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原子力機構ニュースロゴ    Ver.53 発行 2008.2.22  日本原子力研究開発機構 広報部
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 いつも、メールマガジンをご愛読いただきましてありがとうございます。また、当原子力機構のホームページをご覧いただきありがとうございます。
 私事ですが、最近、いろいろなところで話をしたり、パネルディスカッションに参加する機会が増え、原子力とは違う分野の方とお話をすることも多くなってきました。その中で感じたことは、わが国はエネルギー資源のみならず、食料、金属等の資源についてもほとんどの物を海外からの輸入に頼っていることでした。私たちの子供や孫の時代を考えますと、今の時代に生活する在校生はもっと頑張らなければならない。地球的な環境問題、温暖化等の難問が山積しています。炭酸ガスをほとんど出さない原子力がこれらの解決の切り札になって欲しいと切に願っています。また、がん等に対する治療の分野でも原子力の活用を願って止みません。
 これからも、一生懸命に情報発信に力を入れますので、皆様方のご支援をよろしくお願い申し上げます。

   広報部長 久保 稔


 さて、今回の「研究開発現場から」は、高崎量子応用研究所からです。

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【研究開発現場から】  高崎量子応用研究所 放射線高度利用施設部  ビーム技術開発課長 横田渉
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 世界有数のイオンマイクロビーム技術開発・利用の拠点が群馬県高崎市にある高崎量子応用研究所のイオン照射研究施設(TIARA)であることをご存じでしょうか。イオンマイクロビーム(以下、マイクロビーム)は、通常は直径が数ミリメートルのイオンビームを、文字どおりに1ミクロン以下に集束させた微小ビームです。ガラスの凸レンズを通すと光線が焦点を結ぶように、イオンビームを磁石のレンズ(磁気レンズ)で絞って直径をミクロン以下にして細胞の核を狙い撃つなど、極微の世界を操作したり観たりするのです。

 バンデグラーフなどの静電加速器で加速されたMeV級のマイクロビームは世界数カ国で利用されており、TIARAでは、分析、バイオ技術研究、微細構造製造技術の開発などに使われています。しかし、このエネルギー領域のイオンは物質の表面近くで止まってしまうために利用範囲が限られていました。そこで、TIARAのサイクロトロンで加速した数百MeV級の重イオンビームをマイクロビーム化する技術開発を2001年から開始し、ついに260MeV-ネオンのマイクロビーム形成(最小直径0.6ミクロン)に世界で初めて成功しました。

 サイクロトロンのビームをマイクロビーム化するには、次のような難題がありました。サイクロトロンでは正弦波の高周波電場で1000回以上も加速するために、直流の高電圧で1、2回の加速をする静電加速器に比べてビームエネルギー幅が10倍以上もあります。すると、双眼鏡で星が色付いて滲んで見えるように、イオンビームもエネルギーの違いによりピントが1点に集まらず、数ミクロン以下にはできません。また、サイクロトロンの磁場強度が200トン以上もある巨大な電磁石の鉄芯の温度変化の影響で僅かに変わるために、イオンビームの軌道などが不安定です。

 そこでTIARAでは、高周波電場波形を台形に近い形にしてほぼ一定な電場強度の位相部分でのみ加速するフラットトップ加速技術を導入し、エネルギー幅を数分の1に低減するとともに、電磁石コイルの発熱が鉄芯に伝わらないような改良やコイルの冷却水温度の精密制御などにより、温度の安定化を徹底的に行って、長時間に亘る磁場変動を10万分の1(従来の百分の1)に抑えました。サイクロトロンを改造してこのような高度技術を投入することでマイクロビーム化を実現したのです。

 これにより、微細なビームを試料の奥深くまで照射する各種実験が可能となり、イオンビームの応用範囲の拡大が期待されます。このうち、人工衛星等に搭載する半導体デバイスの耐放射線性研究での成果が昨年9月6日に応用物理学会(北海道札幌市:9/4〜8)で発表されました。本技術は真空中で実現したものですが、生きた細胞などを試料に照射するために大気中にマイクロビームを取出す技術開発も行っています。さらに、マイクロビームの照射位置を磁場や電場を用いて高速で移動できる特長を活かし、数百ミクロンの領域の多数の照準点に各1個のイオンを1ミクロンの位置精度で次々に狙い撃つ高速シングルイオンヒット技術の開発を進めて、多くの照射実験を短時間で行うことを可能にします。そして、これらの技術開発により、微細化とともに多層化が進む先端的半導体素子の耐放射線性評価技術の開発や細胞照射影響機構の解明、イオンビーム育種や粒子線治療の技術の高度化に寄与したいと考えています。
 (TIARAのホームページ → http://www.taka.jaea.go.jp/tiara/tiara/index.html

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【最新情報】
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08.2.12<プレス発表>新型転換炉ふげん発電所の廃止措置計画の認可等について掲載しました。
08.2.19<プレス発表>高速増殖原型炉もんじゅ初装荷燃料の変更計画に係る原子炉設置変更の許可について掲載しました。
08.2.21<プレス発表>J-PARCセンターとポール・シェラー研究所(スイス)における「核破砕材料技術開発」の研究協力覚書の締結について掲載しました。
08.2.12<お知らせ>3月13日開催の生命科学研究シンポジウム2008について掲載しました。
08.2.13<お知らせ>青森事務所の設置について掲載しました。
08.2.14<お知らせ>3月6日開催の第17回CCSEワークショップについて掲載しました。
08.2.15<お知らせ>高速増殖炉サイクルの実用化研究開発 FaCTプロジェクトとは?を掲載しました。
08.2.4<採用情報>平成21年度新卒職員採用募集要項(研究職、技術職、事務職)を掲載しています。

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【プレス発表】
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平成20年2月12日、新型転換炉ふげん発電所の廃止措置計画の認可等について掲載しました。
http://www.jaea.go.jp/04/turuga/jturuga/press/2008/02/p080212.pdf

平成20年2月19日、高速増殖原型炉もんじゅ初装荷燃料の変更計画に係る原子炉設置変更の許可について掲載しました。
http://www.jaea.go.jp/04/turuga/jturuga/press/2008/02/p080219.pdf

平成20年2月21日、J-PARCセンターとポール・シェラー研究所(スイス)における「核破砕材料技術開発」の研究協力覚書の締結について掲載しました。
http://www.jaea.go.jp/02/press2007/p08022101/index.html

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【お知らせ】
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平成20年2月12日、3月13日開催の生命科学研究シンポジウム2008について掲載しました。
http://yayoi.kansai.jaea.go.jp/biou/index.html

平成20年2月13日、青森事務所の設置について掲載しました。
http://www.jaea.go.jp/04/aomori/news/news-20080201.html

平成20年2月14日、3月6日開催の第17回CCSEワークショップについて掲載しました。
http://www2.tokai-sc.jaea.go.jp/ccse/ja/conf/workshop.html

平成20年2月15日、高速増殖炉サイクルの実用化研究開発 FaCTプロジェクトとは?を掲載しました。
http://www.jaea.go.jp/04/fbr/top.html

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【採用情報】
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平成21年度新卒職員採用募集要項(研究職、技術職、事務職)を掲載しています。
http://www.jaea.go.jp/saiyou/new/index.html

核融合研究開発部門では、高周波加熱システム開発グループリーダーを募集します。
書類提出期限:平成20年2月29日(金)
http://www.jaea.go.jp/saiyou/employment/employment51.html

量子ビーム応用研究部門では、グループリーダーを募集します。
書類提出期限:平成20年3月5日(水)
http://www.jaea.go.jp/saiyou/employment/employment52.html

核融合研究開発部門では、研究系職員を募集します。
(原子力分野における液体金属を用いた研究開発)
書類提出期限:平成20年3月10日(月)
http://www.jaea.go.jp/saiyou/career/career16.html

核融合研究開発部門では、研究系職員を募集します。
(JT-60SA容器内機器及びプラズマ制御・関連計測の開発)
書類提出期限:平成20年3月10日(月)
http://www.jaea.go.jp/saiyou/career/career17.html

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【調達情報】
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一般競争(指名競争)参加資格審査申請書の受付について。
http://www.jaea.go.jp/02/2_6.shtml

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■申し込みいただいた皆様に独立行政法人日本原子力研究開発機構の情報を配信しております。

■アドレス変更・配信停止については、以下のホームページをご覧ください。
  http://www.jaea.go.jp/14/14_0.html
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【編集・発行】独立行政法人日本原子力研究開発機構 広報部広報課
        http://www.jaea.go.jp/

【お問い合わせ】お問い合わせフォームより → http://www.jaea.go.jp/13/13_1form.shtml
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