところが現場で実際に作業を行うに当たっては障壁になってくると思います。

P) そこでどのようにやっていくかということについては、研究機関という立場と事業者という立場、それぞれ何かをやるに当たっては大分格好が違うということになります。キーワードとしては、英知の発信をしていただいて我々に気づかせていただく。それから、それを現場に適用するに当たってどういうことを考えていかなければいけないかという現場なりの視点を研究機関さんに持っていただく。それを現場に適用するに当たってはほかの技術と統合していくということも出てまいると思いますので、我々の慣習で言えば、プラントメーカーさん等にお願いしながらそういったことを達成していくというのが考えられると思います。

P) これは基盤技術と言っていいのかどうかわかりませんけれども、現場にロボットを適用した事例をお話しさせていただきます。

Packbot、Warriorと書いてありますけれども、これはアメリカのiRobot社というところが国防省の支援を得て開発したロボットで、実際に紛争地帯で活躍しているロボットです。

ここでは原子力格納容器の貫通部の除染を行っている姿を写真で示していますけれども、なぜこれを使っているか。ここだけではなくていろいろな場面で使っているわけですけれども、1つは早く情報提供があったということです。事故の後、翌日には情報提供がございました。

それから、全体最適と先ほど申しましたけれども、当初は調査をするとか除染を早く進めるというニーズが非常に高かったという、ニーズにマッチした、それから信頼性が高いなどの特徴があるものでございます。

それから、技術の統合という意味では、これはいろいろなものを載せられます。写真の左側がWarriorというロボットですけれども、実際に掃除機の先端をつまんで床を掃除しているというのがこの写真でございますし、右側のPackbotはその作業を監視するカメラを搭載しているという状況です。

これは簡単な例ですが、今後どんどん難しくなって、応用問題が多くなってくるという状況が考えられます。

P) まとめでございますけれども、研究機関さんには、情報発信に基づく、これからの難題を解くための糸口を与えていただくということを期待したいですし、現場からの発信としては、リスク、便益をよく考えて適用する、それから最後には、情報発信、最適化、技術の統合という3つのキーワードを忘れずに連携していきたいと考えてございます。

以上です。

○山名理事長 ありがとうございます。

それでは、技術を実際に現実にしていくというメーカーのお立場、あるいは応用技術開発のIRIDのお立場から、飯倉さん、どうぞお願いします。

○飯倉理事 東芝の飯倉でございます。

日々設計をし、現場で作業をし、あるいは応用研究を進めている立場として考え方をまとめさせていただきました。

〔パワーポイント映写。以下、場面がかわるごとにP)と表示〕

P) 基礎研究をいかに現場に適用するかということでございますけれども、多様な機関、組織の連携に基づいて現場の状況に適合した開発を進めていかないと、速やかな現場適用あるいは現場に役立つ開発ができないというのは今までの経験からもわかっております。

ここに3つ大きくカテゴライズさせていただいて、期待を込めて提言という形で書かせていただいております。

つ目は、1Fの廃炉への取り組み、考え方。この仕事に従事する全ての人がこの考え方を正しく理解して、1つの目標に向かっていくということが極めて重要であろうと。特に現状、大きな背骨と言ってもいいと思いますけれども、それがNDFさんが提示しております戦略プランであります。先ほど小川センター長も提示されておりましたけれども、5つの基本的な考え方ですね。後ほど私のスライドにも書いてございますけれども。あるいは原子力安全文化。原子力にかかわる人が必ず知っておかなければいけない。こういうことをしっかり理解するというのが1つ目。

2つ目は、この廃炉という仕事は、連携はもちろんですけれども、いろいろなステージ、あるいはいろいろな取り組みが時間とともに変わっていく、あるいは検討条件が変わっていくところですから、これに適切に対応することが非常に重要であるということでございます。したがいまして、先ほど御紹介がありましたプラットフォームの活用等が極めて重要である。

最後は、現場指向の基礎基盤研究をぜひやっていただかなければならないということでございます。基礎基盤研究をいかに現場に役に立つものに仕上げていくか、あるいはつなげていくか、これが非常に大きな課題であろうということをお互い認識しながら、協力して取り組んでいくということでございます。

P) それぞれ簡単に申し上げますと、1つ目の考え方、理念でございますが、ここに明確な目的・目標・適用先と。福島第一の廃炉については、目的・目標は明確で、いかに速やかにリスクを減らしていくか、廃炉にしていくか。適用先は福島第一のプラントですが、ここについてのいろいろな開発に対して、検討条件が非常に不明確である、不確かさの幅が大きい。これに伴って開発をいかにしていくかということが重要でありまして、例えば、特に燃料デブリについて、3つの重要なところを考え方として書いてございます。1Fの事故廃棄物をどうやって原子力安全を守りながら扱っていくのか、あるいは1Fの特殊性をいかに理解して開発していくのか。先ほど御紹介しましたNDFの戦略プランをここに5つ掲げてございますけれども、このような考え方をいつも判断基準として開発を進めていくという考え方の統一、あるいは考え方を整理しておくということが非常に重要だろうと。

P) 2つ目は、私どもメーカーの立場で基礎基盤研究に期待している、燃料デブリにかかわる3つを時間の進展とともに書いてみました。

つは、燃料デブリの場所、量を特定する。これは、どこにどれぐらいあるのだろうと。

そして、燃料デブリの取り扱い方。これは、我々は取り出し方法の検討をしておりますけれども、どうやったら安全に取り扱うことができるかというところ。

そして最終的には、これらの放射性廃棄物の保障措置をしなければいけないのですが、どのように安定的に管理していくか。

このあたりの基礎基盤的な知見をもとに、右側に現場適用化、システム化、実証とありますけれども、これをいかにプラントにつなげていくかというところが共同してやっていかなければならないところであろうと考えています。

P) 最後にまとめさせていただきましたけれども、共通の理念、あるいは場、プラットフォームという言葉もございましたけれども、それに基づいて、徹底した三現主義ですね。現場に適用できる開発を進めて目標を達成するということで、基礎基盤研究から実機適用研究まで多様な人材、特に私どもメーカーとしては、インターンシップを活用したり、研究の連携・交流が非常に重要であろうと考えております。

一番下に、最後に1つつけ加えておくべきだろうということで書かせていただきましたが、これらの活動が福島の廃炉の進展に大きく貢献して、それが適切に評価され、あるいは処遇されるということが重要であろうと考えております。

以上でございます。

○山名理事長 飯倉さん、ありがとうございます。

それでは、大学のお立場からこの全体の取り組みをどうお考えになるか、東京工業大学の小原先生からお願いいたします。

○小原教授 東京工業大学の小原でございます。

それでは、スライドをお願いいたします。

〔パワーポイント映写。以下、場面がかわるごとにP)と表示〕

P) 私はきょうは大学の人間ということでお招きいただいたのですが、現在、廃炉に向けて各大学がいろいろな取り組みをしております。高等専門学校でもいろいろな取り組み方をしております。全部を包括して御説明するのは無理なので、例として私のいる東京工業大学ではこんな取り組みを始めましたということを御紹介いたしまして、きょうのパネルディスカッションの切り口にしていただければと思っております。

P) 昨年度から文部科学省の委託事業として、「廃止措置工学高度人材育成と基盤研究の深化」というタイトルで5年計画のプログラムを東京工業大学では開始しております。これは、人材育成と研究の両面を同時に大学で推進していくプログラムでございます。

どういうことを目的としてやっているかと申しますと、1つは、現場で工学的に適用できる実用的な技術の開発を目指していくこと。大学の研究というのは往々にしてたこつぼになりがちで、現場のニーズからかけ離れたものをやっていきがちだというところを何とかなくしていきたい。

それから、教育のほうでは、現場で実際に物に触れることができる技術者・研究者の育成ということで、これは別に廃止措置に限らず、工学教育に共通したことですけれども、やはり実験とか物を触らないといけない。この廃止措置の場合は、デブリの扱いとか放射性の汚染水の扱いが必ず直面する課題であるわけで、そういうものを実際にハンドリングしたことがないのでは技術開発もままならないだろうし、マネジメントを考える上でも適切な判断はできないだろうという考え方があります。あと、廃止事業に高いモチベーションを持つ人材の育成ということで、こういう教育をやっても、そういう分野で自分は仕事をしようという意欲を持ってもらわないと、結局全然関係ない分野に行ってもらっては我々としてはうれしくないわけで、そういうモチベーションを持ってもらうにはどうしたらいいか。

あとは、こういった研究開発がいろいろな分野に波及するということもぜひ期待していきたいと考えています。

P) これはごちゃごちゃした図ですけれども、現在行っているプログラムの概要を1枚のスライドでまとめたものです。左側が研究開発で、右側が人材育成となっております。

研究開発のほうでは、テーマが幾つもあるのですけれども、分析、除染、回収・固化、遠隔計測、臨界安全というような分野について、それぞれの専門分野の教員が、連携している大学、東京医科歯科大学、東京都市大学、芝浦工業大学、東海大学と連携して実施しております。

右側の人材育成のほうは、東京工業大学は原子力教育については大学院しかございませんので、その大学院に新たな授業科目を幾つも設定いたしました。上の3つは、実験の授業科目を大学院に新たに開設いたしました。実験の科目を開設するというのは手間もお金もかかります。新しい装置とかを入れないとなかなかできない。核燃料物質を扱える実験室で分析するような実験をしようと思うと、そういう装置をRIの管理区域の中に入れておかないといけないのです。そういうのにも非常にお金も手間もかかります。そういった実験とか、あとは4番目で講義も立ち上げております。一番下に書いてございますのは、インターンシップやセミナー等をやって学生さんのモチベーションを高めてもらおうと。モチベーションを高めるのに一番効果があるのはインターンシップだろうと私自身は思っておりまして、現場で働いている方の思いとか気持ちを肌で感じるということが、将来の人生設計を考える上で非常に大きな刺激になるということはいろいろな例で我々はよく認識しておりますので、そういうものに力を入れていきたいと思っております。

こういった活動をやっていくわけですが、きょうは、小川センター長、河村所長からいろいろお話を伺って、こういった大学での取り組みがJAEAの活動にいろいろ関係する、要するに我々としてはぜひ御協力いただきたいという部分が多々あるのではないかと感じました。

P) これは実際に実験をやっている風景ですけれども、こういった大学で保有している核燃料施設でRIとか核燃料物質を使った実験を継続していくということです。

大事なことは、これは予算は5年間ですけれども、大学は5年終わったらやめますというわけには参りませんので、東京工業大学としては、たとえこのプログラム予算が終わっても、こういった人材育成活動を継続していける体制は整えていきたいと考えております。

以上です。

○山名理事長 小原先生、ありがとうございました。

以上でそれぞれのお立場からの見解をお伺いしたわけですが、特に今気になったのは、最後に大学のお立場から聞きました人材育成です。

小川センター長、JAEAの活動の中で人材育成についてどういう取り組みをされるか、何か計画はお持ちでしょうか。

○小川センター長 実はプラットフォームという言葉で説明が中途で終わってしまったわけですけれども、現在、文部科学省の人材育成のプログラムに採択された7つの拠点と一緒になって、人材育成も含めて基礎基盤研究にしっかり取り組んで、その成果を現場に届けましょうという活動を始めているところですけれども、その中で人材育成をどう見るのかというのは、国際協力という問題とつなげて考えていきたいと考えています。

1つ典型的な問題として廃棄物の問題を考えてみたいのですけれども、福島で出てくる多種多様な廃棄物は、今まで日本の原子力が想定していたような廃棄物の定型の中におさめようとすると、非常に難しい課題が、量から言っても、種類から言っても、いろいろ出てくる。しかし、実はアメリカ、フランス、イギリスといった核兵器開発国は、平和利用が本格化する前に非常に雑多な廃棄物を歴史的に抱え込んでしまっているということで、そういういろいろな困った、扱いにくい廃棄物に対しての経験、技術開発、その中には非常に最近の新しい科学的な視野に基づく取り組みもありますが、こういった経験と国内の活動とをしっかりと結びつけていくということをやりながら人材育成に生かしていきたい。そういうところに一つCLADSの役割があるのではないかと思っています。また、そこでうまくCLADSを使っていただくという意味でこのプラットフォーム活動を位置づけていきたいと考えています。ですから、このプラットフォーム、あるいは富岡町にできる国際共同研究棟、こういったものが、言ってみればどこでもドアのような感じで、外国から見ると、ここに来ると福島第一につながっている、国内から見ると、ここに来るとそういう国際的な、今まで日本の視野には入っていなかったようないろいろな原子力技術の世界に触れられる。そういうところで新しい人材、福島に役に立つ人材を育てていきたいと考えています。それが1点です。

もう一つは、先ほどリスクという言葉が村野さん、あるいは飯倉さんから出てきたと思いますけれども、リスクをちゃんと管理していこうと思うと、しっかりした地図をつくらないといけない。実は、この無定型な問題に対して基礎基盤が地図をつくる、こういう活動が本来あってしかるべきですけれども、日本の原子力の研究開発の中ではそれほど目立ってやってこなかった活動かなと思っています。そういう地図をつくる、地図を更新するという活動に若い人たちがかかわってくる、大学院、あるいは場合によっては高専の段階からそういう活動にかかわってくる、これは、狭い領域の研究開発をしながら、しかし広い視野を身につけるのに最適の体験になるのではないかと思います。そういう点でも大学と一緒に新しい人材育成の仕組みをつくっていきたいと考えています。

○山名理事長 ありがとうございます。

国際的な協力関係と国内の人材育成と両方大事だというお話ですが、飯倉さん、産業界として、若い人たちが技術者として活躍していくことになるのですが、産業界のお立場ではどう考えておられるのでしょうか。

○飯倉理事 産業界メインとして、私の個人的な考え方も含めてお話ししますと、産業界、特にメーカーとしては、私のスライドにもありましたとおり、私のスライドには「双方向インターンシップ」という言葉で書かせていただいておりますけれども、インターンシップというのは、小原先生の御指摘にもありましたとおり、非常に有効な手段であろうと思います。双方向と書いたのは、大学生がメーカーに来るのもいいかもしれませんけれども、メーカーの人間が大学に行って基礎基盤研究をやり、これをメーカーに戻って実機に適用するというようないろいろな種類の、「インターンシップ」という言葉で代表されるような交流ができるとよいのかなと思っています。そういうことによってこの廃炉という仕事は技術的にも比較的オープンな環境で研究が進められると私は感じておりますので、多種多様な人材が多種多様な機関に適材適所で適切な形で貢献するような形が最も望ましいのではないか、それが全体的に産業界としてもよい方向に行くのではないかと私としては考えております。

○山名理事長 ありがとうございます。

人材育成を中心に話を伺ってきたのですが、ここからは、JAEAの今後の活動に対してそれぞれのお立場でどう期待しているかをもう一度確認したいと思うのです。

まず村野さん、東京電力というこの闘いの最前線に立っているお立場で基礎基盤側をもう一度見たときに、今後どういうことを期待していきたいかということがありましたら、もう一度お聞かせいただけますか。

○村野グループマネージャー 東京電力は4年半前に事故を起こしたわけで、それ以来、廃炉という道筋の中で多くの方に御支援をいただいております。特にJAEAさんには、きょう御紹介がありましたCLADSや大熊、楢葉の施設といったところで非常に大きく御協力いただいていると認識しておりまして、感謝申し上げたいと思います。

特に例を挙げて申しますと、楢葉の遠隔技術開発センターにつきましては、御紹介にありましたように、原子炉の施設の大きさを模擬した大きさであるということで、そういったメリットを最大限に生かして現場で活用できる技術を開発していくということを切に望んでおります。

我々としても、先ほど私のスライドでお話しさせていただきましたように、そういった技術を適用するときに別のリスクが生じないのかとか、果たして現場でそういうことが本当にできるのかということをよくよく考えながら一緒に検討していきたいと思っているところでございます。特にJAEAさんには積極的にいろいろな調整の場を設けていただいているという背景もございますので、それに感謝しつつ、一緒に検討していきたいと思っております。

以上です。

○山名理事長 ありがとうございます。

小原先生にお聞きしたいのですが、私も大学にいた人間ですが、東京電力のこのプロジェクトに対して、大学のお立場からは、障壁が高かったというか、なかなかタッチできなかった、情報も来なかったという問題があったと思うのです。しかし、今、小川さんや河村さんのお話を聞くと、こういう基礎基盤のプラットフォームのようなものをつくってくださるということであれば、大学と東電などの距離感が縮まる、例えば実用や基礎の間が縮まるというようなことがあると思うのです。大学のお立場から、実際に文科省のプロジェクトでやっておられる中でJAEAに今後どういうことを期待されるか、何かあったらお聞かせください。

○小原教授 先ほど東工大でやっているプログラムを紹介いたしまして、皆さん御説明でおわかりいただいたかと思うのですけれども、例えば実験をやるという場合に、大学ではなかなかできないものもあるのです。人材育成に関して、大学の実験施設は非常に老朽化しているとか、使えるものが限られている、あるいはロボットの実験をするにしても非常に限られた内容しかできない。そういう場合に今回建設された1Fの近くのJAEAの施設を活用させていただければ、より充実した教育活動ができるだろうと。あるいは、先ほどどこでもドアというお話がありましたけれども、大学では学生の教育も重要ですが、若手研究者の育成も重要だと私は考えていて、この分野は30年、40年続くということですと、その分野を支える技術者・研究者をちゃんと養成しないといけない。そのときには、若手の研究者がいろいろな研究テーマを見つけられるような場をJAEAで提供していただけるなら、それは大学にとってこの分野の活性化につながると思っております。

○山名理事長 ありがとうございます。

それでは、時間も余り残っていないのですが、会場の皆さんから質問を受けているので、これに基づいてディスカッションしたいと思います。

まず、人材育成については先ほど既に議論してきたのですが、1つ目の質問は、技能や技術的なことを長期にわたって確保していくためには本当に何が大事かという全体的な大きな仕組みのあり方のようなことを聞いておられる質問が1件来ております。これについて皆さんの御意見を聞きたいところでありますが、まず小川センター長、この廃炉のプロジェクトは、40年とか、非常に長い闘いです。ここにどうやってノウハウや技術やスキルを継いでいくか、何かお考えがありましたらお聞かせください。

○小川センター長 これは本当に難しい課題で、福島の事故が起きなくても、日本の原子力が抱えている非常に難しい問題であることは事実だと思うのです。特に日本の場合、どうしてもその時々の流行に予算のつき方や何かがある程度左右されてしまうということで、福島の廃炉は長い間に幾つもリスクの山が来るでしょうという、そのリスクの1つの山を乗り越えた先のリスクをしっかり見て、そこに幅広い立場から手を打っておく、そういう意味での全体のマップを、単に関係者だけではなく、社会とある程度共有していきながら、しかし実際にやっている主体が強い意志でそれを貫いていく、この活動に尽きるのかなと思っておりますが、その中で原子力機構の役割がとても大事になってくると思います。実は私もまだ60%は大学人なのですけれども、もともとは大学がそういうものをずっと保持するということが役割であったわけですが、どこの国でも大学はそういうことが難しくなってくるとなると、原子力の研究開発法人である原子力機構が大学、企業と結んで、常にそういう全体像を持ちながらしっかり人材育成をやっていく、そこのところを整えることが一番大事ではないかと思っております。

○山名理事長 ありがとうございます。

もう一つ質問が来ているのですが、これは河村所長に伺いたいと思います。この御質問は、JAEAで開発されている研究開発の成果が現場にどうやって技術移転されて反映されていくのだろうかという御質問です。河村所長、長らくJAEAで研究開発に携われてきた中で、実用に向けてどのように技術が伝わっていくかについてお考えはありますか。

○河村所長 実用に向けていろいろな技術開発をするというのは、まず現場がわからなければだめですよね。今、東京電力の1Fサイトでどんなことが起こっているかというのは、多分情報として我々は十分に持っていないところがあるかもしれませんが、具体的に言えば、例えばファイバーを使って線量を分析するとか、そういうのは既に1Fのサイトの中で適用されているとか、我々がつくっている中性子の検出器とかいろいろな検出器、試験研究でつくられた技術は1Fのホットなエリアでも使えるだろうとか、いろいろな話がありましたが、現場第一主義というか、そういう意味で言うと、我々の技術と電力メーカー、原子力メーカーさんが困っているものとのマッチングをいかにしていくかというのが結構重要になってくるのではないか。我々が持っている技術が実際にそこで使えるかわからないということも多々あると思うので、実際にこれからプラットフォームとかを小川さんのところでつくられていく中でそういうのが具現化されてきて、そこで現場で困っていること、あるいは基礎基盤でやろうとしていることとのマッチングがされていくのではないかと思っております。

以上です。

○山名理事長 今のお話にありましたように、ニーズは東電の現場にあるのでしょう。それから、大学やJAEAにはシーズがある。この2つをどうマッチングさせるかというのがキーになってくるだろうと思います。

村野さん、ニーズ側のお立場で、シーズ、例えば何か本当にどこか抜けている情報があって、それがあったらすごく助かるとか、こういうものがあったらいいというのがあると思うのです。ニーズの側からJAEAや大学にどういう期待を持たれるか、何かありましたらお聞かせください。

○村野グループマネージャー 私の見解の中でも少し触れさせていただいたのですけれども、なかなか我々が気づかない視点があろうかと思います。発電炉ですと、基本的に扱う放射性物質は腐食生成物になるわけですけれども、今回は核分裂性の物質ということで、まず扱うものの性質そのものが違うというところを起点にいろいろなことが起きていると思います。これは例えばの例ですけれども、幾つかの我々が気づかないところを気づかせてくれるようなところにまず期待したいと思います。

それをいかに現場に適用するかということですけれども、我々もいろいろな困ったことが目の前にあって、新しい技術があればそれをすぐに使いたいと思うことはよくあります。ただ、それを使ったときにどういうことが起こるのかということを十分想像しておかないと、その先、別の悪いことが起きてしまうということもありますので、そこは慎重にじっくりと取り組む姿勢も必要だというのが最近考えているところでございまして、そういったじっくりと考える時間の中でいろいろな人の意見を聞く場があって、考える時間を取って現場に適用していくということも必要だと思っております。

○山名理事長 わかりました。

ちょっと視点が変わりますが、河村所長、こうやって福島に新しい研究施設をJAEAが建てていかれるということで、きっと地元にとって何かメリットやプラスがあるはずだと思うのです。この地元に対する貢献というようなものがおありでしたら、お聞かせいただけないでしょうか。

○河村所長 今年の6月に中長期のロードマップが改訂されたのですけれども、その前の中長期のロードマップにおきましては、施設の整備とあわせて、地域の産業の活性化を踏まえて新たな産業をつくり出しながら整備をしていきなさいと書かれています。そういう意味で言うと、我々の施設をつくっていくプロセスにおいても、例えば楢葉で使ったお金の15%ぐらいは福島に落ちて、福島の方々に作業をしていただいています。

これからこれが完成した後にどうなっていくかということですけれども、完成していくプロセスにおいて、私もどこがおもしろいのかよくわからないのですけれども、福島高専の建設科の方々が大林組が建てている試験棟を見て、おもしろい工法で建てているらしいのです。そういうのを見ていろいろな勉強になったということで、学生が非常に興味深く我々に語っていたのを今思い出しております。

さらに、これから使っていくプロセスにおいては、先ほども述べましたように、我々の周りに工業団地があって、しかもそこにロボットでいろいろな開発をしていきたいと思っている会社が10数社あるわけです。そういう方々が我々のところに頻繁に来られていて、これからどうやっていくかという議論をしています。そういう中で、小川さんもおっしゃいましたように、我々のところは、ある意味、大学の先生方とも接点がある。中小企業の方とも接点がある。その中小企業の方々と大学の先生をつなぐことも我々は可能になってくる。そういう意味で、我々のところに来たら施設を使えるだけではなく、人脈も共有化できて、町の中小企業の方々が大学の最先端の技術を使っていろいろな産業を興していくようなことにも役立っていければ。我々の拠点がそういう集まる場所であってほしいと思っております。

以上です。

○山名理事長 福島では、イノベーションコースト構想と言われる構想が今政府で検討されています。ここに産業や新しい研究機能、教育機能を持たせて地元を復興させていこうというプランが進んでいて、JAEAはその先頭を走っているという理解でございますので、ぜひ地元の復興にもお力をいただければと思います。

それから、また視点を変えまして、小川センター長、原子力機構ではオフサイトの汚染地域の除染とか修復についても研究されている。これとこれからの研究の関係はどういうことになるのでしょうか。

○小川センター長 今、福島部門で福島の環境の問題に取り組んでいる大変大きな組織があります。最近新しい施設もできたわけですが、そこで除染の問題、環境の動態の問題、それから既に環境の中に放出されているさまざまな物質の検討といったものが進んでいるわけですけれども、そのサイトの外の情報が、実はサイトの中に役に立ついろいろな情報を含んでいる。例えばエアロゾル一つを見ても、サイトの外で見つかるエアロゾルをしっかり見ることで事故進展についての大変貴重な情報がとれるとか、サイトの外での除染の経験あるいは廃棄物の取り扱いの経験がサイトの中で今後出てくるいろいろな廃棄物の問題に対しても役に立つということで、これは実は山名先生のお言葉を使わせていただくのですが、オフサイトからオンサイトの側への展開といったこともうまく考えて、これは実を言うと、今、環境の人たちと私たちで新しい取り組みをしようとしているところですけれども、そういうことを積極的にやっていきたいと考えております。

○山名理事長 ありがとうございます。

あと、質問をいただいているのですが、詳しくお答えする時間がありませんが、大事なことを指摘していただいているのは、例えば、原子力安全規制委員会とこの廃炉の対応がどうなっていくか、規制のおくれが生じないかというようなご御指摘。それから、核燃料物質の計量管理とか保障措置が重要であるという御指摘があります。それから、トリチウム水の問題があるという御指摘も来ております。いずれも重要な問題ですが、議論し始めますと非常に時間のかかるテーマでございまして、ここではこのような貴重な御指摘をいただいたということの紹介にとどめさせていただこうと思います。

そろそろ時間も迫っているところですが、小原先生、大学のお立場として、小川さんがおっしゃったように、大きなマップをつくってそれを支える社会が要るのだということで、大学は東京工大だけではないのですけれども、もっと大学や公的な研究所などが広い裾野をつくるということが特に大事だと思うのです。この点についていかがでしょうか。

○小原教授 大学で一番大きな問題は、情報が余りないというところです。多分、現場では日々、これが問題、あれが問題ということがよくわかっていると思うのですけれども、大学あるいは大学の研究室にいると、そういう情報を得る機会が非常に少ない。そういった情報を中継していただけるようなプラットフォームのようなものがあると、たまたま今は我々がやっているわけですが、ほかの大学も徐々に参画していって、そういった活動が広がっていくということは十分期待できると思いますので、大学側としてはぜひそういう活動をお願いしたいと考えております。

○山名理事長 わかりました。

最後に、もう時間がございませんので、私のほうで感想を申し上げたいと思うのですが、今伺った御意見はこういうことになるかと思います。

まず、原子力機構は今、福島に施設をつくりながら基礎基盤研究を強化しようと頑張っているということです。ここではプラットフォームをつくったりして、国内の関係する技術者のネットワークを広げる、あるいは国際的な窓口をつくる、福島にどこでもドアをつくるという努力を進められている。これをしっかりとやっていただけるように我々は応援する必要があると思います。

それから、何よりも、きょうは東京電力の村野さんにおいでいただきました。この目標は全て、福島第一原子力発電所の廃炉を加速するという共通目標であります。ここを目指して、例えば基礎基盤の人たち、応用開発に携わっているIRIDやメーカーの人たち、それから実際にその技術を適用して廃炉を進めていく東京電力、基礎基盤の中のかなりの部分を占めている大学・教育機関、こういったところが全て連携して、基礎から実用まで広い範囲を、情報を共有しながら、成果が実用に向けて生きていくような体制を強化していかないといけないと思います。これが30年、40年継続的にできていく、この強い基盤が日本にあれば、福島第一の廃炉はきっとできるだろうと思うのです。そのためには、実用側の東電がとっていく行動、それから一番底辺部分にあるはずの大学などがどうネットワークをつくってやっていくかという行動、それを受けて基礎と実用のところをつないでくれる非常に貴重なプラットフォーム、ファシリテーター、あるいはマッチメーカー、そういった役割をJAEAが果たされるのではないかという期待も持つところであります。また、そういった成果をメーカー、IRIDが本当に実用できる技術として開発して、東電に反映させていく、こういう形が形づくられていくのだろうという期待を強く持ちました。

そういう意味で、最後に私から、原子力機構の新しい取り組み、CLADSの取り組み、それから河村さんの研究施設の取り組みがますます着実に進んで、日本全体の連携強化を進めていただけるということをお祈りするということでこのパネル討論を締めくくりさせていただきます。きょうはありがとうございました。

会場の皆様、御静聴ありがとうございました。