━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2010.9.10 ━━━━━━━━

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++---- No.143 目次 ----++

現場から____  地下深部における初期地圧測定(幌延深地層研究センター)

広報紙から ___ 幌延深地層研究センターでは「サマー・サイエンスキャンプ2010を開催しました。(「幌延深地層研究センター報」第3号)

プレス発表、お知らせ、採用情報、調達情報

あとがき

━ 現場から ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

地下深部における初期地圧測定

幌延深地層研究ユニットが幌延深地層研究センターの地下施設140m、250mで実施した、初期地圧測定について、紹介します。

「初期地圧」という言葉ですが、あまり聞き慣れないかと思います。一般に地下深くでは、土壌や岩盤の自重によって力がかかっています。また、地殻変動などによりその力は複雑な分布をします。このような地下深くで作用している力を初期地圧と呼びます。この初期地圧は、地下構造物の合理的で安全な設計・施工法の検討や掘削した坑道の周辺に発生する掘削影響領域の性状と密接な関係があることから重要な物性値となります。初期地圧のバランスがとれている所では坑道を安定に掘削することが出来ますが、バランスが悪いところでは掘削工法などに工夫が必要となります。一般的には、水平坑道を掘削する場合、最大主応力の方向に沿った方が周辺岩盤に影響を与えず、有利であるとされています。

高レベル放射性廃棄物の地層処分では、地下施設の建設に際して、周辺岩盤に影響を与えないことが重要となってくるため、特に、数多くの併設する水平坑道を掘削する地層処分場においては、水平坑道の方向は重要となります。

このように、初期地圧の測定は地下施設の設計の段階から重要であるため、幌延深地層研究計画において初期地圧の測定を行っています。幌延深地層研究計画では、地下施設を利用した三次元初期地圧状態の正確な評価を実施し、さらに地上からのボーリング調査において評価した初期地圧の妥当性の確認ならびに更新を目的としています。さらに、初期地圧の測定方法は、一般的に地下深部の硬岩を対象にすることが多く、幌延地域に見られる新第三紀堆積岩である軟岩に対する実施例は硬岩の実施例と比較して少ないため、幌延の岩盤に適応可能な測定方法の見極めも目的の一つとなっています。

まず、地上からのボーリング調査において研究所設置地区内に分布している初期地圧の評価を水圧破砕法と呼ばれる方法で試みました。地表からの調査では、初期地圧は概略的な評価にとどまっています。つまり、地表からのボーリング孔を利用した方法では、主応力の1つがボーリング孔軸に等しく、鉛直方向は原位置に作用する土被り圧と等しいと仮定して解析するため、水平面内の主応力のみが同定されることとなり、実際に地下深部に作用する三次元の初期地圧状態を知ることは出来ません。そのため、地下での調査が出来るようなった段階の調査として、これまでに地下深部の140m(2箇所)、250m(1箇所)の調査坑道の3箇所において初期地圧測定を実施しました。

初期地圧の測定方法は、主に応力解放法や水圧破砕法などのボーリング孔を利用した原位置での計測と、AE法・DSCA法・DRA法などのボーリング孔から採取したコアを利用した計測(コア法と呼ばれる)とに大別されます。

この中で、地下深部に作用する三次元的な応力状態を評価する実績の多い方法は、円錐孔底ひずみ法(応力解放法)と呼ばれる方法で、ボーリング孔の先端部を円錐状に加工し、加工面にひずみゲージを接着剤で直接張り付け、ひずみゲージが貼られた岩盤をくりぬくことで円錐部分の応力を解放し、その応力に応じたひずみの変化量から初期地圧を評価する方法です。しかし、この方法は、残念ながら幌延地域特有の地質条件で、円錐状の加工面より地下水が滲み出てゲージを貼ることが出来なく、適さないこと分かりました。その為、地上より実施した水圧破砕法を適用しましたが、地下では方向を変えた3本のボーリング孔で計測を実施し、三次元の初期地圧分布を評価しました。これまでの結果から、水平面内の最大主応力の方向が、地上からの東西方向からやや反時計回りに回転している傾向がわかってきました。

初期地圧は一般的に深度依存性が認められるとともに、その地域特有の地質構造の存在や地形の影響の他、地殻変動などによりその状態が変化するため、さらに、地下深部で測定を継続する必要があります。また、ある対象領域の初期地圧状態を評価する場合、バラツキを含めて総合的に評価する必要があります。その為、平成22年度以降、250m調査坑道、350m周回坑道において初期地圧の評価を実施していく予定です。

道北に位置する幌延深地層研究センターでは、地下施設の見学会を定期的に開催しています。見学会では,実際に研究を行っている地下を体験いただけますので、是非お越しください。

(幌延深地層研究ユニット 堆積岩工学技術開発グループ 中村 隆浩)

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*当機構が社外向けに発行している広報紙などからトピックスを紹介します。

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━ あとがき ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

相変わらず毎日暑い日が続いておりますが、暦の上ではすでに秋。

暦の上だけでなく、例年でしたら既に涼しくなり、食べ物が益々美味しく感じる時季であります。

今夏は暑さに負けず、私の食欲も衰えることはありませんでしたが、「食欲の秋」というように、これからは自身の体重増加にも、更に気をつけなければなりません。

この「食欲の秋」ですが、これは「秋は食べ物が美味しく実り、食欲が増す」ということだけでなく、「たくさん食べ物がある秋のうちに出来るだけ多く食べておき、食べ物が少なくなる冬のエネルギー源として蓄えておく」という野生習慣が人間にも少し残っていることも、秋の食欲に繋がっているそうです。

それにしても、一年中食べ物が十分にある現代社会では、エネルギー源を蓄える必要がありませんから、「必要な分だけ食べ、余分な分は食べない。」として、上手に健康を維持していきたいものです。(広報部 中村幸恵)

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【発行】独立行政法人 日本原子力研究開発機構 広報部  佐田務、上野信行  ○

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